2. 逆位置
小説書きなれていないので、色々と変換ミスしてたり抜けてたりするかも、、あれば教えてください
夢から覚める。
自分が転生してきてすぐの、まだ憧れを持っていた頃の。
”転生者だから才能があるはず”
何度その言葉が心に響くだろう、正直最初は努力で何とかなると思っていた
だが、才能がなかった・・・
「才能が・・・才能・・・・が」
人には聞えぬ声で、一人つぶやいた
何でもよかった、魔術もある剣もある世界で俺は・・・何も才能がなかった
この世界の言語を3歳の時やっとのこと習得し、
そこから数年程、父ケンに剣術や槍術、炎の魔術
母サンから水魔術、回復魔術、仕事や世情での生き方を教えてもらった
だが・・・そのすべてに・・・
”才能がなかった”
勿論一般的に頑張っていると言われる程度には努力した、前世の知識を生かして工夫もした
だがその全てが無駄だった。
14歳になり冒険者になると言った、両親に無謀だと反対されていたが、自分の中で
転生者だから・・と心の中で言い訳をして
両親に対して反抗したが、才能がない息子を冒険者にするのを許可すると死ぬと分か
りきっていた父と母は猛反対した。
「自分の実力も分からない、俺が教えた剣や槍、母さんの魔術、何一つまともに使え
ないお前が冒険者になるだと、それは夢を見過ぎた愚か者だ!」
正論だった、自分に実力はない、だが炎や水、回復には適性がなくても他にはあるか
もしれない、剣と槍以外なら才能があるかもしれない、
だって。
【転生者だから】
反対される理由はわかるが認めたくなかった。
「お前はまだ14歳だ、何もできない年齢で無謀な冒険をするな。」
認めない・・・才能があるはずだ・・
「お前は冒険者には、今後もなれない」
聞きたくない言葉だった、転生してまで否定されるのか・・・
許せなかった。
他愛もない一言、だが本人には重くのしかかった、頭に血が上る感覚、自分を制する
ことができなかった。
その日初めて父を殴り、絶縁した。
母の悲しい目を見て、怒りで向かってくる父に殴られて、すぐそばで泣いている
妹を見て。
家を飛び出した。
冒険者になって1か月がたった
父を殴った、妹を泣かせた、母を泣かせた。
その事実に胸を押しつぶされそうになっていた時、3歳くらいに出会いそこそ
こ付き合いのあった
幼馴染・・いや馴染みと言っていいのか分からないが、幼馴染である、イブが来た
最初イブは自分を村に連れ戻す気だったらしい、癪だった、イブには
「無謀だ」 「無計画」 「夢を見過ぎ」
と言われ腹が立ち、感情のままに怒鳴った。
そこから先、何を言ったかも覚えていない。怒りでどうしようもなかった
去り際のイブの背中を見て、何故か自分はしてはいけないことをした気になってしまった
だがその後もずっと毎日、毎日、付きまとって「戻ろう」と言い続けてくれた
そこで・・戻るべきだった、何故意地を通したのか、自分を見れなかったのか、今でも・・・わからない
イブは何故か、ずっと一緒に冒険をしていた最初は俺にとって、邪魔者でしかなかった。
意図して無視していた・・のに・・・助けてくれた。
イブも分かっていたはずだ、意図して無視されていると。
だがイブは俺に吹っ掛けられた冤罪の身代わりに捕まった。
原因はとある貴族の不興を俺が買ったからだ、貴族がいると知らず目の前で悪口を言った、後先考えていなかった
「俺が原因で」
この事実でどうかなりそうだった、その時初めて自分がイブに好意があると気付い」
た、、遅かった
その夜、イブが捕まった貴族の屋敷に乗り込んだ、だが才能がない自分には何もでき
なかった、あっけなく捕まった
転生者だからと、思いあがっていた、俺ならできると、主人公だからと
目の前に高貴な衣装に身を包んだ小太りな中年が下卑た笑いを浮かべながら、目の前
でイブを痛めつけた
「嫌だ!助けて、父上・・母上」
イブの叫ぶ声が耳に刺さる
もう・・・やめてくれ・・なぜ転生してまでこんな思いをしないといけない!
その日神を呪った。
目の前で、行われる所業、意趣返しだと言わんばかりの下卑た笑い、イブの叫び声
殺された、最後の最後に目の前で殺された、散々イブの尊厳を踏みにじって。
イブが死の間際に言った、叫び続けたせいで、掠れ切った潰れ切った声で喉で
「生きて」
呪いだった、心の枷となった、俺は最後のイブとの約束のために
声が涸れ擦れるまで叫び助けを願った、自分のため復讐のためプライドを捨てた
俺は助かった、助かってしまった。
神に憎悪した、自分に憎悪した、冤罪を罪とした民衆を呪った、陥れた貴族を呪っ
た、そいつらを野放しにしていた国を呪った
遅かった、イブはいなくなった。
その後、16歳で盗賊になった、才能がない俺にはこの道しか、国や民、貴族に復讐
する方法はなかった
いくつも村を襲った、行きがけに目に留まった女を襲った、金を奪った、豪遊した
何かを吐き出す用に、助けを求めるように犯罪をした
でも満たされなかった。
そんな生活を続けていた時、俺の育った町ハルトレイを襲う事になった。
かなり大きな町だが、戦争に乗じて一緒に落とす作戦だと言っていた。
いまさら悔いもない、首領に従って攻め入った、盗賊になって何度も見た光景が広がる。
阿鼻叫喚助けを願う人々、それを無視した蛮行
俺はなにも楽しくなかった、楽しそうに襲っている仲間がいる、それに対してなんとも思わなかった
だが、目に入った光景で意識は現実に引き戻される
目の前に見たことのある人がいた。
俺の師であり喧嘩別れした父が。
・・・母と妹を守っていた
「二人とも老けたな、、、」
ふと言葉がでた、すがるような、助けを求めるような声でる
そして。
目が会った。
目が会ってしまった。
目が会った父は歓喜した希望の目から一瞬で悲しそうな目に変わった。
そのすきを突かれて父は刺された、俺の仲間の盗賊に。
母と妹は父の亡骸にすがり泣いていた、腕を引っ張られながら泣いていた
あまりの抵抗に、邪魔だと思ったのか、その場で仲間が二人を切り捨てた
床に伏せる妹の近くに行った、ふと聞こえてしまった
掠れる声で、掠れる意識の中で最後に言った一言
逃げたくなった、何故こんなことをしているのか、助けなかったのか、また助けられ
なかった。
「お兄ちゃんどこに行ったの・・」
最後に放った一言、両親でも友でもなく、盗賊をしてこの町を襲っている、自分を探す一言。
妹はまだ、俺を探していた。
変わり果てた俺を認識できていなかった。
冷たくなった死体。
何度も見た死体。
その前で。
吐いた。
逃げた。
逃げて、逃げて、逃げて、逃げて、逃げて、泥で足を滑らせ、逃げて、逃げて、逃げた
前回と違い今回は神のせいじゃない・・悪辣な貴族でもない・・・自分だった
あそこでうまくやれば助けられたはずだった命
父や母から非難があったかもしれない、妹に呆れられたかもしれない
・・・でも、助けられたはずだった
こんな時でも、才能があれば・・・そう思った
流れ着いた先が今いる盗賊団だ、彼女の生きての一言だけが俺の生きる唯一の希望で
あり呪縛だった。
ある夜、一人で見張り番をしていた盗賊は呟いた
「どこで間違えたんだろうな。」
自分を責めるかのように
自分に呆れるように
盗賊は呟いた。
盗賊の終わることない夜は続く。