第1章26話:迷惑、連続
ジャランが起き上がりながら、地団駄を踏む。
「くそ! くそくそくそ!! ふざけるな! なんで俺ばかりがこんな目に……!!」
そしてフィオネたちを振り返って叫んだ。
「お前たちが先に歩け!! もう俺は先頭を歩かないぞ!!」
「……」
フィオネたちは顔を見合わせる。
エレクがため息をついた。
「まあ……幸い、こいつが罠を2つとも消化してくれたみたいだしな」
「ここからはしばらく罠がありませんものね……」
とキルティア。
ジャランのわがままっぷりには呆れつつも、要求自体は受け入れる雰囲気の2人だ。
というわけで。
フィオネたちは左の道ではなく、正面の道を歩き続けた。
ジャランが最後尾をついてきた。
「もっとキビキビ歩け! とろいんだよノロマども!!」
罠を2連続で食らってイライラしてるのか、ジャランが怒鳴ってくる。
フィオネたちはため息をつきながら歩き続けた。
しばらく進むと、道中の壁にくぼみがあった。
そこに宝箱が置かれている。
「お……宝箱か」
とエレクがつぶやいた。
フィオネはマップを確認する。
(いや……この宝箱は罠だわ)
マップには紫色のマークが表示されている。
ダンジョンの宝箱は、罠が仕掛けられていることがある。
眼前の宝箱は、まさにソレだ。
しかしジャランは目を輝かせた。
「おお宝箱じゃないか! お前ら邪魔だ! 退け!!」
「……っ!」
ガッ、とエレクやキルティアを押しのけ、宝箱の前に躍り出るジャラン。
「お、おい……!」
とエレクが言いかけたとき、ジャランが怒鳴った。
「なんだ!? 俺が宝箱をもらって、何か文句があるのか!?」
「……」
「くく。見つけた宝物は全て俺のもんだ。お前たちは、素直に俺に譲ってればいいんだよ!」
ジャランは、さっそく開けようとする。
だが。
次の瞬間。
ドカァァァァンッ!!!
宝箱が爆発した。
「ぐああああああああ!!!?」
ジャランが盛大に吹き飛ばされる。
もんどり打ちながら、壁に激突した。
ずるずると地面に滑り落ちる。
「ぐっ……痛ってえ……!! くそ!! また罠かよォオオオオ……!!!??」
ジャランが痛みにもだえながら憤慨している。
もうみんな呆れかえって、言葉も無かった。
と。
そのときだった。
ズルズルズル……
何かが這いずるような音が聞こえてきた。
「……!」
フィオネが警戒する。
通路の奥から、大きな影が現れる。
緑色の植物のような肉体。
無数のツルが蛇のようにうごめている。
口のような部分には鋭い牙が並んでいた。
「プラムタスですね……!」
とキルティアが警戒の声を上げた。
プラムタス。
植物系の魔物である。
ツルを自在に操り、獲物を捕らえて捕食する。
「ちっ……爆発音を聞きつけて来やがったか」
エレクが剣を構える。
さらにエレクはジャランに向かって告げる。
「お貴族様は、後ろに下がっててください」
するとジャランは鼻を鳴らした。
「はン!! 俺に命令するな庶民! ……だが、まあ、魔物の相手は任せるぜ……」
と、へっぴり腰な発言をするジャラン。
罠を食らいまくってダメージを負っていることもあり、ジャランは魔物と戦う気がなかった。
(まあ、邪魔にならなきゃそれでいいわ)
とフィオネは思った。
しかし。
プラムタスは……
「グギャ、グギャ」
ジャランに標的を向ける。
プラムタスは賢い魔物であり、敵数を素早く減らすため、いちばん弱い人間から潰していく習性を持っていた。
4人の中で最も弱いのはジャランだと判断したプラムタスは、ジャランにツルを伸ばす。
「!!??」
シュルルルッ!!
ツルをムチのようにしならせて、ジャランの足に巻き付けた。
「なっ!?」
ジャランが慌てる。
しかし次の瞬間。
プラムタスがジャランを持ち上げて、壁に叩きつけた。
「ぐあっ!?」
一瞬息が止まったジャラン。
しかし、まだプラムタスはジャランを離していない。
さらに叩きつける。
「がっ!?」
さらに叩きつける。
「ぐがっ!?」
さらに叩きつける。
「あがああッ!!?」
何度も何度も壁に叩きつけられるジャラン。
「おま、お前ら……! 助け……ぐがあっ!!??」
さらに2~3度叩きつけたジャランを、プラムタスが放り投げる。
ジャランの身体が地面に転がった。
さすがにジャランも満身創痍であり、すぐには起き上がれない。
そんな様子を見て、エレクが呆れたようにつぶやく。
「あいつ……何の役にも立たないな」
まったく同感なので、他の2人も異論を述べる気は起こらなかった。




