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転生愚者  作者: みむやむ
1章:愚かな人生
3/9

3.転機

物語って難しいですよね、5辺りから本編なのでそのつもりでよろしくお願いします。


過去に美術の偉人が言った。


「大いなる苦悩なくしては、如何なる完成も才能もあり得ない」


今となっては胸に刺さるような言葉、初めてこの格言を見たときは気にならなかった。


思えば異世界に転生して、少し努力だけでなんの苦悩もせずに転生者だから才能があると思っていた。


だが今の自分は、何もできずに異世界で31歳になった。


前世の年齢をはるかに超えている。


何か仕事をしているわけでもなく、盗賊の下っ端だ・・・


アニメとかライトノベルなら、間違いなく主人公に真っ先にやられるタイプの人間だ。


もう何もかもが手遅れだった、今日も呪いのように声が聞こえる。


俺をこの世に縛り付ける唯一の呪いの言葉だった。


「生きて」


家族を見殺しにした。


自分の好きだったイブも実質殺したようなものだった。


脳裏に尊厳を踏みにじり続けられ届かぬ声をあげて叫び続ける、イブが映る


「何故・・・貴族の不興を買ったの・・・」


「何故盗賊なんぞになった!」


「お兄ちゃん・・・」


本人が言っていたわけでは無いが、脳裏に響く声。


毎晩のように、まるで盗賊になった自分を責めるように。


毎日響く呪いの声が止み、今日の見張りの仕事を継続した。


見張りをしていると後ろから、眉間にしわを寄せて小難しそうな顔をした、フォールと同じくらいの年と思える、


男が見た目に似合わぬ陽気な声色で話しかけてくる。


「よぅ・・・疲れてそうだなフォール、呑むか?」


男は冷えたジョッキをフォールの頬にあてた


冷たい・・・


外気の暑さで結露した水が頬についた、俺はジョッキを受け取り、頬についた水を拭った


「あぁ、頂くことにするよ、エッジ」


エッジは良い仲間だった、盗賊ではあるが気の良い奴だしあまり犯罪もしない。


実力があるのに犯罪をしないのは盗賊としてはどうかと思う。


が・・実力は折り紙付きだ。


「またあの声か。」


エッジは知っていた。


呪いに侵されている、俺の精神と


呪いが俺の生きる一つだけの理由と言う事も。


知っているからこそ、さっきの陽気な声と違い辛気臭そうな声色で言った。


本人は自覚していないようだが他から見ても一目で辛気臭いと分かる光景だだった。


あまりに辛気臭すぎて、俺は少し笑ってしまった。


「なんだ・・」


笑った俺を見て少し不機嫌そうになったエッジは言った。


「すまないな、いつも陽気で周りのことなんか気にしそうにないお前が、下っ端の俺みたいな奴の事を自分のことのように言っているから、おかしくてな」


「気のせいだ」


キッパリと言った、と本人は思ってそうだが10年以上一緒にいる俺には分かる。


ちょっと気にしているときのエッジだ。


そんなことを思っていると、エッジは言葉を続けた


「そろそろ始まるらしい。」


「始まる?」


そう聞くと、ムッとした顔で・・・いやムッとしているわけじゃないだろうこれがエッジの正常なのだ


「隣国のエルアリア公国が、ランロッド帝国に進行するらしい」


「いよいよ・・・か・・」


この世界の盗賊は基本的に大きな戦争があった際、横から火事場泥棒をしていくことが当たり前だ、エッジも俺も


基本的には犯罪を好んではしないが、戦争となると別だ。


規模が大きい盗賊ほど、戦争に介入する事が大きい収入になり儲かるのだ。


今回、エルアリア公国かランロッド帝国どちらでも良いが貴族王族の馬車を襲ってどちらかの国と手を組んで


一儲けしようとしているらしい。


エッジが教えてくれた。


何故俺に教えてくれたのかは定かではないが、友情なのだろう。


「どちらも襲い、成功した方の国から身代金を要求する算段だってよ」


下手を打てば両国から討伐依頼が出されるような真似だった。


危険極まりない行為だと下っ端でも分かったがその分見返りも大きいし簡単に討伐できるような盗賊団でもない。


「それ言ってよかったのか?」


エッジは依然何かに不機嫌そうな顔で、笑顔で答えた


「お前だからだ・・・」


笑顔をしているが、笑顔が出来ていなさ過ぎて、猟奇的連続殺人鬼みたいな顔になっているが


エッジなりに頑張っているのだろう。


エッジは最後の言葉を発した後、ジョッキの中のエールを飲み干して、アジトに戻っていった。


エッジに礼を言い、ジョッキの外気でぬるくなったエールをそのまま飲み干した。


朝になり、見張りの交代の時間になった。


一晩中見張りをするのは疲れるが、日中より夜は涼しいのでその面では楽だ。


どういった気象なのかは、わからないがこの世界にも四季はあるらしい、今は日本で言う所の夏だな。


四季の間隔に関してはその年の、魔力濃度によって決まるとのことだが・・・


そもそも、魔力にそこまで精通していないから分からないし魔力もないしな。


などと考え下っ端用の就寝所で横になった。


すると盗賊団の集合の号令が鳴った、見張りの疲れで一刻も早く寝たかったが盗賊団の集合は絶対だ。


重たい体を起こして集合所に向かった。


集合所では90人近い人数が集まっていた。


集会所で聞かされた話は昨日エッジから話された内容が軽く聞かされた程度だった。


今回の戦争は莫大なお金が動くらしく、かなりハイリスクだが盗賊団全勢力を上げて


貴族か王族の拉致と、火事場泥棒をするらしい。


その中でも俺はエッジ率いる貴族と王族誘拐の隊に配属された。


そんな明らかに重要な位置に下っ端の俺が配属される理由なんて一つしかない。


どうせエッジだろう、俺はこの世界ではお世辞にも強いとは言えない。


一般人の方が少しの才さえあれば俺に勝てるレベルだ。


だがことあるごとにエッジは俺を自分の隊に入れたがる、正直嬉しいといった感情もあるが、申しわけない。


そんなことを思っていると、首領と話し終えたエッジが前から不機嫌そうな顔で近づいてきた


「今回は絶対来てもらうからな、お前がいるといないとじゃ俺の士気に関わる」


毎回同じ事を言って誘ってくる。


「あんまり、期待すんなよお前もよくご存じの通り魔力も気力もなしだからな」


そう、俺には魔力も気力も使えない、期待していた魔術は使えなかった


この世界特有の戦気も使えなかった。


武器の扱いもそこまでうまくはなかった、そこそこ使える程度だった。


だがエッジは見捨てないでくれていた。


エッジはいつも通りの猟奇的な不器用な笑みを浮かべて言った


「気にすんな」


そういって準備を始めた。


俺も準備を整えて、出立場所に集合した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「盗賊の奇襲ー!」


騎士の男が叫んだ。


「各員戦闘態勢」


周囲に声が響き渡る。


エッジは俺に状況を説明している、騎士数名と雑兵が数名あと魔術師が二人だ。


貴族の物にしては豪華すぎる馬車を囲っているが


その馬車はすでに馬の頭に矢が刺さった状態で倒れている。


戦闘が、魔術の展開と同時に開始した。


俺は騎士にも魔術師にも背伸びしても勝てないので雑兵と組みあっている、にらみ合いになる中、周りの仲間は続々と騎士と兵士を倒していく


打ち負けたふりをして、砂を握り襲い掛かってきた雑兵の目に投げつけた。


兵士は、目が見えなくなったが記憶をたどりに剣を振り下ろしてくる。


「死ねぇ!賊め」


剣で受け止めるのは不可能なので横に転がって間一髪よけることができた。


兵士は自分の位置を見失っている為、感覚に集中している。


俺は好機と思い切りかかった、だがキンと音を立てて俺の剣が弾かれた。


その隙をついて仲間の盗賊が後ろから兵士を串刺しにした。


兵士の体から立つための力が無くなって倒れてきた。


覆いかぶさった兵士の体をどけて、血を浴びた胸部をさわり、手のひらを眺めながら呟いた


「この程度か・・・」


立ち上がって他を援護しに行く、そのあと兵士をやっとの思いで3人ほど殺した。


満身創痍になりながら周りを見るとほとんどの騎士と兵士は地面に横たわっていた。


こちらの被害は少なかった、理由は明白だった。


エッジだ・・・


戦闘の才能があるだけでなく努力と気質、頭の良さ、何故エッジは盗賊なんかしているかわからない人間だった。


そんなことを考えていると馬車の扉が乱暴に開かれた。


「死靭」


その言葉が聞こえ、馬車の入り口から出た手に緑と黒の魔法陣が現れた瞬間だった。


魔法陣から飛び出した弧を描いた黒刃によって目の前にいた仲間の首が音を立てる間もなく体と切り離された。


仲間の首から、血しぶきが噴き出し周囲に飛び散った。


「フォール!」


横から衝撃が来た、俺は衝撃に耐えられず倒れこんだ、何が起こっているか理解が数秒遅れた。


気づいた時には倒れた俺とエッジの二人以外は傷口が黒く浸食されて首と体が分かれている死体になって、周りに無数に倒れこんでいた。


「何が起こった・・・」


エッジが呟いた。


「やっぱ異世界はチートだな」


聞きなれた言葉が聞こえた、何度も自分の中で呟いた一言、異世界。


降りてきた青年は見慣れた学生服を着ていた。


「日本人・・・」


確信があった、この世界には黒髪黒目の人間は混人族しか存在しないが混人族は、必ず一目で見分けがつく


角や蝙蝠のような羽、黒い体毛が全身や一部を覆っていたり、鋭利な爪など、様々な種族の特徴があるが


目の前の青年は、他種族の特徴は全くない。


アジア人の顔をした青年だった。


俺の日本人と言った事を聞きこちらを見て嬉々とした顔で話しかけてくる。


「あんた同郷か・・・?」


同郷・・・その一言に引っかかりを覚えた。


先程の魔法を見て、こいつはチートを持っているのか・・と思ってしまったからだ。


何故俺には無いのか。


もう諦めた思いが胸に沸いたがすぐ収まった。


「そうだ。」


そう答えた。


するとその青年の後ろの馬車から、凄い声量で聞こえてきた


「盗賊の話に耳を貸す必要などありませんわ、リューマ様」


そのまま出てきた、いかにも世の中を知らなそうな宝石のような女性が出てきた。


女性はこちらを睨みつけながら話を続ける。


「そのものは、灰色の髪の毛なので、レイフォン人かフール人でしょう、異世界の人間である可能性はないかと思います。」


当たり前の事だった。


この世界では生まれた場所によって髪色が綺麗に分かれている。


純粋な種族であれば、生まれた地の魔力が髪色に影響するといった原理だ。


ちなみに混族に関しては純粋な種族の枠組みに、当てはまらなく混種にあたるので遺伝子情報が優先される。


「レイフォン人だが、転移者ではなく転生者だからだな」


その一言で日本人と信じてもらうには十分だった。


「なるほどな・・やっぱり転生のパターンもあるんだな」


リョーマと呼ばれている青年は少し考えながら答えた。


「いつこっちの世界に来たんですか?」


言いたくなかった。


こっちの世界に来て31年過ぎているのに、やっていることと言えば盗賊の下っ端だった。


誇れるものでもない、こっちに来て間もないだろう青年に自分は能力的に負けているのだ。


言葉が出なかった。


俺のバツの悪そうな顔を見て青年は、話を変えた。


「何故盗賊をしているんですか?」


「貴方の転生した時の能力は?」


矢継ぎ早に質問が飛んできた所でまた女性が大声で叫んだ


「賊のことなど、聞く必要がありません、大した人生でも無く他人に害を与えることでしか生きていくことのできない人間です。」


「おまっ・・・」


俺が叫ぼうとした瞬間だった


「お前は、生まれてから何も失っていないからそう言える、生まれてから苦労もそんなにしていないような奴に俺たちのことなど分かるはずがない」


淡々と冷静にエッジは答えた、いつもの陽気で不器用な男はそこにはいない、俺と同じようなバツの悪そうな顔でそう答えている。


その顔は、悪鬼のごとく、とんでもない顔であるのは彼が不器用なだけだった。


「たとえどのような理由があろうと、他人に害を与える人間に成り下がるくらいなら死んだ方がましです」


不機嫌そうな顔でお嬢様は答えた。


「賊とは言え、同郷は殺したくねぇなぁ」


先ほどまでのやり取りを聞いていない様にあっけらかんとリョーマは答えた。


答えてすぐ、リョーマの手元から緑と黒の魔法陣が出現して魔法を放とうとした所で発動が止まった。


「どうした?」


その疑問の答えはすぐ後ろに来ていた、問いを口にして5秒程してリョーマの体が横に吹っ飛んだ。


「ッチ、仕留め損ねたか」


そういってこちらを見た混種の大男は続けた。


「エッジ、お前じゃあいつは厳しいな、援護に回れ」


苦虫を噛んだような顔でエッジは答えた


「あぁ」


大男はジルク盗賊団首領 ジルク・エーガン だった


俺の事は気にも留めず、エッジと追撃に行った。


その数秒後リョーマの吹っ飛んだ方向から爆音が響き衝撃派が飛んできた。


「当たり前か・・・たかが下っ端だもんなぁ」


そういって、ジルクの後をついてきた仲間と世間知らずなお嬢様を捕まえてアジトに連れ去った。


道中であまりにもうるさかったので先の発言の意趣返しと言わんばかりに数発殴ると黙った。


お父様・・・とかなんで私がとかぶつくさ言っているが気にせずアジトに帰った。


帰ってお嬢様を牢屋に監禁して。数時間後が過ぎ、ジルクとエッジが一つの死体を持ち帰ってきて集会所の奥にいった


少ししか見えなかったが、リョーマだと確信した。


同じ異世界から来た人間が死んだというのに、何も感じなかった。


なによりチートのある人間が死んだことで、嬉しかった。


能力のない人間、才能のない人間の嫉妬がそう思わせた。


それから数日が過ぎた。


身代金の要求は成功した、連日バカ騒ぎする盗賊団に少し気持ちの悪い感覚を覚え、外にいった


すると聞きなれた陽気な声で不器用な男が話しかけてきた。


「疲れたか?」


特に様子は変わらなかった。


当たり前だった、人を殺すといった行為に関しては日常茶飯事で、相手が強いことなどよくある事だった


「エッジもな」


その一言が出た。


実際そうだった、正直俺は労われるほどに働いている実感はなかったし、事実働きとしては数人兵士を殺した程度だった、


一人でなく複数人で。


その事を考えていると、エッジが答えた。


「本当に疲れた・・・しかも次はいつも通り、戦争での火事場泥棒だぞ」


次は、エルアリア公国で戦争に乗じて奴隷として売るために女を回収するのと、金目の金品を強盗する予定だ。


「そろそろ始まるよなぁ」


「あぁ」


そんな下らない次の予定を話していると後ろから盛り上がりが聞こえてきた。


夜を狂気に満ちたような叫びで包んでいく。


エッジは俺に何か言いたげだったが、立場ある人間なので戻るように促すと不満気だが了承して戻っていった


不満気なエッジを戻すと、いつもの呪詛にまみれた声が聞こえてくる。


「何故・・・私の事を助けてくれないの・・・」


そんな声が聞こえ終わったのは深夜も過ぎ、会場も静かになったころだった。


就寝所に向いひと眠りについた。


そこから1か月が過ぎた、俺はいま村に向かって歩を進めている。


戦争に紛れて盗賊するために、何処かから入手したエルアリア公国の緑が主に使われた新品の鎧に身を包んでいる。


新品の鎧ということは、ランロッド帝国と手を結んだと言うことだろう。


エルアリア公国の村をエルアリアの兵士に扮した盗賊が襲うと、内戦を誘発出来たり、民に動揺が生まれる


それを狙っての事だろう。


盗賊団は金を手に入れやすくなり、ランロッド帝国は戦争に勝ちやすくなる。


エルアリア以外にはお互いに損のない関係と言えるだろう。


ランロッド帝国にうまく取り入れたのは、


リョーマと対峙した際に、捕虜とした娘が後々王族だと確定し、エルアリアから身代金をかなりの大金で吹っ掛けて国力を下げたのが


ランロッド帝国の印象を良くしたのだろう。


王族の女は引き渡される際には、抜け殻のように精神が崩壊しているように思えた、たとえ命があってもあれでは


長くないだろうと容易に思える状況で引き渡された。


気の毒だが仕方のないことだろう。


誘拐した張本人なので、その程度にしか思わなかった。


そんな事を考えていると、襲撃先の村についた。


村人は俺たちを見つけると、歓喜に包まれた。


「救援がきたぞ!」


「これで救われる!」


喜びの混ざった声で、包まれる。


「決行は夜だな・・」


部隊長格の男がそう言った。


各々がそれに頷き、村人に案内されるまま村の寝所へと入っていった。


部隊長は2人程連れて、村長へ挨拶にいった。


俺は、夜襲のために村の戦力を村人に聞き情報を集めた。


「村の中で、戦える戦力を教えてほしい。我々救援部隊の身では少々厳しい戦いになるかもしれない」


そう聞くと全員が簡単に教えてくれた。


服装でその人の信頼が買えると言うのは本当の事らしい


村人に聞いた戦力は複数人が同じ事を言っていたので簡単に正確な情報が集まった。


・戦兵 5名 ・魔術士 1名 ・村騎士 1名


騎士と魔術士がいるが、騎士の程度は村騎士なので国の抱える国家騎士や、領主仕える領地騎士、失地騎士


などとは格がかなり下がるため脅威では無い。


騎士にも様々な種類があるが


国家騎士がこの世界では1番格の高い騎士である、2番目に格が高いのは失地騎士で3番目が領地騎士最後に村騎士である


選任には細かく規定があるが俺は知らない。


魔術士にしても2属性は使えるが、混合魔術を使えないので脅威ではない。


この世界の魔術師の程度は、混合魔術に何種類の属性を混合できるかで決まる。


例えば水の単体最上級魔術 水聖の咆哮【アクアロア】 は水の最上級とついているが


水と炎の混合最下級魔術の 蒸爆【スチームボム】 に勝てない。


魔術の混合最大数は6大魔術属性の 水 炎 風 土 死 生 の6属性であり


たとえ6属性の魔術をすべて最上位まで扱えても、混合魔術が1つも使えないようでは1人前とはならないのがこの世界の魔術である。


魔術には


最下級 下級 中級 上級 最上級 神聖級 の6階級があるが、神聖級に関しては文献が残っているだけで扱える人物は俺の知る限りじゃいない。


俺の知る限り、なので国単位で見たら普通にいるのだろうが。


基本的に魔術は属性相性を無視した場合、階級が上がればより強くなるのが常識だ・・・


がその中にも例外がある、個人が生み出した魔術である。


個人が生み出した魔術は固有魔術と言われ、固有魔術には階級が存在しない。


固有魔術は魔術によって違いがありすぎるため階級を付けることが極めて困難であるためだ。


国を1国まるまる消せる固有魔術や、生活するのにしか使えないような魔術まで多岐に渡るため基準が存在しない


固有魔術の定義は、その人にしか使えない魔術であるといった定義で例え6大魔術属性の派生形だとしてもその人にしか扱えない魔術は固有魔術となる。


魔術の派生形に関しては、固有魔術と違い万人が習得可能である。


回復魔法は生属性の派生形だしエンチャントなんかも生属性の派生形だ。


この世界の魔術の枠組みはかなり広く複雑になり易いが、今回の魔術士は単体2属性なので脅威になりえないということだ。


村の戦力の情報を伝達して、俺は戦闘準備に取り掛かった。


夜になり盗賊団員が闇夜に乗じて動き始める。


全員の準備が整ったところで、こちらの魔術士から炎の魔術で火を放つ。


「燃え上がる復讐の火よ汝の敵を怨嗟の火で燃やせ」


「 炎雨【フレイムレイン】 」


そう発すると、手元に赤い魔法陣がでて広範囲に炎の雨が降り注ぐ。


周囲に火をつけることを目的とした、残酷な魔法は夜を明るく灯した。


「敵襲ー!」


村の男が叫ぶ、ぞろぞろと村人が老若男女関係なく火の着いた家屋から阿鼻叫喚の悲鳴を上げて出てくる。


よく見る光景が目に入った。


村人が困惑する中、1人の女の魔術士が魔法を放つ


「慈愛の心を持って我が前の敵を神の涙で流したまえ」


「 慈悲雨 【マーシーレイン】 」


魔術師の手元に青い魔法陣が光り、周囲に冷たい雨が降る。


手から放たれた慈悲の雨が優しさで包み込むように、周囲の怨嗟の火をかき消していく。


1度目の炎雨は、家屋が乾いていたため火が付いたが、雨の後は火が付きにくくなり続けて放たれた炎雨はむなしく消えていった。


雨が降る中、一人の騎士が飛び出した。


「 戦気 慈愛の盾 【マーシーシールド】 」


騎士の周囲を青い膜が覆う。


戦気を発動された、戦気は気力を消費して使える、武術においての魔術で、気力は魔力のようなもので生まれつきその総量はきまっているが、


魔力も気力も鍛えることは可能だ、だが器の総量はきまっている。


要は生まれつきの魔力総量が皿だとしたら、使える魔力はスープで。魔力であるスープの量は訓練で増やせるが、器である皿は大きくできないと言った具合だ。


ちなみに、俺は気力と魔力の器が0だ。


器がないのにどうやってスープを注ぐのか。


勿論そんなことはできない。


なので俺は魔術も、戦気も使用することができない。


村の騎士は仲間の雑兵をいとも簡単に殺していくが1人ではすぐに、限界が来た、村騎士1人に対して8人がかりで対峙しているのだから持った方だろう。


盗賊の槍が首に刺さり、騎士は赤い血を首元から流し膝をついて絶命した。


騎士は村にとって、心の支えだった、騎士がいるからと奮闘していた村人たちは支えが無くなり崩壊した。


崩壊してからは楽だった、村人にとって数少ない頼みの女魔術士は魔力が尽き、盗賊に捕縛された。


女魔術師が捕縛され、村人は投降した。


投降した後は後処理だった、村の女子供は奴隷として売るために命だけ生かされ、捕縛された


男達はこの世界では高く売れないため採算が合わないと判断され殺された。


今回も俺は役立たずと言える戦果だった。


リョーマのようなチートと言える能力があれば・・・


無いものねだりをしていても仕方の無いこと


そう自分に言い聞かせた。


その後も同じ手段で数々の村を襲い、奴隷を集めて売るを繰り返していた。


戦争が激化し本格的に火事場泥棒が始まった。


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