第1章27話:逃亡
直後。
ジャランは起き上がった。
「くああああああああああ!! も、もう嫌だあああああァアアア!!!」
わめき散らし始めたジャラン。
さっきからさんざん空回りしていたことや、ダメージによるストレスで、心が限界に達したようである。
ジャランはプラムタスに背を向けて、逃亡し始めた。
通路の奥へと逃げていく。
「あ……おい!?」
とエレクが呼び止めようとするが、ジャランが走り去っていく。
通路を走るジャラン。
息が切れる。
全身が痛い。
「くそ、くそ、くそぉおおおお!!!」
ジャランは必死で逃げた。
壁に何度も叩きつけられた痛みが、全身を駆け抜けていた。
右腕も、足も、背中も痛い。
(逃げるんだ! もうダンジョン攻略はいい! 俺は帰る!!)
暗い通路を闇雲に走る。
(さっき大穴から落ちたから、きっとここは第2層だ! 階段を登ればすぐに地上まで戻れるはずだ!!)
もちろん勘違いである。
ここは第5層なので、帰るにしても時間はかかる。
一人で魔物を蹴散らしながら帰るのは無理なのだが、ジャランはそのことに気づいていない。
ただ暗い通路を闇雲に走るばかりだ。
だが。
そのとき。
ガシャッ!
嫌な音がした。
思わず立ち止まってしまう。
「……!!」
足元に魔法陣が出現する。
青白い光が床から立ち昇る。
「ま、また罠かよ!?」
ジャランが慌てて飛びのこうとする。
だが遅かった。
魔法陣の光が一気に強まり――――
視界が真っ白に染まった。
(まずいぞ……これは、転送罠!!)
ジャランの身体が宙に浮く。
重力が消失したような感覚。
視界が歪む。
「うわああああああああああっ!?」
ジャランは叫んだ。
次の瞬間。
ドサッ。
石の床に転がり落ちたジャラン。
「い、痛ってえ……!!」
顔をゆがめながらジャランがゆっくりと起き上がる。
周囲を見回した。
「ここは――――、ひっ!!?」
ジャランは絶句した。
石造りの部屋。
四方を壁に囲まれている。
広さは左右100メートルといったところ。
そこに、人型の植物モンスターがいた。
体長は190センチほど。
頭部には花のような器官がある。
両腕は太いツルのようになっていた。
この魔物の名前はグレルヴォ。
Eランクの魔物である。
弱くはないが、ジャランでもギリギリ倒せなくない魔物だ。
しかし問題は……
「な、なんだこの数は!?」
グレルヴォが部屋の中に30匹近くいる。
その中にジャランが一人だけ放り込まれていた。
「む、無理だ……この数は無理だ!」
ジャランの顔から血の気が引いた。
「クギャアアアア!!」
とグレルヴォが動き出す。
ジャランを目掛けて迫ってくる。
ジャランは逃げようとしたが、すぐ後ろは壁だった。
逃げられない。
「無理だあああああああ! 誰か助けてくれ! ギルマス! フィオネ!」
しかし絶叫むなしく。
一斉に殴りかかってくるグレルヴォたち。
「あああ……ああああああああああああぁぁッ!!!」
ジャランはただ、絶望の悲鳴を上げるしかないのだった。




