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超越大戦  作者: やけたミカン


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第1話

続き書きました。

朝、鳴り響く目覚ましを、男は止めた。

止めてからひと息つく。


起き上がる前に、天井を見つめる

白く、無機質な天井だ。


外からラッパの音が聞こえた。


男はすぐに気持ちを切り替え制服を着る

身なりを整え、小さな神棚の前に立ち、朝のお祈りをする。


「神様、どうか私をお守りたまえ」


お祈りを終えると部屋を出ようとする。

その前にフォトフレームに入ってる写真に向かって

声をかける


「じゃあ、龍我行ってくるよ」


そう言って男は部屋を出た。


男の名は星絆


帝国軍所属の訓練兵になった。


ーーーーーーーーーーーーーーー


星絆side


扉を出た瞬間――


「総員ッ!! 五分で整列しろォォォ!!」


腹の底を殴るような怒声が、廊下に叩きつけられた。


反射的に、身体が強張る。

考えるより先に、足が動いた。


「遅れた奴から地獄を見ると思え!!」


教官の声は、怒鳴り声というより命令だった。

逃げ場のない、絶対の音。


周囲の扉が一斉に開き、

訓練兵たちが無言で廊下へと飛び出してくる。


誰も喋らない。

誰も目を合わせない。


聞こえるのは、

軍靴が床を叩く音と、荒い呼吸だけ。


――ここは、もう施設じゃない。


祈りも、優しさも、

「待ってくれる大人」も、ここにはない。


あるのは命令と、結果だけだ。


「走れッ!!」


再び怒声が響く。


俺は歯を食いしばり、前だけを見て走った。


もう、立ち止まるわけにはいかない。


あの日――

ドームで立ち尽くしていた自分とは、違う。


ここで生き残る。

強くなる。


そして――


超越者を、必ず殺す。


整列の合図と同時に、

訓練兵たちは校庭に並ばされた。


背筋を伸ばし、視線は正面。

誰一人、口を開かない。


朝の空気は冷たく、肺に刺さる。


「お前たちはーー」

「整列だけにいつまで時間をかけてる!!」

「歩いていたのか!」

「そんな調子だと超越者共に即殺されるぞ!」


教官の怒鳴る声が校庭中広がった。


怒号の主が、ゆっくりと前に出てきた。


背は高く、無駄のない体躯。

鍛え抜かれた身体は、制服の上からでも分かる。


だが――

一番印象に残ったのは、目だった。


感情がない。

怒っているようにも、興味があるようにも見えない。


ただ、獲物を見る目。


「俺は不幸にも、お前たちの教官だ、私の胃が心配になるな」


低く、抑えた声。

怒鳴らなくても、自然と背筋が凍る。


教官は、ゆっくりと整列した訓練兵の前を歩き始める。


足音が近づくたび、

心臓が一拍、遅れる。


「ここに来た時点で、お前たちはただの“人間”じゃない」


一人の前で立ち止まり、

顔を覗き込む。


「帝国軍の犬だ」


その言葉に、誰かが喉を鳴らした音がした。


教官は鼻で笑う。


「怖いか?」

「当たり前だ」


そして、俺の前で足が止まった。


視線が、刺さる。


――逃げたい。

だが、逃げ場はない。


「……お前が生き残ったガキだな」


小さく、そう呟いた。


俺は息を止めた。


そのまま歩き去っていく。


残されたのは、

冷たい汗と、確かな恐怖だけだった。


「今から全員、走れ!」


合図でも命令でもない。

ただの一言だった。


次の瞬間、笛が鳴る。


「校庭十周」

「周回遅れは、連帯責任だ一周につき腕立て伏せ百回だ!」

「グズグズするな!GO!GO!GO!」


悲鳴は上がらない。

上げる余裕がない。


俺たちは一斉に走り出した。


冷たい朝の空気が、肺を切り裂く。

足音が重なり、息が荒くなる。


倒れたやつがいた。

教官は、見向きもしない。


「止まるな」

「死にたくなければな」


その言葉だけで、足が動いた。


走る。


ただ走る。


足が重い。

肺が焼ける。


それでも止まれない。


――止まったら、終わる。


教官の声が、背中に張り付いて離れない。


「死にたくなければな」


……死。


その言葉は、もう珍しくもなかった。


事件があった日

あのドームで、人は簡単に死んだ


男女問わず歳も関係なく

順番も意味もなく。


先生が死んだ瞬間

全ては真っ白になった。


宗教は崩れた。

跡取りも、象徴も、信仰も。


残ったのは、

血と死体と、

生き残った俺たちだけだ。


俺と、美優。


コンサートに行かなかった人達は、先生が死んだ後自分達で再考すると言ってた人達もいたがその翌日から姿を見せなくなった。

恐らく超越者共に殺されたのだろう


お留守番してた、俺たちと同じ施設にいた、小さい子たちは人類帝国に保護され

行き先も、バラバラになった。


美優は、帝国傘下の学校の寮へ行った。


守られた場所。

銃声も、悲鳴も届かない場所。


俺も、同じ道を選ぶことはできた。

選べる立場には、あった。


だが――

俺は、その道を選ばなかった。


勿論、最初は美優に反対された。


帝国軍に入ると告げた時、

あいつは一瞬、言葉を失っていた。


怒鳴りもしなかった。

泣きもしなかった。


ただ、心配の眼差しだけだった。


そこから一言出てきた。


「お願い」

「行かないで」


初めて、美優の声が震えた。


「星絆までいなくなったら……私……」


最後までは、言わせなかった。


「大丈夫だ」


自分でも驚くくらい、冷たい声だった。


「死なない」

「戻ってくる」


根拠なんて、どこにもなかった。


それでも、そう言うしかなかった。


「それに離れ離れになる訳じゃない、会おうと思えば会える」


美優は、それ以上何も言わなかった。


ただ、最後に一言だけ。


「……生きて」


それだけだった。


「あぁ約束する」


俺は、そう約束して

帝国軍への志願書にサインをした。


守られるだけじゃ、

あの日を終わらせられなかった。


ドームで死んだ人たちは、

誰かに守られなかったから死んだんじゃない。


祈っていた。

信じていた。

それでも――殺された。


なら、守られる場所にいても意味はない。


俺が欲しかったのは、

「助けられる力」じゃない。


奪われたものを、

奪い返すための力だ。


俺は、守るためにここに来たんじゃない。


壊すために、

そして――終わらせるために、ここに来た。


超越者を。


あの日、すべてを踏みにじった存在を。


だから、俺は走る。


肺が焼けるほど息が苦しくても、

足が悲鳴を上げても、止まらない。


立ち止まった瞬間、

あの日の自分に戻ってしまう気がした。


――もう二度と、戻らない。


俺は軍の犬でいい。

人間じゃなくてもいい。


それでも構わない。


超越者を、殺せるなら。


走り終えた頃には、脚の感覚が曖昧になっていた。

地面を蹴っているのか、引きずっているのかも分からない。


最後の一周を終えた瞬間、

何人かがその場に崩れ落ちた。


俺も、立っているだけで精一杯だった。


だが――


「整列」


教官の声一つで、身体が勝手に動く。

倒れたままの訓練兵はいない。


倒れることは許されていない。


「この程度でこんなに倒れる奴らがいるとは」

「今年の新入りは期待はずれだな」


教官は吐き捨てるように続ける


「超越者と遭遇した瞬間」

「お前たちは、今より苦しい状態で戦う」


視線が俺たち訓練兵をなぞる


「この程度で根を上げてたら」

「命はないぞ!」


呼吸が整わないまま、耳を澄ます。


「終了後、早朝の訓練を終える」

「ーーー始め!!」


教官が合図で連帯責任の腕立てを始め、終わったものから朝食に入った。


ーーーーーーーーーーーーー


朝食を済まる


噛んで、飲み込む。

それだけの作業。


周囲を見渡す余裕はない。

会話もない。


誰もが、

次に何が来るのかを分かっているからだ。


施設にいた頃とは大違いだ

あの場所では食事の時は

みんなで楽しく会話しながら食事をしていた。


ここは、帝国軍訓練校。


施設とは違う、思い出と比較するな


俺は、トレーを握りしめながら思った。


――この生活が、日常になる。


強くなるために

超越者を全員殺す為に


「あの〜」


背後から

よそよそしく声をかかった


振り返ると、

同じ訓練服の少年が立っていた。


俺と、同い年くらいだ。


視線が定まらず、

指先が、トレーの縁を無意識に擦っている。


「空いてる席なくて、よかったら隣いい?」


俺は一瞬、周囲を見た。


確かに、空席はほとんどない。

詰めれば座れる場所はあるが、

誰もそんなことはしない。


確かに普通に空いてるのは、ここしかなかった。


「別に構わないよ」


そう言うと、

少年は少しだけ安堵したように頷いた。


「……あぁありがとう」


少年はほっとしたように頷き、俺の隣に腰を下ろした。


「僕は優一(ゆういち)。よろしく」


少年こと優一は、自己紹介をしてきた。


「星絆だ、よろしく」


そう返すと、

優一はもう一度、ぺこりと小さく頭を下げた。


「星絆くん、ありがとう」

「話しかけられて嫌な顔1つされなくて」


その言い方に、思わず眉が動く。


「なんでだよ、別に嫌な顔する理由なくないか」


「ハハハ、そうだよね」


優一は少し照れたように笑い、

トレーを手元に引き寄せた。


噛んで、飲み込む。

動作はゆっくりだが、無駄がない。


「星絆くんは……どうして軍に入ろうと思ったの?」


唐突だったが、

声は控えめで、探るような響きはなかった。


「そんなこと、聞いてどうするの?」


そう返すと、

優一は慌てて首を振る。


「い、いや、無理にじゃなくて……」

「ただの好奇心だよ、なんで入ったんだろうなって」


一瞬、あのドームの光景が脳裏をよぎる。


血。

悲鳴。

空を裂く刃。


「……超越者を一人残らず殺すためだ」


俺は、そう言った。


優一の手が、ぴたりと止まった。


だが目を逸らすことはなく

ただ一言


「……そっか」


小さく、そう呟いてから、

少し考えるようにスープを見つめる。


「そういう、優一は?」


俺も優一に動機を聞いた。

明らかに性分的に軍人向きではないのに

何故軍に入ったのか


「優でいいよ、僕は……守りたいの」

「もう、同じ思いをする人を悲しむ人達を増やしたくなくて」


その言葉は、

この無機質な食堂の中で、やけに浮いていた。


「だから……」

「怖いけど、思うだけじゃ叶わないから」


優一はそう言って、

ぎこちなく笑った。


「優は、強いな」

「え…そうかな……ありがとう」


そう言って俺と優一は


トレーの上の食事を、黙って口に運んだ。


——悪くない。


そう思ったのは、

ここに来てから、初めてだった。

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