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脱出作戦

「誰...ですか...?」

そう尋ねる自分の声が震えているのがよくわかった。全く情けない限りだ。

隣の檻といっても少し距離があり、檻の中に誰がいるのかは暗さでよくわからない。

「質問に質問で返さないで。で、使えるの?使えないの?」

「魔力の操作はできます。ただ、魔法を使ったことがなくて...」

「チッ。」舌打ちが返ってきた。

ムッとなって言い返す。「使ったことがないだけで、使えないとは言ってない。火の魔法を使える。」

「火...ね。なかなか使えるじゃない。」

彼女と会話しているうちに俺は冷静さを取り戻してきた。俺は再度彼女に尋ねる。

「あんたは誰だ?」

「名前はレグ。教えてあげるのはこれだけ。犯罪者かもしれない奴に素性を教えるわけないでしょ。」 

「犯罪者?どういうことだ?」

「普通、奴隷は重い罪を犯した犯罪者がなるものでしょう?そんなことも知らないの?まあ、ここは子供とかを誘拐して奴隷にする違法な奴隷商なんだろうけど。」

彼女はさも当然かのようにいう。奴隷に違法合法あるのか...終わってんな、異世界。

「とにかく、俺は犯罪者じゃない。それで、魔法が使えたらなんだ?」

レグは声をひそめる「ここから逃げ出すのよ。当たり前じゃない。」

「脱出...できるのか?」

「もちろん。あんたの助けがあれば...ね。協力してくれる?」

もちろんOKだ。

「そうだあんた、名前は?」

「ノイルだ。」そう名乗っておいた。

彼女から話された作戦を簡潔にまとめると、

あと数日で俺たちは外に連れ出され、奴隷紋と言う印をつけられる。それには強力な追跡魔法がかかっていて脱出してもすぐにまた捕まってしまう。しかし、それをつけるために外に出されて移動する。逃げ出すのに最適なタイミングというわけだ。

その移動中に俺が火の魔法で俺とレグの縄を焼き切り、レグが敵をぶっ飛ばすというシンプルな作戦だ。レグ曰く「こんな紐がなかったらあんな奴らボッコボコにできる」そうだ。

俺はその時が来るまで悪質な環境に耐え忍んだ。レグは俺に対してか安全には心を開いてはくれなかったが、会話が成り立つくらいの関係性にはなっていた。


決行日、俺は縄で縛られたまま檻から出された。

同じく縄で繋がれた人が続々と檻から出てくる。皆痩せ細り、生気のない虚な目で虚空を見つめていた。その中に、こちらをじっと見つめる少女、レグを見つけた。しかし、俺は驚きで言葉を漏らす。

「なんだ...その体...?」

そう。彼女の頭には尖った耳、尻にはふさふさとした尻尾が生えていた。

俺の反応にレグは少し怒ったように言う。

「何?獣人と組むのは嫌?」

ため息を吐くようにいう。「あんたもそうなのね。少しは話のわかるやつだと思ったのに。」

「いや...そう言うわけじゃあ決して...」

俺が言い終える前に言葉を被せられる。

「協力するのは今回だけにする。脱出できたらあなたとは関わらない。これでいい?」

俺が誤解を解こうと喋る前に、大男に縄を引かれ、移動が始まった。

移動中は誰も言葉を発さず(監視があるのでそもそも発せない)、例の地点に到着した。

俺は腕に意識を集中させ、火で網を焼き切る。

「アっっっっっつ!!!」

熱さと驚きで足がもつれ、転んでしまう。

先生が普通に火の魔法を使っていたから頭から抜けていたが、手から火を出すなんて熱いに決まってる!

小男が顔を真っ赤にして怒る。「この野郎!魔法が使えたのか!」

レグが叫ぶ。「火を私にぶつけて!私は魔法が効かないから!」

魔法を飛ばしたことなんてもちろんないが、今の俺の最大火力で火を思い切り飛ばす。「っっっっっ!」

熱さで意識が飛びかける。

あらぬ方向に飛んでいった火にレグは追いつき、火に飛び込む。

「なんだ!?味方割れか?」

次の瞬間、小男の体が宙に浮いた。この一瞬でレグは男の懐に入り込み、蹴りを喰らわせていたのだ。

疾い!続けてその傍の大男にも蹴りを入れるレグだが、太い腕に弾かれ、逆に捕まってしまう。

咄嗟に体が動いた。手を前に突き出し、魔力を集中させる。

『火球』

俺の手から出たそれは、今度はまっすぐに大男の顔面目掛けて飛んでいき、大男は怯んでレグを離す。大男の手から逃れたレグによって俺は抱えられ、その場を逃げ切った。

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