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プロローグ

目を開けると、見知らぬ森の中だった。木々の葉が風に揺れる音が耳に届き、鳥たちのさえずりが遠くから聞こえる。自分が赤ん坊の体であることに気づくと、驚きと困惑が一気に押し寄せた。

「ここはどこだ?どうしてこんな姿に…?」

声に出すこともできず、驚きで呆然としていると、突然、森の奥から低い唸り声が聞こえてきた。大きな影が木々の間から近づいてくるのが見え、心臓が激しく鼓動する。それは黒い毛に覆われ、鋭い牙を持つ狼だった。俺は恐怖で体が氷のように動かなくなる。

魔物が目をギラギラと光らせさらに近づいてくる。絶望が私を襲ったその瞬間、白い髪と緑の目を持つ女性が現れた。彼女は毅然と魔物に立ち向かい、手を振り上げると、まばゆい光が放たれ、魔物は一瞬で吹き飛ばされた。

「人間の子供か、こんなところに捨てられて…可哀そうに。」

その声は優しく、温かかったが、俺はそれどころではなかった。目の前で何が起こったのか理解できず、ただ震えながら彼女を見つめていた。

彼女はそっと私を抱き上げ、そのまま森を歩き始めた。俺は震える体を落ち着かせ、何とか状況を理解しようとした。

「私があなたを守るわ。もう心配しなくていいのよ。」

彼女は若々しく、美しい人だったが、その優しさの裏に何か隠されているのではないかと疑った。さっきの光は一体何だったのか、どうやって魔物を退けたのか、全てが謎すぎる。どうやら俺を拾ってくれるようだ。しかし俺はこの不可解な力を持つ彼女に完全に心を許すことはできなかった。

日が経つにつれて、彼女は俺に優しく接してくれた。彼女は俺を自分の家に連れて行き、食事や安全な場所を提供してくれた。彼女は何かしらの理由で社会から拒絶され一人で森の小屋で暮らしていたらしい。俺は少し親近感を覚え、彼女に気を許せるようになった。その間、俺はここは異世界であり、魔法や魔物が存在していることを少しずつ理解していった。彼女が魔法で家事をこなしたり、魔物を退けるのを目にするたびに俺は観察した。もし魔物がいる世界で魔法が使えずに彼女に追い出されでもしたら、魔物に簡単に食い殺される自分の姿が容易に想像できたからだ。しかし、俺は魔法が使えるようにはならなかった。

一方でこの世界はなんなのか、どうして自分はここにいるのかなどの疑問がこの世界で過ごすうちに薄れ、過去の自分との繋がりが薄れていくような気がした。

それから何年かが過ぎた。そのうちに俺は、いつしか彼女のことを「先生」と呼ぶようになっていた。先生は私に優しく、しかし厳しく接し、さまざまな知識や技術を教えてくれた。そのおかげで異世界での生活にも徐々に慣れてきた。

ある日、俺は先生に呼び出された。彼女の眼差しはいつもより真剣で、何か大切なことを伝えようとしているのが分かった。

「今日はあなたを拾ってから10年目ね。10歳、おめでとう。」

「そういえばそうですね。ありがとうございます、先生。」

当時とまったく変わらない姿で先生は微笑みながら続けた。

「これまでずっとあなたを見守ってきたけれど、今こそ大切な話をする時が来たわ。あなたには特別な力があるの。魔法の才能が。」

俺は驚きと戸惑いで口を開けたが、先生は続けた。

「私、あなたを拾ったのは運命なんじゃないかと思うの。わたしが完成させた魔法を学びぶ気はない?」

先生の言葉に嘘はないと感じた。だが、俺は色々な方法を試してみたが、魔法は使えなかったのだ。とても自分に才能があるとは思えない。

「魔法…ですか?本当に、僕にそんな力が?」

先生はうなずき、優しく俺の肩に手を置いた。

「そうよ。あなたは特別な存在なの。これから一緒に学び、成長していきましょう。」

俺は深く息を吸い、決意を固めた。この異世界で、自分の新たな力を見つけるために、先生と共に魔法を学ぶ道を選ぶことにした。

「わかりました、先生。僕、魔法を学びます。」

先生は微笑み、俺の決意を受け入れた。そして、俺たちの新たな師弟関係が始まるのだった。

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