さよならの決意2
その時、
「おねえ~さん♪」
背後から声がした。
振り向くと、そこにいたのはいかにも軽そうなサラリーマンだった。
髪の毛は明るい茶髪、耳たぶにはピアス、ネクタイはだらしなくゆるんでいる。
サラリーマンというより、ホストにしか見えない。
「こんな寒いのに、こんなとこに座り込んで何してんのぉ~~??」
「別に・・・」
「もしかして家出少女??」
「・・・・・・」
「図星??」
サラリーマンはいつのまにか私の隣に腰を下ろして、どんどん密着してくる。
正直気持ち悪い。
露骨に下心丸出し。
「おねえさん、寒いしどっか行こうよ~~
行く場所ないんだろ?俺とどっか行こう」
サラリーマンは図々しくも私の肩に手を回して言う。
虫唾が走る!
やっぱり男ってみんなそう。
女をエロで利用することしか考えてない。
でも、一人違った・・・
大翔さんだけは違ったな。
私の頭の中に大翔さんのふんわりした綿菓子みたいな笑顔が浮かんだ。
「い~よ・・・」
それを打ち消すかのように私はそう返事をした。
「そう来なくっちゃ!」
男はめちゃめちゃハイテンションになって、私の腰に手を回して私を立たせると、どこかに向かって歩き出した。
私は抵抗もせずに男に体を預けて、歩き出す。
もうどこでもいいや・・・
どうなってもいいや・・・
だってどうせどこにも行く場所も帰る場所もない・・・
サラリーマンが私の肩を抱いた。
密着してるから身体は温かいはずなのに、全身が凍えるように寒かった。
体がブルブル痙攣するように震える。
「寒いの?」
サラリーマンはニヤニヤしながら聞いてくる。
私は黙って首を縦に振った。
「じゃさ、あたたかくなれるようなとこ行こうぜぇい♪」
サラリーマンは私の肩を抱く手に力をこめた。
その手は“逃がさない”と言ってるようだった。
駅を行きかう人たちはみんな幸せそうで、周りの空気までもがあたたかそうだ。
私くらいだろうな。
人と一緒にいるのにこんなに寒いのは・・・
サラリーマンの足は駅の近くのラブホテル街に向かっていく。