奴隷
薄暗く狭い場所で目が覚めた。
路地裏といいここといい俺が目を覚ます時は薄暗い場所になる決まりでもあるのか?
しかし、手足を動かそうとしてそんなことを考えている余裕はないことを悟った。
俺は手足を縄で縛られて俺一人入るのがやっとな檻に押し込まれていたのだ。そのせいか体の節々が悲鳴を上げていた。
檻のひんやりとした温度を感じながら周りを確かめる。暗くてよく見えないが俺が入っている檻の他にもいくつか檻があるようで、いずれも中に誰かが入っているようだった。また窓などの外の情報を得られるものが一切なく、明かりがほとんどなく時折あちこちからうめくような声が聞こえる。
なんだか生気を感じない空間だ。俺はおそらく奴隷商に誘拐されたのだろう。
こんなところに長く閉じ込められていれば精神がおかしくなってしまう。なんとか脱出できないものか。
檻に寄りかかり思い切り体重をかけてみるがやはりびくともしない。それでも諦めずに色々試していると、ガラッと音がしてドアが開き、大男と小太りの男が入ってきた。
途端に空気がピリリとし、さっきまで聞こえていた呻き声もピタッとやんだ。
小男が薄汚い笑顔を浮かべてねちょねちょした声で「餌の時間だ。」といいながら檻を一つ一つみて中に何かを投げ込み、大男が小男の後ろについていく。
小男が俺の真正面にある檻の前で立ち止まって大男に「おい、こいつはもうだめだ。連れて行け。」と指示をした。大男は檻を開け、中の人を引きずり出す。
しかし、俺の口からため息のように言葉が吐き出された。「死んでる...のか...?」
とんでもないところに連れてこられた。やばい。俺もああなるのか...?
恐怖で視界が狭まり、パニックで頭が真っ白になる。気づけば目の前に小男が来ていた。
「坊主、やっと起きたか。俺に逆らわないようにしろよ。さもないと...」
子男は俺の檻を掴んでグラグラと揺らす。
「う、うあああああああ!」俺は檻に伸びてきた手を咄嗟に魔力のバリアで弾き飛ばしてしまう。
小男はたちまち機嫌を悪くした。
「チッ、大人しくしとけよ。さもないとお前もすぐにああだぞ。」
ガンッと檻を人蹴りして小男は大男を連れて他の檻の見回りに行ってしまった。
小男が見えなくなった頃、隣の檻から女の声で話しかけられた。
「お前、魔法が使えるのか?」