第1章9話:別視点
<聖女視点>
フィオネが冒険者ギルドで、試験官をぶっ飛ばしたのと同時刻――――
大神殿において、精霊から重要なお告げがあった。
アルトハイム帝国。
その中心にある帝都。
帝都には皇帝が住む王城がそびえたっている。
そして王城の隣に位置するのが【大神殿】である。
純白の石材で造られた荘厳な建築物。
高さ100メートルを超える尖塔が、いくつも天を突いている。
そこには聖女が住んでいた。
年齢は22歳。
身長152センチ。
長い銀髪。
青い瞳。
白と金の装飾がほどこされた衣装に身を包んでいる。
彼女の名はリゼアーナ。
アルトハイム帝国の聖女だ。
年齢は22歳。
リゼアーナは水晶球に両手をかざしながら、祈りをささげていた。
「偉大なる精霊よ……どうか帝国の未来を示したまえ」
静かな声で詠唱する。
すると。
水晶球がぼんやりと光り始めた。
青白い光。
それが徐々に強くなっていく。
やがて光が収束し――――
水晶球の中に映像が浮かび上がった。
それは一人の若い女性の姿。
茶色のセミロング。
黄色い瞳。
紅色のワンピース風の衣服。
「この方は……」
リゼアーナが注視する。
同時に、精霊からの声が脳内に響いた。
『――――クラルドット家の令嬢、フィオネ』
クラルドット家。
名前は聞いたことがある。
しかしフィオネという女性の名は知らなかった。
『彼女こそが、帝国の未来を救う英雄となる』
……!?
聖女は息を呑む。
『絶対に逃してはならぬ。帝国の未来を守りたいならば、フィオネと友誼を結んでおくこと。必ず国につなぎとめておくことだ』
精霊の声はおごそかで、絶対的な響きを持っていた。
精霊が言うべきことを言い終えたことで、水晶球の光が消える。
映像も消えた。
リゼアーナは立ち上がる。
(これは大変なお告げですね。さて、どうしましょうか)
精霊のお告げは絶対守らなければならない……というわけではない。
しかし極めて重要な意味を持っている。
そのお告げを無視して帝国に良いことは一つもない。
しかも今回は『絶対に逃してはならぬ』という、強い言葉で指示してきた。
それだけフィオネが重要な人物だということだ。




