4.死神と愚者
今回も、もし誤字脱字、文脈のおかしいとこがあれば教えてください・・・
早くなれないとなぁあ
戦争が激化した。
激化した戦争の最中での村々を襲うのはもちろん
ジルク盗賊団だけではなく、他の盗賊団も周囲の村々を襲っている。
中でもランロッド帝国のやり口は特に汚い方法だった。
盗賊団に襲われた後の疲弊した村を闇討ちするなど。
前に俺たちがした、敵の鎧を着て救援のふりをして襲う事の比にはならない程
汚い手法で村々を襲い。
自軍の士気を保つために、女は暴行を受け。
男や子供に関しては、父の目の前で死んだ母の肉を子供に食わせるなど、おおよそ
人間のするとは思えない、常軌を逸した残虐で非道理的な進行の仕方だった。
村には瓦礫と見るも無残な屍が転がっていて、まだ帝国より賊に襲われた方がましだと思える惨状が、
周辺各地の村々では繰り広げられていた。
自分達の命があるならと、自ら盗賊に捕まりに来た村さえあったほどだ。
そんなランロッド帝国はその行動で賊に餌を与え。
周囲の賊を新軍の最中、取り込み。
賊とエルアリア公国をぶつけて短期決戦での戦争を仕掛けていた。
刻々とランロッド帝国による進行を受けるエルアリア公国は、ついに切り札ともいえる戦力を出した。
”魔法使い”だった。
この世界では基本的に魔術師はいても魔法使いはいない。
魔法使いは、魔法と呼ばれる22種類に冠する22人しか存在しない。
その22名は使い手が不明なことも多いが、畏怖と敬意の念をもって22人の魔皇と呼ばれ、ある時は恐怖され
またある時は英雄と称される。
魔法とは。
魔術では再現不可能な原理・現象を扱う者である
魔術と魔法の違いは、魔力を使用する際に術理を用いるかどうかで決まる。
その中でも、個人しか使えない固有魔術と魔法の違いを説明すると。
固有魔術はその発動者にしか使えないものだとしても魔力を使うのに術理が存在する。
例え威力が国1つ滅ぼせる力があったとしても、術理を用いている以上魔術の範疇を出ない。
その点、魔法使いはその異質さによって確立されている。
その22の魔法のうち、最も強力なのではと囁かれているのが。
13番の魔法 【死神】
だった、死神についての噂は一つとして存在しない、
理由は明白で
死神の魔法が発動されて生き残った者が今まで一人も存在しないからである。
あるものは死神の能力を死の象徴と言い。
あるものは死神の能力を恐怖の象徴と言った。
複数の情報が錯綜しているがどれも、大袈裟では無いとそう思えた。
最強と言われている死神を、エルアリア公国は切り札として持っていたのだ。
死神の出現により瞬く間に戦況がエルアリア公国に有利な状況となり
周囲の盗賊団及び、ランロッド帝国は壊滅的被害を受けていたが、ランロッド帝国による戦争は止まらなかった。
帝国側にも魔法使いは存在している。
代々帝国に引き継がれている、
4番の魔法 【皇帝】
の魔法使いが送られることとなった。
魔法使い同士の戦いは巻き込まれるだけで死ぬと言われるほど周囲の人間にとっては、最悪の戦いである。
その地獄が開幕されようとしている。
皇帝の出現により、戦況が一時均衡状態に戻ったが、周囲の盗賊団は両国によって壊滅させられ、
ついに盗賊団はジルク盗賊団しか残っていない状況となった、
こうなった時、盗賊は両方にとって邪魔でしかないが、ジルク盗賊団は規模が大きい方なので、
ランロッド帝国は現状エルアリアの勢力のせいで動けない帝国の兵以外の手勢として、ジルク盗賊団を引き入れたことにより、両国からの
討伐を避けることが可能となったが。
依然一触即発な状況であることには変わりはなかった。
そんな状況でも戦況は次第にエルアリア公国に傾いていくことになる。
死神の魔法の恐ろしさが、戦争によっていかんなく発揮される。
魔法使いが魔法を使った後は基本的に影響がその地に残る。
死神の使った魔法はその地に恐怖を植え付ける、各地に恐怖が溜まり
行き場の失った恐怖は、黒い甲冑を来たアンデット ソウルイーターとなり各地を彷徨っている。
膠着状態が続く中、ソウルイーターによる盗賊団の襲撃は再三にわたり続く。
繰り返されるうちに盗賊団の緊張はピークに差し掛かった。
張り詰めた空気の中で俺は、2日間通しで見張りをしていた。
そのせいで、目元にこぶし大ほどの隈ができていた。
その様子を見たエッジが一度休むように気を配ってくれたため、やっと就寝できることとなった。
「おい、奴隷どもを避難させろ!」
周りの騒然とした音で目が覚めた。
何かあったのだと思い体を起こし周囲を確認して戦闘の準備を整えた。
準備ができ、部屋の扉を開けた瞬間だった嫌な勘が働き。
扉を開けて、すぐ後ろに下がった。、
間一髪だった、目の前で振り下ろされた斬撃が地面に刺さり一本の黒い剣が地面に突き刺さる。
体制を整えて、切りかかってきた相手を見た瞬間、ソウルイーターだと確信した。
最悪の状況だった。
ソウルイーター相手に逃げ場のない狭い空間での対峙、まともに剣を触れない点は同じとも見えるが
地力の差が空き過ぎている。
先ほどまで寝ていた荒い麻の繊維でできた、布切れをソウルイーターに目掛けてなげる。
ソウルイーターは麻の布を剥ごうとしているが鎧に引っ掛かり、体を捻らせて抜けようとしている。
その隙をつき、ソウルイーターを横から剣の鞘で殴りつけて逃走した。
後ろから首筋を目掛けて何かが飛んだ。
首から血が出る。
「・・・」
剣が飛んだのだ、黒い剣が首筋目掛けて飛んできていた、首をかすめて壁に刺さっている
後数センチずれていたら、逃げられなかっただろうと思い、冷や汗を流しながら一目散に逃げた。
追ってくる気配は全くなかった。
逃げる際中、アジト内の各所で鉄の混じった匂いが漂う。
血の匂いだ。
周りに気を使いながら、アジトから出ると地獄の光景が広がっていた。
ソウルイーターが周囲の仲間を切り殺している。
周囲に20人以上の惨殺された死体が転がっていた。
奥に見慣れた不機嫌そうな顔の男が、鬼気迫る顔で複数のソウルイーターを切り殺して行く。
少し離れている所で、大男もソウルイーターを殴りで殺していた。
他隊長格の男たちは難なくソウルイーターを処理していく。
この調子なら勝てるだろうとそう思った瞬間だった。
辺りに黒い霧が立ち込める。
「おい!エッジ、なんだこれは」
「知らん!」
大男とエッジが現状を一瞬で確認すると
黒霧の中から一人の人影が見えた。
「賊のくせにやるわねぇ・・・」
女の子だ、15歳程度に見える子が黒い霧の中心から姿を現した。
「誰だてめぇは!」
ジルクが分かりきった質問を牽制のために吠えた。
聞かなくても分かった、この気配と現象は間違いなく13番魔法使いの死神だ。
「わたしは、13番の魔法使い、死神のサティ」
そう名乗った。
「死神様が何の用だ!」
ジルクは吠えるが、サティと名乗った女の子は淡々と答える。
「説明しなくても、分かるでしょ。」
「・・・」
周囲の霧が濃くなり、圧迫した空気が漂った瞬間だった。
呼吸ができなくなった
「ぁ・・・か」
恐怖だ、目の前の存在に恐怖している、恐怖で呼吸を忘れてしまっているのだ。
「フォール!」
そんな叫び声が聞こえた瞬間だった。
目の前にエッジがいて、目を開いたまま死んでいた。
ジルクは咆哮してサティに向かっていく
「 戦気 怨嗟の豪拳 【えんさのごうけん】 」
ジルクの腕を赤い炎の幕が包み、恨みを糧にするかのように、激しく燃え上がる。
サティの足元を殴る。
「これでうっとうしい霧が晴れるか?」
舞った砂埃の中から少女が咳をしながら、出てくる。
「ケホっ・・砂埃で目つぶしかなにかのつもりぃ?」
瞬間、ジルクが動かなくなった。
エッジと同じように目を開けて死んでいる。
化け物だ・・・目の前の少女に見える化け物は。
ジルク盗賊団のトップ2をたやすく殺してしまった。
恐怖で呼吸ができない・・・意識が遠のく寸前空気が変化した。
「おい、死神」
一言で場が支配される。
恐怖で忘れていた呼吸が戻ってき、体は酸素を求めて鼓動している。
呼吸が整い、顔を死神の方に向けると、
荘厳な見た目の服装をした男が宙に浮きながら、死神を睨めつけていた。
「貴様、身の程をわきまえろ、たかがエルアリアの飼い犬の分際でこの4番の魔法使い皇帝のエンハンス・ランロッドに歯向かうなど愚の骨頂ではないか?」
男は確かに言った
4番の魔法使い・・・皇帝と。
一触即発の重圧がかかりながらも、淡々と会話している。
「貴方のような、傲慢な品性の欠片もない愚王が皇帝など笑わせるわねぇ」
さらに空気が重くなるのを感じた。
「余を愚王と称するか・・やはり傀儡に脳は無いのだな。」
緊張の糸が切れた音がした。
物理的に聞こえるものではないが、確かに聞こえた。
同時に魔法使い同士の衝突が繰り広げられる。
おおよその人間が扱える領域ではない戦闘が、まったく理解できないこの世の理不尽が、目の前にあふれた。
周りのソウルイーターがサティに対して攻撃をし始める。
サティの能力で生み出されたであろう、アンデットが主人に歯向かっているのだ。
たぶん、皇帝の魔法の効果だろうと予測ができた。
「死ね愚物」
「貴方こそ死ぬべきねぇ・・愚王」
二人の最大の技が放たれる瞬間だった
「死の円舞曲 【デスワルツ】」
言葉と同時に、黒と緑の魔法陣が出現し、周囲を円状に黒の円弧状の刃が切り裂いていく。
「おっさん立てるか。」
リュートだった・・・
死んでいたはずのリュートが生きていた。
理解が出来なかったが、とにかく頷いた。
「リュートじゃなぁい、貴方生きていたのねぇ」
サティがそう答えた。
「いや、正確には死んでいた」
理解が出来ない、「死んでいた」だと1回命落としたよう聞こえるのだが。
目の前にいる学生服の黒上黒目の青年は、どこからどう見ても生きている。
「リュート・・まさかあれぇ使ったのぉ?」
なんの事が理解が追いつかない。
置いて行かれている俺の事は無視して、3人で会話が進む。
「貴様は、リュートか・・・」
皇帝の魔法使いはそうつぶやく。
戦い事態一度止まったが、依然重苦しい重圧がかかっている。
「おっさん、逃げな。」
いつもならここで逃げていたが、自分にも分らなかった。
何故、立ち上がって剣を魔法使いに向けているのか・・・
その行動を見て口々に言った。
「逃げる唯一の好機を捨て、力量の差が明白の余に剣を向けるなど。愚か者以外の何物でもないではないか。」
「あらぁ・・・愚かねぇ・・」
「無謀だぜおっさん。」
自分でも分かっている、だが許せなかった。
目の前の惨状を。
10年以上も共に過ごした不愛想な男を殺された。
自分に残された感情は、怒りしかなかった。
人生で最大の愚行、無謀で愚かな選択をした。
全身が感情で支配されている。
そこに理性はなかった。
剣を向け走り始める。
「死ねぇえ、魔法使い共」
剣を振った瞬間、音を立てずに腕をつかまれていた。
掴まれた腕は、みるみると変色している。
「どこまで愚かな選択なのだ、見るに堪えん」
怒りで頭に内容が入ってこない。
殺されると確信した時。黒靭が飛んできた。
追撃するように、死神の黒い恐怖の霧が、皇帝を吹っ飛ばした。
だが、遅かった。
皇帝の手から放たれた魔法が俺ではなく、リュートの体を切り裂いた。
リュートは確実に死んだ。
数秒して、身動きが全く取れなくなった。
「おまえぇ・・リュートはいまぁ・・確実にぃ・・・死んだのだけどぉ・・・」
サティの顔を見ると、俺と同じ顔をしていた。
顔は怒りに支配された顔でこちらを睨みつける。
「お前ぇみたいなぁ・・愚か者を助けるためにぃ・・死んだのよぉ・・」
動けない、体が恐怖に支配され全身の筋肉か強張って動かすことができないのだ。
カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ
歯が恐怖で音を立てている。
「お前ぇ、苦しんで死ね」
そんな言葉を聞いた瞬間だった。
森の奥から膨大な魔力の塊が飛んでくる。
黒い霧はその魔力の塊を受け止め霧散させた。
瞬きをした一瞬で、サティの顔目掛けて皇帝が蹴りを放った。
「忌々しいな・・・本気でいくか」
「魔法使いの4番である皇帝が命ずる、空間を支配せよ 皇帝の支配 【エンペラコントロール】 」
その詠唱と共に、周囲の環境が一変する。
暗い闇の森が広がる空間を俺が転移したと間違うほどに一瞬で、荘厳な玉座の間になっていた
皇帝の権力の象徴のように煌びやかで玉座に座っている男の一言で頭を垂れたくなるような空間に変わった。
何処からともなく近衛兵が沸いてき、周囲の死体やソウルイーターや俺の体の支配が、皇帝の魔法によって権限が奪われる。
操られている。
自分の意識と関係なく、目の前の恐怖の霧に突っ込まされる。
霧の中から詠唱が聞こえてくる。
「魔法使いの13番である死神が命ずる、恐怖と死によって目の前を刈り取れ 死神の吐息 【デスブレス】」
周囲を混沌の闇が、包みこむ。
部屋が、この世とは思えない程綺麗に半分に分かれている。
片方は暗黒の恐怖の霧で包まれ。
片方は城の玉座の間のような空間、その様子を見て
魔法使いの一部が理解できた気がした。
魔術が、術理であるのは理論的に説明ができ、なおかつ再現がある程度可能な所にある。
魔法使いの魔法を目の当たりにして、魔法は法であるということだ。
術で理を模倣する魔術に対して。
理を魔力と言う、力で法にする。
このことが魔法であると理解できた。
その法の種類が、22種類あると言った事だろう。
魔法が発動され死神の魔法の領域に足を踏み入れた瞬間だった。
真っ暗な空間になり周囲を闇が飲み込んでいる中で一枚の紙が浮いている。
0番の文字が書かれ the fool と書かれていて。
そのカードの絵には、あっけらかんな男の絵が描かれている。
理解も追いつかない。
動くことしかできない。
流れるがまま、カードを手に取った。
手に取った瞬間だった。
頭の中に、一つの詠唱が浮かんできた
「魔法使いの0番である愚者が命ずる、無知の創造により愚者を解放せよ。 愚者の解放 【フールリリース】」
0番の魔法・・・
今まで才能は無いと思っていた、魔力と気力が無く、武術の才能もない。
何度諦めたかも覚えていない。
才能はあった、才能は気が付かなければ才能では無い。
気づくのが、あまりも遅かった
イブ、家族、エッジ・・・
失ったものが多すぎた。
守るための力も守る人がいなければただの暴力でしかない。
カードが自分の中に入っていく。
数秒後、辺りの暗い空間が一気に変わる
俺から見て左には玉座、右には黒い霧だった。
意識が戻り、浮かんできた詠唱をそのまま唱える。
「魔法使いの0番である愚者が命ずる、無知の創造により愚者を解放せよ。 愚者の解放 【フールリリース】」
周囲が自分の空間になっていくのを感じる。
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【愚者】
それはタロットカードにおいての0番を意味する
愚者はタロットで悪く表現すると
「無謀だ」 「無計画」 「夢を見過ぎ」
などと表現される。
逆に良く表現をすると。
「解放」 「創造」 「無限の可能性」
などと、表現できる。
愚か者は無謀で無計画が故に夢を見過ぎと言われるが。
そこで諦めずに実現できる可能性をあきらめないからこそ、新しいものを創造できる。ゆえに無限の可能性がある。
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」
昔ドイツの宰相をしていた オットー・フォン・ビスマルク の格言である。
愚者は自分で失敗して初めて、失敗に気づく。
賢者は歴史から学び、予め失敗しない様に学ぶ。
なら1番最初に国を建てた人や制度を作った人は賢者だったのだろうか。
それは違う。
誰しも最初に行う事は過去から学べない、だから最初は皆が愚者なのだ。
愚か者は愚かだからこそ無限の可能性がある。
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周囲の空間が何もない白い空間へと変わった。
そこには、イブ・家族・エッジなどが
無言で佇んでいる。
何度聞いたかわからない程聞いた、毎晩の悩まされる声はない。
全員が笑顔を浮かべて、一言も発さないが力になってくれている。
瞬間自分の中に魔力が循環していることに気づいた。
今まで手に入れたくてもできないものだった。
フォールは愚か者だった、愚かだからこそ夢を見て諦めたふりをして、常に魔術が使える想像をしていた。
想像のまま詠唱を始める。
「 慈悲なる水の盾よ我が前の脅威から、守りたまえ 水壁 【アクアウォール】 」
自分の手の前に水色の魔法陣が出現し、水の壁を形成した。
それを見て、母がほほ笑んだ気がした。
初めての魔法に興奮しそうになったが、周囲の空気の重圧がさらに強まった。
「貴様・・まさか0番の魔法使いだとはな・・・」
「厄介ねぇ・・皇帝手を組みましょう」
「あぁ」
2人が協力して魔法が発動される。
瞬間先ほどまで白と黄金が貴重だった玉座の間と、混沌とした霧が合わさり
黒と紫と黄金を基調とした、魔王城のような空間に変わった。
変わった瞬間、莫大な魔力で漂う黒い霧が剣の形をして向かってくる。
イブが全ての剣を魔術で撃ち落とした。
その隙を黒い霧に包まれて操られた盗賊の死体とソウルイーターがイブを襲う。
が・・父のケンが槍術と炎魔術で対抗している。
エッジの死体も黒い霧で操られていて、攻撃しようとしてくるが。
愚者の魔法で出現したエッジが、死体のエッジと交戦する。
その様子を見て死神と皇帝が魔術を使って攻撃してきたが
先ほど発動した水壁によって相手の魔術が搔き消される。
また膠着状態になったが、すかさず魔術を放つ。
「 復讐の炎よ怨嗟の槍となりて、我が敵を貫け 炎の槍 【ファイアージャベリン】 」
復讐を果たさんとする炎の槍が、皇帝を打ち抜いた。
「くっ・・流石0番の魔法使いだな・・」
「あらぁもう倒れたのかしらぁ?」
膝をついた皇帝に、サティが答える。
「余を愚弄するな、死神・・・」
皇帝は、全魔力を注ぎ奥義ともいえる魔法を放つ。
「魔法使いの4番である皇帝が命ずる、余の前の敵を裁きの元滅せよ 皇帝の裁き 【エンペラージャッジメント】 」
そう詠唱した後。
皇帝の玉座から黄金の鎖が飛び出し、敵に絡みつき蹂躙していく。
愚者の魔法によって出てきたイブたちは、皇帝の魔法によって消滅した。
消滅したのを見計らって、サティが追撃の一撃の詠唱を始める。
「魔法使いの13番である死神が命ずる、恐怖の刃を持って我が前の敵を切り裂け、 死の斬撃 【デスカット】 」
詠唱した瞬間、周囲の黒い霧が、弧を描いた刃となって、周囲を切り裂く。
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【死神】
タロットカードにおいて死神とは
鎧を着た骸骨が馬に乗っている、絵を書かれた13番のカードである。
死神を悪く表現すると、
「変化に対する恐れ」「思いきれない」
良く表現すると
「区切り」 「白黒はっきりする」
と言った事が当てはまる。
死神は、変化に対する恐れから思いきれない。
だからこそ区切りをつけ白黒はっきりさせることで。
前に大きく飛躍できる。
死神と聞けば、基本的に悪いイメージを抱くだろうが。
死ぬということは区切りである、とも捉える事ができる。
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死神の放った黒い刃が通り過ぎた後は魔法が切り裂かれ、現実世界となっている。
死神は止めを刺すために奥義の詠唱を始めた。
「13番の魔法使いである死神が命ずる、恐怖の黒の霧を持って我が前の敵に死を 死神の抱擁 【デスカドゥル】 」
周囲の霧がサティに集まり、死神の化身になる。
動くたび周囲が取り込まれ死体すら残らない。
俺も魔術で応戦するが、虚しく消えていく。
「死ぬのか・・・」
呟いた。
才能が見つかったのに・・・もっと早く才能が見つかっていれば・・・
どうしようもない考えが頭に浮かんだ。
頭の中でイブの掠れた声で聞こえてきた。
「生きて」
無理だ。
確実に死ぬ。
その瞬間死神が、送り出す死者を愛する用に抱擁してきた。
直後、俺は死んだ。
今回で最後ではないですよ?
次の話から本編です!
書いていて中々言葉に困りますが、もしよければ色々と考察してみてください。