さよならの決意3
その時、私は思いっきり誰かに右肩をつかまれた。
驚いて振り返ると、そこには大翔さんが立っていた。
顔を真っ赤にして、こんなに寒いのに汗をいっぱい浮かべて息を切らしている。
「大翔さん、何で・・・?」
思わず声が漏れる。
何で大翔さんがここにいるのだろう。
嬉しさと驚きで私はこれ以上声が出せない。
「何だ、てめぇは・・・?」
サラリーマンは大翔さんの存在に気づいて、怖い顔ですごんだ。
そして大翔さんの私の肩に乗った手を振り払った。
私はそのサラリーマンの形相にタカの面影を感じて、恐怖を感じる。
だけど大翔さんはそんなサラリーマンに全くひるむ様子はなかった。
「この子は俺の妹です。悪いけど返してくれる?」
「は・・・?」
頭が悪そうな声を出すサラリーマン。
「妹なんかじゃないよ!!」
思わず私は叫んだ。
又、大翔さんは私の事を妹と言った。
でも私は大翔さんの妹じゃない。
妹なんか嫌なんだ!
大翔さんは私の叫びに驚いたように目を見開いた。
サラリーマンはその言葉を聞いてニヤニヤしながら、大翔さんに近づいた。
「お兄さぁん~~、妹じゃないってよ。ふられちゃったねぇ。そういうわけで邪魔しないでね~~」
「空良!どういうことだよ!」
サラリーマンは私に詰め寄ってくる大翔さんを面倒臭そうに突き飛ばした。
そして再び私の肩を抱いてホテル街に向かおうとする。
私は大翔さんの顔を見ないように、うつむくことしかできなかった。
「待てよ・・・」
大翔さんは立ちはだかると低い声で言う。
「つべこべ言わないで、その子返してくれる・・・?」
顔は真剣に怒っている。
今までに見たことがなかったくらいに怖い顔だった。
あまりの大翔さんの形相に、サラリーマンもちょっと恐れをなした様子だった。
「なんなんだよ、あんた!」
その時大翔さんがサラリーマンの腕を取ると、いきなり腕を本来は曲がらない方向にねじった。
「いてぇ!!!」
本気で痛がっているサラリーマン。
だけど大翔さんはそれでも腕を離そうとはしない。
「わかった、わかったよ!返すよ、こんな女!!」
サラリーマンが痛さのあまりにそう叫ぶと、大翔さんが黙って腕を離した。
「何なんだよ!ばかやろう!!」
サラリーマンはそう言うと、腕をさすりながらすごいスピードで駅の方向へ走り去った。