大翔さんの過去4
「でも真帆さんは彼女だったんですよね・・・?」
「そうだけど・・・」
「彼女だったら、大翔さんの事、支えてあげなかったんですか?味方になってあげなかったのですか?」
こういうときに支えてあげたり、力になってあげるのが彼女の役割だと思う。
真帆さんも同じ医師なんだし。
真帆さんは顔を伏せ、ゆっくりと冷笑を浮かべた。
その笑みはまるで自分を蔑んでるかのような笑みだった。
「味方になんてなれなかったわ・・・」
「え・・・」
「私は卑怯かもしれないけど、大人だから。医師を辞めたくなかった。父も同じ病院の教授なわけだしね。父にも失望されたくなかった・・・私も周りと一緒になって大翔に旦那さんの元にその彼女を返すように説得した」
「は!?それってひどくなですか?唯一の味方である彼女にも背を向けられて、そんなんじゃ大翔さんが医師を辞めるのは当たり前です!」
真帆さんを含め京凜大学病院の人たちもDVの加害者と一緒だ。
その女の人がかわいそうだ。
だけど真帆さんは顔を上げて、きっぱりと言う。
「そうね。でもこうは考えられないかしら?それなら大翔が偉くなって教授になってこの病院を変えればいいって。一時の感情に流されて、逃げるなんて大翔は甘いわよ」
「詭弁だわ。彼女とは思えない言動だと思います」
「そうかもしれない。でも大翔は外科の腕は一流だし、教授になって将来病院を変える力は持っているわ」
「・・・」
「それにバックボーンもあるわ。私と結婚すれば教授への道は近くなる」
真帆さんは私の目を見据えて言った。
「私は大翔に医師に戻って欲しいの。そして京凛大学病院に戻ってきてほしい。それに私は大翔がまだ今でも好きなのよ。諦められない」
真帆さんの気迫に押されてしまい、、私は黙るしかなかった。
「ところでこの際はっきり聞くけど、あなたは大翔の一体何なの??」
「・・・」
私は真帆さんのその質問に答えられない。
黙ってうつむくしかない。
何て答えればいいのだろう・・・自分でもわからない。
「もしかして、予想だけどDVの被害者・・・?」
私はいきなり確信をつかれて、驚きを隠せない。
手に汗がいっぱい出てきて、私はそっと服で汗をぬぐった。
「図星か・・・」
そんな私の様子を見て、真帆さんは予想が当たったことを確信したらしい。