第1章30話:ボス
ギィィィ……
重苦しい音を立てて、扉がゆっくりと開いた。
中は―――――
巨大な大広間だった。
天井が恐ろしく高い。
前後も横幅も直径400メートルはあろうかという広大な空間。
そして。
大広間の中央に、巨大な狼が鎮座していた。
体長は5メートルを超える。
赤黒い毛並み。
鋭い牙。
ぎらぎらと光る赤い瞳。
「デスファングだ……!」
とエレクが息を呑んだ。
キルティアが述べる。
「Cランクの魔物図鑑で見たことがあります……! ウルフの上位種ですよ」
デスファング……Cランク相当の魔物。
並みの冒険者では太刀打ちできない、強力な魔物である。
「DランクダンジョンのボスはD~Cランクになることが多いからな。予想はしていたが……やっぱりこういう強敵が出てくるか」
とエレクが険しい表情で告げる。
(デスファング……なかなか強そうな魔物だね)
とフィオネも思った。
「ガルルルル……!」
デスファングが侵入者である3人の姿を見て、低くうなり声をあげた。
恐ろしい威圧感が襲ってくる。
それはまるで殺意が風になって吹き付けてくるような感覚。
エレクとキルティアが冷や汗を浮かべる。
「くっ……殺気がやべえ! これが、Cランクの圧力か……」
とエレクは打ち震えそうになる。
2人は剣と弓を構えた。
デスファングが四肢の筋肉をたわめる。
そして――――
「ガアアアアアァッ!!!!」
咆哮をあげて突進してきた。
地面を蹴り、猛烈な速度でフィオネたちに迫る。
「来るぞ!」
エレクが叫んだ。
キルティアが告げる。
「いったん散開しましょう――――え!?」
フィオネがデスファングを迎え撃つため、走り出した。
デスファングとフィオネが接近していく。
「―――――【神魔剣術・天烈斬】」
フィオネが剣を振るい、一閃する。
光が弾けた。
次の瞬間――――
ズバアァァンッ!!!
デスファングの巨体が、真っ二つに両断された。
血しぶきが宙を舞う。
デスファングは悲鳴を上げることもなく、地面に崩れ落ちた。
一撃死だ。
「っ!?」
「なっ!?」
エレクとキルティアが同時に叫んだ。
あまりに速すぎる終幕に、一瞬、理解が追い付かない2人。
やがて理解が追い付いてから、彼らはつぶやいた。
「まじか……Cランクの魔物を一撃かよ……」
「相変わらずめちゃくちゃですね……」
信じられないものを見たという表情で、2人はつぶやいていた。
ともかくデスファングは死んだ。
ダンジョンボスが討伐されたことにより、大広間の奥に新たな扉が出現した。
ボス討伐の報酬となる宝物部屋である。




