さよならの決意7
「ごめん・・・」
再び大翔さんに抱きしめられる。
とてもとても温かい。
私はその温かさに気絶しそうになる。
「空良、好き」
大翔さんが腕に力をこめて、私の耳元でつぶやくように言った。
嘘じゃないのか、
夢じゃないのか・・・
大翔さんが私の事を好きだなんて。
本当か自分の頬をつねりたい。
ちゃんと本当か確認したくなる。
だけど私の目からはどんどん勝手に涙があふれてきて、涙のぬくもりを頬に感じて、やっぱりこれは夢じゃないんだって実感した。
「空良、泣かないで」
大翔さんが涙を指でぬぐってくれる。
でもそれに追いつかないくらいどんどん涙はあふれてくる。
「追いつかないや」
そう言って、大翔さんは私の涙にそっと口をつける。
大好き、大翔さん。
本当に嘘じゃないよね。
「しょっぱい・・・」
そう言って笑う大翔さん。
そんな大翔さんを見て、私もつられて笑う。
「空良、ずっと俺の側にいて・・・」
そしてそっと私の唇にに大翔さんの唇が重なった。
“温かい・・・”
大翔さんの唇は少しガサガサしてたけど、すごく温かかった。
唇から大翔さんの『好き』という気持ちがどんどん伝わってくるようだった。
私の『好き』っていう気持ちも大翔さんに伝わったかな・・・
唇を離した大翔さんは笑っていた。
私も笑った。
もう妹じゃないんだよね?
私をちゃんと女として見てくれるんだね。
側にいてもいいんだね。
もう涙が止まらないくらい嬉しい。
大翔さん、大好き、大好き。
もう何回言っても足りないくらいだ。
大翔さんの過去もつらいこともみんな私に半分背負わせて欲しい。
私を頼って欲しい。
私を必要として欲しいよ。
「空良・・・」
どれくらい抱き合っていたのか―――
1時間だろうか、2時間?
何時間でもずっと大翔さんとは抱き合っていたい・・・
大翔さんの身体と一体になって溶けてしまいたいくらいの気持ちだった。
身体も心も今まで経験した事がないくらいホカホカ温かかった。
「もう寒いし、帰るか。風邪ひいちゃうもんな」
そう言って大翔さんは私の身体をそっと離した。
正直すごく寂しい。
「俺たちの家に帰ろう」
私は顔を上げた。
大翔さんは満面の笑みで私を見ていた。
「うん!!」
私は力強くうなずいた。
大翔さんが私の手を優しく握る。
だけど握られたその手に何か違和感を感じた。
大翔さんの手の中に何かが握られている。
不思議そうな顔をする私に大翔さんが自分の手の中を開いて見せてくれる。
その手の中には、遊園地で大翔さんがくれた天使の人形があった。
出て行く時に机に置いてきたあの人形だ。
私は嬉しくてその人形を手のひらに包んで頬擦りした。
「もう置いて行ったらダメだよ」
大翔さんが笑ってそう言うと、私の手を再び握った。