大翔さんの過去1
次の日、私は大翔さんの声で目を覚ました。
「空良ちゃん、空良ちゃんってば!こんなとこで寝てると風邪ひいちゃうよ」
驚いてガバッと起きると、そこはリビングのソファーだった。
昨日そのままいつのまにか寝てしまったらしい・・・
「風邪ひいてない?」
心配そうに聞く大翔さんに、私はこくんとうなずく。
大翔さんは安心したように微笑んだ。
好きだって意識してしまうと、何だか恥ずかしいし照れてしまう。
「ちょっと空良ちゃん、顔赤いよ!!やっぱり風邪ひいたんじゃないの?」
大翔さんがあせった表情で、私の額に手を当てる。
大きいちょっと冷たい手に体温が上昇しそう。
「ん~~。別に熱はないみたいだけどな・・・」
首をかしげる大翔さん。
顔が赤いのは大翔さんのせいですから。
もちろん言えないけど・・・
人を好きになるっていうのは、こんなに相手を意識してしまったり、相手の行動や表情をずっと見てしまうもんなんだな・・・
恋って忙しいし、何だか大変だ。
だけどこうやってドキドキしたり、浮き上がるようなふわふわした気持ちは悪くない。
そんなドキドキした気持ちを抑えるためにも、私は昨日から気になっていたことを口に出す。
「あの・・・大丈夫なんですか?昨日の真帆さんの事・・・」
「あ~~、大丈夫だよ、別にたいしたことじゃないし。反対に心配かけてごめんね」
大翔さんは嘘つきだ。
目の下には寝不足を示す黒いクマがくっきりと現れている。
でも態度はいつもと同じ大翔さん。
それが私にはとても悲しくて、寂しかった。
私にもいろいろ話して欲しい。
もし悩んでることがあったら、ぶつけて欲しい。
結局この後、大翔さんはいつものように派遣の仕事に行った。
私のラブホの清掃の仕事はシフトで休みだったので、今日は部屋の掃除や洗濯をして過ごした。
やっぱり居候なので、こういうことはちゃんとしたい。
それに私はずっと家事をやってきたので、そんなに家事が苦痛でも無いし、嫌いでもないのだ。
家事はきりがない。
時間をつい忘れて一生懸命やってしまう。
気づくと、もう日が落ちていた。
時計を見ると、4時30分。
時間って過ぎるのが早い。
そろそろ夕食の支度をしようと、台所に行こうとしたその時、
ピンポーン
インターフォンが鳴った。
私は急いでインターフォンのカメラを確認する。
そこには真帆さんが立っていた―――