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そのバザールついてのいくつかの噂話  作者: 川坂千潮
ユースグリットの新月には魔術師が集まる
7/10

基礎学校 高学年推奨『王子ラーファ』 より

 むかしむかし。約四百年前のできごとです。

 第二王子ラーファの母親ブルシェは、王宮で働いていた奴隷です。(※現在奴隷制度は廃止されています)

 ブルシェは美しく、王様にとても愛されていました。しかし産後の肥立ちが悪く、息子と数人の侍女を連れて、みどり豊かな別邸へ移りました。

 ラーファはすくすくと成長しました。勉学より体を動かすほうが好きで、武術の訓練をしたり、愛馬と森の中を駆けました。王様はたびたび母と息子に手紙を送ってくれました。

 ラーファは、大人になったら兄のお手伝いができたらいいなと夢見ました。それが難しいなら、冒険者になって旅に出て、世界を見て回るのもいいなと、夢は広がるばかりです。

 ブリュシェの容体はよくならず、王様がお医者さまを呼んでくれましたが、弱っていくばかりでした。

 母はラーファが十歳の誕生日を迎えた翌日、息子と侍女に看取られながら、静かに息を引き取りました。

 ラーファはこれからの身の振り方を考えました。

 王の血を継いでいるとはいえ奴隷の子。正室の息子であり、いずれ王位を継承する兄といさかいを起こすつもりはありません。権力が欲しい貴族に利用されるつもりもありません。

「自分が死んだら精霊院へ行きなさい」という母の遺言にしたがい、月の精霊院へ向かいました。

院に権力はありませんが、万象を司る大精霊と、奉る巫女たちには、貴族や王家でも無作法は許されません。

 ラーファは月の精霊院預かりとなりました。

 母の侍女たちもそのまま精霊院に移り、主人の忘れ形見を大切に育てました。

 こうしてラーファは月の大精霊アイラスナイ様の庇護のもと、勉強に運動にとはげみました。



 ある日、王がおふれをだしました。

「小精霊を捕らえなさい」

「小精霊を捕まえた者には報奨金をだしましょう」

 騎士や魔術師、冒険者たちによる精霊狩りがはじめました。

 捕まえられた小精霊は、宮廷魔術師が用意した特製のランプに閉じ込められました。ランプに小精霊の力を吸い取る魔術が仕掛けられているのです。

 このおふれに一番驚いたのは、精霊たちと交流をしていた町の人々です。

 町の子供たちは小精霊を守ろうとしましたが、強いひとには敵いません。町の大人たちも、どうしてこんなおふれがでたのか、わかりませんでした。

 小精霊は人のすがたから、毛玉のようなすがたに変身しました。ランプの魔術が効かなくなりましたが、代償に、ふつうの人に小精霊が見えなくなりました。

 精霊への暴挙に許せないと立ち上がったのが、ラーファでした。

 十九歳になり、精悍な青年として成長したラーファは、精霊院副神官として王宮に向かいました。

 精霊院神官の礼装を纏い、王宮の中を堂々と歩を進めるラーファに、大臣たちは目を奪われました。

「王よ、王太子よ、どうか聞いてください、この国の人間は精霊とずっと一緒に、仲よく生きてきました、こんなのは間違っています!」

「ラーファ、精霊院の副神官にして我が息子よ、わかってくれ、狩りは必要なことなのだ」

「小精霊の力があれば、この国はもっと発展するんだよ」

 ラーファはそれからも精霊狩りを止めさせようと繰り返し説得しましたが、聞く耳を持ってもらえませんでした。

 小精霊は、幼かったラーファと遊んでくれました。

 母が死んで悲しみに沈んでいた時、小精霊はなぐさめ、精霊院までついてきてくれました。

 ラーファは見ました。

 小精霊たちは姿を変える前に、子供や、精霊院の神官や巫女たちへ最後のあいさつにやってきました。

 小精霊とおしゃべりや、お菓子のわけっこができなくなった子供たちは、かなしいけれど友達が傷つかなくなるならよかったと、笑顔でおわかれをしました。

「たとえに技術が発展しようとも、子どもたちが泣き、精霊の声が途絶えてしまっては、ピクシェノスが本当に豊かになったといえるのでしょうか、私は思わない」

 とうとう、ラーファは王家と闘う決意をしました。



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