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転生愚者  作者: みむやむ
2章:新しい人生
6/8

2. 愚かな冒険者 フォール≪前編≫

今回はフォールさんの過去の冒険者時代の話です。

賛否あるかもしれませんが。引き続きよろしくお願いします


冒険者になって1か月が経った。


父親を殴ったと言う事実が罪悪感として重く圧し掛かる


罪悪感を感じて、足取りが重くなった。


「自分の実力も分からない、俺が教えた剣や槍、母さんの魔術、何一つまともに使えないお前が冒険者になるだと、それは夢を見過ぎた愚か者だ!」


この言葉が今となって頭に響く。


考え事をしながら、一枚の扉を開いた。


ガチャ


響き渡る扉の音に、数人しか居ない店内の目は数秒だけこちらに向くが何かが起きるわけでもなく、元の位置に戻っていく。


何時ものカウンター席に座る。


「パンにスープのセットを頼む。」


どこかで執事をしていたかのような風貌の店主に頼む。


「銅貨3枚だよ」


そう言われ、銅貨三枚を渡す。


1分もしないうちに、スープとパンが食卓に置かれる。


硬くボソボソとしたパンを、スープに浸しながら今日の稼ぎを数える。


「銀貨2枚か・・・」


銀貨2枚・・日本円で言うと精々2000円だ。


1日で3食食べると、同じ料理でも銅貨9枚、これで半分は使い切る。


勿論銀貨1枚と銅貨1枚で泊まれる宿屋もないので貧民街で野宿の毎日だった。


思えば才能と言った言葉が一番の枷だったのかもしれない。


どれだけ振っても、強くならない剣。


魔術も毎日のように覚醒しないかと、詠唱するが無駄だった。


はたから見れば可笑しい奴であるのは自覚があるも、諦めきれない


それは自身が転生と言った非凡な事象に巻き込まれたからだった。


そんな毎日を過ごしていると、いきなり後ろから声を掛けられた。


「フォール!」


自分と同じ髪色をした少し小柄な女の子が自分の名前を呼ぶ。


イブだ。


石で出来た道の上に彼女は立っていた。


「ちょっと、なんで無視するの?」


最初無視したのは反射だった。


今ここにいる自分は、父親に大口を叩いてそれを否定された挙句、逆切れして父を殴り。


そのまま村を出てきた・・・控えめに言ってもクズだから。


それでいて、冒険者として成功ができるはずもなく、ただただ生きるだけの毎日が過ぎていく。


そんな俺は自分でも滑稽だと思える今、同郷の人間にどの顔で会わせればいいのか、分からない。


ここで会わす顔のあるほど面の皮は厚くはなかった。


その場を無視してイブをまいたがその夜、店で食事をしていると再度イブに話しかけられる。


「フォール、昼はなんで無視したの?」


当然何も言えることなく、無視した。


「また・・無視ね・・まぁいいよ」


イブは話を続ける。


「あのねフォール・・今冒険者上手く行ってないんだよね?」


「他の冒険者の人に聞いたから答えなくても大丈夫だよ、でね・・今言うのも意地悪ってわかってて言わせてほしい。」


「町に戻らない?」


俺はその時、心配してくれているイブよりも、自分の自尊心を優先して感情のままに怒るが、イブは続ける。


「フォールが頑張っているのは凄くわかるけど・・このままでは何をするにも無計画でフォールが死んでしまうと思うの」


「別に俺の命だろ、お前に心配されるようなものでもない!」


「フォール・・控えめに言っても冒険者は無謀なんだよ・・・夢を見るのが悪いと言わないけど、フォールは見過ぎだとおもうよ・・」


「煩い、お前に言われる筋合いはない。」


「大体なんで、今頃来て戻ろうなんて言って来るんだよ、お前に何も分かるはずがないだろ!」


「分からないから教えてほしい・・・私じゃ今のフォールの事納得できない・・」


「なら付きまとうなよ!お前に俺は助けなんて求めていない!」


「・・・帰れよ」


「フォール・・・」


「帰れって。」


話を強引に切った。


イブはなにか言いたげに、帰った。


その背中を見て、何か間違えた気がしていた。


それからもイブは毎日「帰ろう」と言い続けた。


無視し続けた。


そこから数日もして、いつも通りE級の依頼の報告をしようとしていた時だった。


「嬢ちゃん、凄いな。」


「俺のパーティに入らないか?」


など人だかりができていた。


なにがあったと好奇心に駆られて、思い遠目で見ていると中心人物と目が会った。


肩で切り揃えられた灰色の髪に青い瞳、全身には魔獣の皮でできた初心者らしいライトアーマーで全身を包んでいる。


イブだった。


どうやら、彼女が異例の速さでD級冒険者に昇格したらしい、今いる人だかりの中にはイブの容姿もあり。


そういったことを狙う輩も中にはいるのだろう。


まぁもしそうなっても助けれる実力もないので、指を咥えるしか出来ないだろう。


目が会った瞬間俺は目を逸らして、その場を離れる。


「まっ・・・」


イブの声は聞えていたが、無視をした。


理由はある。


負けたくなかった。


どうしようもない、下らない理由だった。


「なんで・・あいつが・・・」


イブは冒険者になっていた。


自分の方が先に冒険者だったのにあとから来たイブに数日で追い越される始末。


才能の差を感じてしまった、俺はそんな劣等感に苛まれて荒れた。


そんな中で店に行き、荒れたまま酒を浴びるように飲んだ。


前世を含めてもこれが一番荒れた呑み方だった。


「店主もういっっらい」


「お客さん・・そんな荒れた呑み方やめましょう・・」


「金らしれるんだから、文句いうら」


周りの客もあいつそろそろ、倒れるぞと思った瞬間だった。


扉が開いた。


ガチャ


「フォール・・・」


名前を呼ばれてそっちを見る。


イブがいた、今一番会いたくない人物だった。


「また無視・・・」


俺はイブを無視して続きを呑もうとジョッキを手にした瞬間だった。


後ろからの衝撃で、先ほどまで呑み食いしていた中身が出る。


「げほっ」


酒が回っていて理解が遅いが、吐いたお陰で少し理性が戻った。


「フォール・・見ていられないよ・・・何が君をそこまでするのさ!」


目頭に水を溜めて俺を睨みつけるイブ


「・・・お前に言う必要はない」


瞬間イブから、強烈な右アッパーが懐に入る。


「ぐっ・・」


とても耐えられない衝撃に俺は膝をつく。


「フォールが言葉にして教えてくれないと私には分からない!」


「フォールが帰りたくない理由があるなら、ちゃんと教えて?納得したら諦めるから・・・」


そんな悲痛な叫びが店内に響き渡る。


俺は立ち上がり不意を突いてイブに殴り掛かる。


が・・・すぐにひっくり返され天井を見ていた。


勝てないのだ、冒険者になって数日の女の子にすら・・・


「そこまで言いたくないんだね・・・わかったよ」


イブの目から俺の顔に数滴の涙が落ちる。


その言葉と姿を見て、また取り返しのつかないことをしたと感じた。


「マスターごめんなさい、これ迷惑料です・・・後周囲のお客さんにも何か奢ってあげてください」


「・・・わかりました」


そんなやり取りをしてイブは悲しそうに店を後にした。


「お客さんも今日は帰りなさい。」


俺は店に居ずらく、その言葉を聞いて店を出た。


荒れた心が落ち着かず、別の店に行った。


これが全ての間違いだった。


普段は行かないような高級な店に行くことにした。


店についてまもなく。


「ねぇ・・ご一緒していい?」


妖艶な雰囲気をまとった美女が声を掛けてきた。


「あぁ・・・」


「貴方、冒険者でしょう?その若さで、ここに来るなんてよほど活躍してるのねぇ」


「そうそう、名乗り遅れましたわね、私はアリシアと申します」


「あぁ・・・」


「最近は魔獣が増えてきているみたいね、やっぱり強いのかしら?」


知るはずもない、強い魔獣と戦ったことがない俺は。


「まぁ、魔獣が増えてきているのは無能な領主のだろ」


その発言をした瞬間だった、周囲の空気が一気に圧迫されたものに変わった。


「おい貴様、名前を言え」


小太りの高貴な衣装に包んでこちらを睨む。


「なんだよ、おっさん」


瞬間、周囲からいきなり兵士が沸いて出てきて剣をこちらに向けている。


「名前を聞こう」


そう言い放つと共に周囲に手を差し出し兵に剣を収めさせる。


酒に酔った俺はまともではなかった。


「俺はフォール様だ」


その言葉を聞き、顎鬚を撫でながら考え込む。


数秒が経ち周りが緊張する中、中年が続ける。


「今日は酒の席と言うこととしてやろう・・・」


瞬間周囲の緊張はほぐれた。


「なんだよ・・・あのおっさん。」


そう言いつつ席に戻るといつの間にかアリシアはいなくなっていた。


続きを呑んでいると途中でアリシアが戻ってきた。


「フォール様、、、あの方にあの態度で許されるなんてすばらしい殿方ですわね・・・」


「あのおっさん何者なんだ?周囲に護衛らしき人もいたし・・・」


「今あなたが気にすることはありません、さぁ吞みましょう」


夜が更ける中。


「フォール様・・・私火照っちゃいました・・・」


前世からずっと魔法使い候補の俺はその一言に耐えられなかった。


翌朝目が覚めて、魔法使いになることが無くなった自分は、誇らしい顔で窓を開けた。


朝チュン・・・こんな早い段階でと思い。


異世界万歳と叫びたくなった。


「お目覚めになりました?」


後ろから声が聞こえる。


コーヒーと思われるような飲み物を持ってきていてそれを俺の手に渡してくる。


「コクエン茶ですよ。」


疑問の表情が出ていたのだろうか・・・


「ありがとう」


そう言い、コクエン茶を飲んでいると


「フォール様、先程町の者から聞いたのですが・・・D級冒険者のイブ様とどういった関係で?」


コクエン茶を飲む手を止めた。


「どうもない・・・変な奴だ」


そんな答えを聞いて、アリシアは笑顔で答えた。


「そうですか・・・なら詮索は致しません。」


コクエン茶を飲み干して、アリシアと荷物をもって宿屋を出た時だった。


イブがちょうど通りかかり。


「どうして・・・」


「私が昨日責め立てたから・・・」


など訳の分からないことを言い、走り去っていった。


途中でアリシアと別れて、日課の依頼を受注しに行く。


すると、冒険者ギルドが騒然としていた。


「今日は、嬢ちゃんきてねえんだな」


「昨日酒場で男を殴ってったらしいぜ」


など昨日の酒場での一部始終の話題で騒然としていた。


ギルドに到着して、クエストボードを見ていると。


一人の冒険者が、話しかけてくる。


「お前、昨日イブちゃんに何言った。」


いきなり知らない冒険者に絡まれた。


「お前には関係ない」


「関係はねぇが、昨日嬢ちゃんが泣いて店から出ていくのが見えたんだよ!お前何か言ったんじゃねえのか?」


心に棘が刺さった。


「知らん・・・絡んでくるな」


「おまっ・・・」


横からの衝撃に耐えられずに冒険者ギルドの壁にたたきつけられた。


反撃しようとするも、反撃できない。


3人の冒険者にされるがままに暴行される。


体の全身が痛む中、ギルド職員が仲介に入り。


事情聴取を受けた。


周囲の証言もあり、俺はお咎め無しとなった。


数日が経ち、久々にイブを見かけた、目元が赤く腫れていたが、気丈に話しかけていた。


俺はイブに話しかけようとしたが・・・無理だった。


合わせる顔がなかった。


そんな時だった。


冒険者ギルドに兵士がやってきた。


「冒険者フォールはいるか」


疑問が浮かんだが名乗り出る。


「ここにいます」


「そうか・・・貴様を冒険者暴行の容疑で逮捕する。」


瞬間拘束の魔術が使用される


「土の力よ、誠実の意思を持って我が前の敵を拘束したまえ 土の枷 【アースシャックル】」


拘束された瞬間だった。


「暴行事件の犯人はフォールじゃなくて私だよ、捕まえる相手を間違えてるね!」


イブの言葉が聞こえた。


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