勇者パーティーは3つ 〈キルファラ〉
白の壁、赤色の絨毯。黄金に輝くシャンデリアの下で、俺たちは王様に魔王討伐の誓いを述べていた。
「勇者 キルファラ マキリス フェルノ。そしてその仲間たち。お前たちが魔王を討伐して、この世に平和をもたらすことを願っておる」
王様がそう言った。
今この国の三分の一が魔王軍の配下にある。魔王がこの国に君臨して早数十年。魔王討伐のため旅立っていく勇者パーティーはたくさんいたが、いずれも帰ってきたことはない。そんな中、王様が1つの案を作った。
〈勇者パーティーを3つ集めて1つのパーティーにして、魔王討伐に向かわせる〉
王様はパーティーに勇者が1人しかいないことが問題と考えたみたいだ。また、多くのパーティーが同時に動くことで、効率的に魔王を倒しに行けると踏んだそうだ。
その案の勇者パーティーの1つが俺のパーティーであった。正直このやり方が素晴らしいかどうかはわからない。しかし、人数が多すぎるのはよくないとは思ったが、そんなこと口が裂けても言えることではなかった。
誓いが終わり、俺たちは、城の大部屋に案内された。
「ねぇ。これから私たち、仲間になるんだし、自己紹介とかしない?」
この気まずい空気遮るようにレモが声を上げた。
「私はレモ。キルファラのパーティーの魔法使い。魔法は氷と風が得意。これからよろしくね」
レモが先陣を切った。それに続けて各々自己紹介を始める。
「キャシーと申し上げます。キルファラのパーティーで賢者をしております。これからよろしくお願いいたします。」
「ドウドウだ。剣術を心得ている。これからよろしく。」
ドウドウは俺のパーティーの戦士だ。
「勇者キルファラだ。これからよろしく頼む。」
「マキリスです。勇者です。最善を尽くします。」
女の勇者か……、珍しいなと思いつつ、その横に座っている男を見た。
「メイライだ。これで終わり。」
不愛想な奴だなと思った。レイピアのようなものを持っている。戦士なのか?
「ノエルですわ。東堂家出身ですの。ノエルの特技はバフ魔法ですの。これからよろしくですわ。」
ノエルの紹介が終わると、
「おい。なんで東堂のお嬢様がこんなところにいるんだ。というか、キャシーとかいうやつも西門の人間なんかじゃねえのか?」
大柄な男が声を上げた。確かに、こんな幼いお嬢様が魔王討伐に行くだなんて、東堂に人間は止めなかったのだろうか。
すると、となりに座っていた、黒髪のポニーテールの少女が口を開けた。
「お嬢は、魔王を倒すという強い志をもった、マキリス様達をサポートしたいという強い思いから、パーティーに加わっております。現にお嬢は素晴らしい力があります。あぁ、申し遅れました。僕はお嬢のメイドのQと申します。」Qが言い終わると
「まぁまぁ。彼女の意思でここまで来てるんだし、いいじゃないか。ごめんね、僕の仲間が。僕の名前はフェルノ。勇者さ。そしてそこの男がジオレン。北関所雪の雨所に勤めていた騎士さ。」
フェルノがさっきの大柄な男を指さして言った。その穏やかな雰囲気に流れるようにして、白髪の少年が自己紹介を始めた。
「俺はビター。シーフをやってます。お願いします。」
「アタシ達も自己紹介するね~」
と緑髪の少女がこちらに顔を向けてきた。
「アタシはアルーシャ。武道家です。そして、この子はファミェン。ミェンちゃん、動物と会話することができるの。魔獣ともね。」
そう言いながらアルーシャは彼女の膝の上に座っている中性的な子供の肩を触った。
「そっちはそっちで子供を連れてきて何がしたいんだ」
メイライがきれ気味に言い放った。
「だから、言ったじゃない。魔獣と会話ができるって。ミェンちゃんに魔獣とコミュニケーションを取ってもらって、私たちは今まで魔獣たちと交友関係を築き上げてきたの。ミェンちゃんは戦闘力皆無だから、みんなで守りながら行動してる。なにメイ君。文句あんの?」
「あぁそ」
早くも不穏な空気が流れ出ている。
俺たちの冒険は今まさに始まったばかりなのに。