気づいた気持ち
私はしばらくずっとその場に佇んでいた。
真帆さんの事が頭から離れなかった。
遊園地で大翔さんがくれた天使の人形を握りしめた。
つらい時や、元気が欲しい時、私はその人形を握り締める癖がついてしまっていた。
真帆さんは大翔さんの彼女なの・・・?
お父さんや教授って何・・・?
大翔さんの過去と関係あるの??
頭の中をグルグル回る先ほどの出来事。
そして疑問。
大翔さんは私に何も話さず、部屋に閉じこもってしまった。
きっと一人で何もかも抱えこんでしまう気なんだろう・・・
それとも私は部外者、関係ないから何も話してくれないのかな?
私は自分のつらいことや、過去の重荷も大翔さんに全部話して、重荷を半分背負ってもらった。
そして随分心が軽くなった。
一人じゃないのかもしれないって思えることができた。
私も大翔さんの背負ってるものを、半分背負いたい!!
少しでも楽になってもらいたい。
苦しむのが少しでも減ればいいと思う。
私じゃ頼りないだろうか。
もしかして真帆さんみたいな人にだったら全部話せるのだろうか?
大翔さんのいる部屋の中からは、物音一つしない。
“何だろ?この気持ち”
私の心の中は今までに感じた事のない気持ちに支配されていた。
大翔さんの事を知りたいという気持ち。
大翔さんの過去を半分背負いたいという気持ち。
そして何より真帆さんの存在・・・
正直言って、私は真帆さんが大翔さんの彼女だったり、大切な人だったら嫌だって思っていた。
いや、真帆さんじゃなくても、他の人でも嫌だ!
大翔さんが大切に思う人や優しくする人が私だけだったらいいのに・・・
私だけを見てくれたらいいのに・・・
私は大翔さんの妹じゃ嫌なのだ。
“だったら何がいいの・・・?”
心の中の私の声が問いかけてくる。
“彼女・・・?”
答えがたった一言、すぐに心に浮かんだ。
自分で答えを出して、驚いた。
もしかして、これが好きって気持ちなのかな?
恋・・・ってやつなのかな?
大翔さんの事を考えると胸が痛くなる。
その微笑が私だけに向けられるものならいいのにって思ってしまう。
そうだ。
自分でもわかっていたような気がする。
私、大翔さんの事が好きなんだ―――
でもきっと、大翔さんはたぶん私を妹くらいにしか思ってない・
両親の虐待を受けて、彼氏からDVされてた私に同情してるだけなのかもしれない。
しかも真帆さんは知性的で美人ですごく魅力的な人だ。
あんな人が側にいたら、私なんて見向きもされないよね・・・
真帆さんを好きになるに決まってるもん。
でも妹だったらずっと側にいられる・・・
カップルみたいに簡単に別れたりはしない。
だけど私は妹じゃ嫌なのだ。
「どうしよ・・・」
私はその場に崩れるように座り込むと、膝を抱えてつぶやいた。
まるで子供のようだ。
“好き”って自覚すると余計苦しいね・・・
私は立ち上がって大翔さんのいる部屋のドアの前に行った。
もちろん声はかけられない。
でもドアごしに強く思った。
“大翔さん、好きです”