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第1章7話:冒険者ギルドへ


(さて……冒険者ギルドはどこかしら)


周囲を見回しながら歩く。


すると大通りの先に、大きな建物が見えた。


看板には『冒険者ギルド』と書かれている。


「あった」


フィオネは足を速めた。


ギルドの扉を開けて中に入る。


広いロビーが目に入った。


奥には受付カウンターがあり、数名(すうめい)の受付嬢が立っている。


左の壁には掲示板があり、依頼書が貼られていた。


右は飲食スペースになっているようだ。


ギルド内には冒険者らしき人々が何人もいて、談笑したり依頼書を眺めたりしている。


フィオネは受付カウンターへと向かった。


空いているカウンターの前に立つ。


受付嬢が尋ねてきた。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」


受付嬢は20代半ばぐらいの女性だった。


黒髪のポニーテール。


青い瞳。


ギルドの制服に身を包んでいる。


フィオネは答えた。


「冒険者登録をしたくて来たの。お願いできるかしら」


「かしこまりました。では登録(とうろく)手続(てつづ)きをさせていただきます」


受付嬢が棚から書類を取り出してきた。


「こちらの用紙に必要事項をご記入ください。代筆は必要ですか?」


異世界では識字率(しきじりつ)が高くない。


文字の読み書きができない人のために、代筆サービスが備わっていることが多い。


「文字は自分で書けるから、問題ないわよ」


羽根ペンとインクを渡される。


フィオネは書類に目を通した。


名前、年齢、性別などの記入欄がある。


(名前……か)


フィオネは少し考えた。


彼女はもうクラルドット家の一員ではない。


ゆえにクラルドットの家名(かめい)を名乗る資格はないだろう。


(名前だけでいいわね)


彼女はペンを取り、『フィオネ』という名前だけ記載する。


他の項目についても埋めていった。


必要事項を全て記入したあと、受付嬢に用紙を渡す。


「ご記入ありがとうございます」


受付嬢が用紙に目を通す。


「フィオネ様ですね。それでは次に登録(とうろく)試験(しけん)を受けていただきます」


「登録試験……」


「はい。冒険者としての最低限の実力があるかどうかを確認させていただきます。試験内容は模擬(もぎ)試合(じあい)です。ギルドの上位(じょうい)冒険者(ぼうけんしゃ)と木剣を用いて戦っていただきます」


「なるほど……」


「ではこちらへどうぞ」


受付嬢が案内を始める。


フィオネは彼女のあとを歩き出した。


ロビーを抜けて奥の廊下を進んでいく。


やがて裏口に到着した。


扉を開けると、広い練習場が目に入った。


土の地面。


周囲には石製の(へい)


(すみ)には武器庫らしき小屋があった。


二人は練習場の真ん中あたりまでやってきた。


「対戦相手を呼んできますので、少々ここでお待ちください」


「承知したわ」


受付嬢が去っていく。


フィオネはそのあいだ黙考する。


(フィオネは実家の英才教育で、戦闘訓練を積んでいる。さらにその教育の過程で、盗賊を斬り殺したこともあるぐらいだから、戦う覚悟は決まってる。まあ……模擬試合で殺し合いにはならないだろうけど)


貴族は英才教育の中で、たいてい騎士科目の訓練を受けている。


剣術や体術、護身術を学んでいるのだ。


さらに現在は【ゲーム魔法】によって、さまざまなバフもかけられる。


戦闘能力は十分だと思う。


(さすがに登録試験に落ちることはないと思うけど……前世の記憶が戻ってからの(はつ)戦闘だからね。油断せずにいきましょう)


とフィオネはやる気を高めた。






ややあって、受付嬢が帰ってきた。


彼女の後ろに一人の男性がついてきている。


彼がフィオネの対戦相手だろう。


20代後半ぐらいの男性である。


身長175センチ。


筋肉質な身体つき。


黒髪。


緑色の瞳。


冒険者らしき装備を身に着けている。


手には木剣を持っていた。


受付嬢が紹介する。


「こちらが試験官を務めるグレンさんです」


「よろしく」


グレンが軽く手を上げた。


(うーん、強そうだな……さすが試験官)


そうフィオネは思いつつ。


「こちらこそ」


と応じた。


そのとき練習場にいた冒険者たちが何人か、フィオネたちに注目した。


「お……なんかやるみたいだぞ? 決闘か?」


「いや違うな。アレはたぶん登録試験だろ」


「あの茶髪の()が戦うのか。相手はグレンさんか」


「グレンさんは強いし、容赦ないからな~。あの()、ボコボコにされそう」


「さすがにグレンさんも手加減するだろ……」


冒険者の観衆ギャラリーたちが6~7名ほど。


どうやらフィオネの登録試験を見ていくようだ。






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