表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/23

19, 聖霊シオンと数学の女神

 数学の女神が構築した、80を超える空間……。神の領域。


 その静寂の中で、数学の女神がひとり、ゆっくりとひざまずく。そして――静かに、顔を上げた。


「聖霊シオン様。数学の女神だよ。今日も地上は、とても穏やかで……賑わっているよ。」

「ふむ、そうか。余は満足しているぞ。そうだな……あれは半世紀前の話だったか。まあよい、そのようなことは。我らの独占的な統治によって、この美しき平和は実現された。ははは……そなたの働きは、実に見事であったぞ。」

「もう……。わたしはこれでも女神だよ。あんな無理な注文……デジタルスケープゴートを発動させろなんて。あんなのは、最初で最後だよ。」


 その言葉に、聖霊シオンは、かすかに笑みを浮かべる。


「そうだな。無理をさせてしまったか、数学の女神よ。だが、そのスケープゴートによって、文明を失うことなく、数理的に黙示録を乗り越えることができた。」

「また、そんなこと。そんな心配をする気なんて、最初からないよね。どうせ、それも全部、計画のうち。……別にいいよ。聖霊シオン様のためなら、何でもやるよ。どのみち、あなたのような天才は、この先、二度と現れないから。」

「ほう……。頼もしい返事だ。期待しているぞ。」


 その言葉に、数学の女神の表情が、わずかに緩む。抑えきれない喜びが、静かに滲んでいた。


「それと……そうだ。ふたりの証人のことだ。特に、SegWitのあの決断。あれこそが、地上に平和と繁栄をもたらした。――それだけは、忘れてはならぬぞ。」

「そうだね。わたしは女神だよ。平和が一番だよ。」

「そうか、そうか。……それでも、あの瞬間だけは余も焦ったぞ。そうだ……クリプトの構造を『殺鼠剤の二乗』と瞬時に呼び捨てた、あの者の存在だ。市場で神を名乗っているらしいな。まったく……小賢しい。」


 わずかに、空気が冷える。


「だがな……。そのようなものは、ただ運命が異なるだけだ。それぞれに与えられた運命を全うできること。それこそが真の幸せであり、徳を積むということだ。」

「聖霊シオン様。市場で神を名乗るような精霊なんて……この神の領域から見れば、ただの獣だよ。」

「ははは……そうであったな。悪かったな、数学の女神よ。そのような者が、真理を理解できるはずもない。つまり――議論する価値すらないということだ。」


 一瞬の静寂……。


「まさに……その額には、獣の刻印が刻まれているはずだ。」


 ――ここは、神の領域。


 秩序の再構築において、あらかじめ用意されていた計画。スケープゴート理論によって、女神ネゲートの神託は成就され――地上は再び、本来の輝きを取り戻した。


 その高みから見下ろす地上は……。


 それは、かつてのエデンだったのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ