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第1章35話:フィオネの奥義


フィオネは言った。


「じゃあ……今度は私が本気を見せてあげるわ」


「!?」


フィオネが右手をかざす。


心の中で詠唱した。


(―――――【神剣(しんけん)ミルスアーレ】)


次の瞬間。


空間がきしむ。


部屋(へや)全体(ぜんたい)震動(しんどう)する。


それと同時に。


フィオネの右手に、一振(ひとふ)りの剣が出現した。


白銀(はくぎん)に輝く剣身(けんしん)


柄には宝石が埋め込まれている。


神々しい光の粉をひらひらとまきちらす、美しい宝剣。


前世のゲームで、最強の武器として君臨していた剣であった。


ミルスアーレが現れた瞬間。


その剣が秘めた力の強大さに、大気が震えていた。


ビリビリと、ガドニウスの全身に伝わる神圧(しんあつ)


「な、なんだこの圧力は……!?」


ガドニウスはあまりの恐怖に顔をひきつらせた。


エレクとキルティアも、恐ろしい重圧に顔をゆがめる。


「なあ。これはマジで……やばくねえか!?」


「とてつもない重圧です……あれはまさか、聖剣……!?」


ミルスアーレは神剣なので、聖剣よりも格上(かくうえ)だ。


神にすらダメージを与えることができる。


規格外の武器である。


「エレク、キルティア。ちょっと離れておいたほうがいいかもしれないわ。巻き添えを食らうかもしれない」


「ま、まじかよ……」


「わかりました!」


エレクとキルティアは、さらに遠くへと退避し始めた。


(念のため、あの2人には【防護魔法(ぼうごまほう)】をかけておいてあげよう)


とフィオネは思ったので、逃げゆく2人に防護魔法をかける。


よし。


これで2人が巻き添えを食らって死ぬことはないだろう。


「くっ……!」


とガドニウスが、ミルスアーレを見つめながら大量の冷や汗を浮かべていた。


(くそ……身体の震えが止まらぬ……!! この我が、恐れを抱いているだと!?)


全身がガタガタ震えていた。


かつて感じたことがないレベルの恐怖だった。


(なんという凄まじい霊圧。なんという膨大な魔力! 気が狂うほどの力が、あの剣に宿っているのがわかるぞ!! あんなデタラメな武器を、人間が手にしているというのか!!?)


恐ろしい。


逃げ出したい。


そんな想いがガドニウスの精神を支配する。


フィオネは神剣ミルスアーレを構えた。


(ミルスアーレは強力だからね。とりあえず全力の20%ぐらいの力で使おう)


そう決めて。


剣を地面に突き刺した。


「――――【神気(しんき)解放(かいほう)殲滅(せんめつ)(ひかり)】」


次の瞬間。


ドォオオオオズバアアアァアアンッ!!!


凄まじい轟音とともに、巨大な光の柱が天に向かってそそり立った。


直径400メートルほどの広さがあるボス部屋で、約300メートルほどの範囲に発生した光の柱。


純白の光柱(こうちゅう)が部屋を白く染め上げる。


あまりの広範囲(こうはんい)魔法(まほう)に、ガドニウスは避けることができず飲み込まれる。


「ぐ……ああああああああああっ!!??」


ガドニウスが絶叫した。


滅魔(めつま)の光が、ガドニウスの身体を燃焼させていく。


防ぐことは不可能。


ただただ、圧倒的な力に飲み込まれるだけであった。


(化け物……化け物めェ……!!)


ガドニウスは消えゆく意識の中で、フィオネの怪物ぶりに理不尽さを覚えた。


(魔将である我が……負ける、など……!!)


そして――――


ガドニウスの命は潰える。


光の柱がなくなったとき。


ガドニウスはボロボロになった状態で地面に倒れていた。


絶命している。


地面には巨大なクレーターができていた。


天井にも同じような形の陥没(かんぼつ)ができている。


ダンジョンの壁は一定(いってい)以上(いじょう)壊れないので、その程度の被害で済んでいるが……


通常の建物であったら、たとえ城でも倒壊していただろう威力だ。


「……」


「……」


部屋の入り口の外まで逃げていたエレクとキルティアは、完全に言葉を失っていた。


ただ呆然と、全てが終わったあとの光景を眺めるだけ。


やがてエレクがつぶやいた。


「フィオネのやつ……最後までやりたい放題だったな」


「そうですね……もう驚くのも疲れましたよ」


Bランクはあるだろう魔族を、たった一人で討伐する――――


呆れるしかない所業だった。


フィオネは神剣ミルスアーレを消し去り、まずはガドニウスの遺体をアイテムボックスへと回収しておく。







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