第1章15話:出発
正門を出発して、フィオネたちは街の外に出た。
正門前に広がるのは草原地帯である。
緑の草が一面に生い茂り、遠くまで続いている。
草原には点々と岩が転がっており、ところどころに低木も生えている。
空は青く澄み渡っていた。
「草原を抜ければ、すぐ【ナナブロスの森】に到着する。歩いて30分といったところだ」
とエレクが説明する。
フィオネたちは歩き出す。
草を踏みしめる音。
静かな草原である。
スタンピードはまだここまで来てないようだ。
しかし油断はできない。
スタンピードとは関係なく、草原にも魔物がいるからだ。
ふいに岩石の陰から魔物が飛び出してくるかもしれない。
(異世界では、不意打ちがあったときのために、【身体強化魔法】を展開しておくのが定石)
異世界で生きていれば魔物や盗賊、ときには味方から不意打ちを食らうこともある。
そんなときのために戦士は、肉体を魔力で強化する【身体強化魔法】を常時展開する。
(身体強化魔法は肉体に魔力をまとわせるだけで、特別な技術ではないから、固有魔法を持たない人間でも使える。実際、フィオネも実家を追放になる以前から常時展開している)
常時展開するのは魔力の消費が重いが、そこは幼少期からの訓練でカバーしている。
いつなんどき闇討ちされるかわからない貴族にとって、常時展開の訓練は必須である。
(……ただ私はゲーム魔法を使っておいたほうがいいかも)
とフィオネは考えた。
身体強化に代わるゲーム魔法としては【防護魔法】が優秀だ。
防護魔法のほうが魔力の消費が圧倒的に少ない。
何より防御力が高い。
完全に上位互換である。
こちらを常時展開しておこう。
……さて草原を歩き続ける。
幸いなことに草原では魔物に遭遇することはなかった。
スムーズに草原を抜けることができる。
やがて前方に、鬱蒼とした森が見えてきた。
「あれがナナブロスの森ですね」
とキルティアがつぶやく。
巨大な樹木が立ち並び、森全体が薄暗く見える。
「ああ。あの森の奥にダンジョンがあるということだったな。気を引き締めていこう」
とエレクが告げた。
3人は森の中に足を踏み入れる。
木々が鬱蒼と生い茂り、太陽の光があまり届かない。
地面には枯れ葉や苔が積もっている。
湿った空気が肌にまとわりつく。
(なかなか雰囲気のある森だね。いかにも魔物が出てきそう)
とフィオネが心の中でぼやいた。
森の奥へと進んでいく。
木々のあいだを縫うように歩く。
枝を避け、根を越え、けもの道を進む。
静かな森だった。
鳥の鳴き声すら聞こえない。
だが……
ある程度進んだ時だった。
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ……
と複数の足音が聞こえてきた。
「!!」
足音は、かなりの数である。
「これは、まずいですね……」
とキルティアが冷や汗を浮かべた。
「ああ。囲まれた……!」
とエレクも表情を強張らせた。




