第1章11話:冒険者カード
<フィオネ視点>
試験後。
冒険者ギルドの職員がやってきてグレンを担架で運んでいく。
受付嬢がフィオネに向き直った。
「フィオネさん、試験は合格です。おめでとうございます」
「ど、どうも……」
フィオネは安堵のため息をついた。
「グレンさんをあんなふうに倒すなんて……フィオネさんって、とてもお強いんですね」
「いやー、そんなことはないと思います……よ?」
「いえ、そんなことあると思います」
と受付嬢は真顔で告げた。
「それでは冒険者カードを発行いたしますので、ギルドの待合室でお待ちください」
「あ、うん。わかったわ」
受付嬢に案内されて、フィオネは待合室へと向かった。
廊下を進み、小さな部屋に入る。
部屋の中には木製のテーブルと椅子がいくつか置かれていた。
カード作成には10分ほどかかるらしいので、椅子に座って待機することにする。
(はぁ……まさかゲーム魔法の戦闘能力が、ここまで強力だなんてね)
ゲーム魔法の凄まじさを改めて実感する。
(これからはもっと慎重に力を使わないとね。少なくとも……人間相手には)
下手をしたら相手を殺してしまうかもしれない。
魔物や盗賊が相手ならともかく、さっきみたいな場面では力加減を考えないといけないだろう。
フィオネは反省する。
そうこうしているうちに時間が経過していった。
10分後。
コンコンとドアがノックされる。
「フィオネさん、カードができあがりました」
「あ、はい」
ドアが開き、先ほどの受付嬢が入ってきた。
彼女は一枚のカードを差し出してくる。
「こちらが冒険者カードです」
フィオネはカードを受け取った。
銀色のカードである。
カードには名前とランクが記載されている。
ランクはFランクと表示されていた。
(Fランクか……冒険者ランクはSまであるけど、実際はCぐらい行ければ一流なんだよね。たしかギルドマスターでもCランクが一番多かったはずだし)
冒険者は命の危険がある仕事なので、簡単にはランクが上がらないようになっている。
そのため多くの冒険者がFランクから抜け出せずに一生を終える。
よくてEランクどまりだ。
Dランクまでいけたら中堅以上。
Cランクまでいけたら一流というのが、この世界の常識である。
「初登録の方は全員Fランクからのスタートになります。依頼をこなして実績を積めば、ランクアップすることができます。……フィオネさんはグレンさんに勝ったぐらいですから、すぐに上位ランクに上がれると思います。頑張ってください」
フィオネはカードをアイテムバッグに収納する動作をしながら、アイテムボックスへと放り込んだ。
「それでは冒険者登録の手続きは以上です。何か不明な点はございますか?」
「いえ、大丈夫よ。ありがとう」
「そうですか。では」
受付嬢が部屋を出て行く。
フィオネも立ち上がって、待合室をあとにした。
廊下を歩いてロビーへと戻る。
フィオネはおもむろに依頼掲示板のほうへと歩いていった。
掲示板にはさまざまな依頼書が貼られている。
魔物討伐。
素材採取。
護衛任務。
興味深い依頼がいくつもあった。
(冒険か……うーん)
フィオネは掲示板を眺めながら思う。
(この街であんまり長居はしたくないんだよね)
ジャランのことが頭をよぎる。
さっき街中で遭遇してしまったばかりだ。
また鉢合わせをするのは避けたい。
(依頼を受けるのは、別の街のギルドに行ったときでいいかな)
そう決めてフィオネは掲示板から目を離した。
ギルドを出よう。
そう思って玄関ドアのほうへ足を踏み出そうとしたとき――――
バァンッ!!
と玄関ドアが勢いよく開かれた。
「た、大変だ!」
息を切らした男性が飛び込んできた。




