第1章31話:討伐後
一方。
田舎街クレトートの正門前では……
冒険者や衛兵たちが魔物の群れと激しく戦っていた。
ゴブリン。
ホブゴブリン。
ワーランドウルフ。
次々と押し寄せてくる魔物たち。
「くそ……キリがない!」
「数が多すぎる!!」
冒険者や衛兵たちがスタンピードの勢いに苦悩する。
そのとき。
「ギャアッ!?」
「グルルッ!?」
魔物たちが突然、力を失い始めた。
その場にバタバタと倒れていく。
「な、なんだ!?」
「魔物たちが……!」
冒険者たちが驚く。
やがて全ての魔物が倒れた。
動かなくなる。
「これは……もしかして……」
一人の冒険者がつぶやいた。
「ダンジョンボスが討伐されたんだ!」
「おおおおおッ!!」
その場にいた全員が歓声を上げた。
ダンジョンボスが倒されると、ダンジョンからあふれだしていたモンスターたちは死滅するのだ。
「やったぞ!」
「勝ったんだ!」
「っしゃああああああああ!!」
喜びの声が響き渡る。
こうして、無事にモンスタースタンピードは制圧されたのだった。
エレクが言った。
「とりあえず……これでスタンピードは終わりだな」
フィオネは倒したデスファングの素材を眺める。
「デスファングの素材……どう山分けしようかしら?」
2人を肩越しに振り返りながらフィオネは尋ねた。
キルティアが応じた。
「いや、もうあなたが一人で持っていってください」
「え……いいの?」
「お前が一人で倒したんだしな。俺たちに分配を主張する権利はないさ」
冒険者の報酬分配は、貢献度に応じて決まる。
それが一般常識だ。
その常識に照らしていえば、フィオネがデスファングの素材を総取りするのは妥当ということである。
ただ。
(全部持って行くのはさすがにね。せっかく3人で来たんだし、いくらかは分配しよう)
エレクとキルティアだって素材は欲しいだろう。
だからフィオネはデスファングの牙や、肉の一部を2人に分け与えることにした。
「……いいのか?」
「うん。独占するのはやっぱり気が引けるから」
そう言うとエレクとキルティアは顔を見合わせてから。
「そうですか……では有難く」
牙を受け取って、アイテムバッグへと収納した。
残りの素材はフィオネがアイテムボックスに収納する。
これでデスファングの素材回収は終了である。
「さて……あとは宝物部屋ね」
ボスを倒したあとに出てくる宝物部屋。
そこにはダンジョンボスの討伐報酬となる宝箱。
およびダンジョンコアがある。
「どんなお宝があるか楽しみね」
3人は扉に向かって歩き出した。
しかし。
そのときだった。
「ハハハハハハハハ!」
笑い声が響いた。
フィオネたちが立ち止まる。
「人間どもよ。ダンジョンボスを倒したか。やるではないか」
声は上から聞こえた。
床から5メートルぐらいの位置。
そこに黒いモヤが発生していた。
(な、なに!?)
とフィオネたちは警戒する。
その黒いモヤが、だんだん輪郭を成していく。
そして。
「!?」
現れたのは一匹の魔族。
筋肉マッチョで大柄の魔族だ。
赤い肌。
目は白目の部分がすべて黒く染まっており……
その黒の中心に黄色い瞳があった。
その魔族は床から5メートルぐらいの位置に滞空し、3人を見下ろしていた。
「な、なんだこいつは……!? またダンジョンボスか!?」
とエレクが警戒の言葉を述べる。
しかしキルティアが否定する。
「いえ……おそらくボスとは別の存在でしょう」
「その通りだ。我はダンジョンボスなどではない」
魔族は告げた。
「我は魔将ガドニウス。グレートデーモンと呼ばれる存在だ」
「なっ……魔将!?」
「グレートデーモンですって!!?」
エレクとキルティアが顔を青ざめさせた。
魔将――――魔族の中でも特に強力な戦士階級。
圧倒的な力を持つ存在として、恐れられている。




