デート6
「彼氏と別れられないのはやっぱりその過去に原因があったりするのかな?」
「はい。タカ、あっ、彼氏の名前なんですけど・・・も同じような家庭環境で施設に入っていたんです。
タカも出会ったときも寂しい目をしてました」
そう、私と同じ目。
何かを諦めた目。
だけど何かをすごく求めている目。
「どんなにひどいことをされても、殴られても、蹴られても、お金をぶん取られても、私はそんな自分の分身のようなタカを見捨てることができないんです」
何回別れようと思ったし、家を出ようと思った。
だけどできなかった。
その度にタカの寂しそうな目が私を引き止めるのだ。
「くうちゃんの気持ちはわかるよ。でもタカ君とくうちゃんが一緒にいてもダメになるよ」
「・・・・・・」
「実際もうダメになってるじゃない?タカ君とくうちゃんは両依存状態になってるんだよ」
「両依存?」
「うん。タカ君もくうちゃんに依存してるし、くうちゃんもタカ君に依存してる。でもこれって愛じゃないよ」
“愛じゃない・・・?”
私はタカを好きだと思っていた。
それは違ったの?
依存してただけだったの?
「同じような傷を持ったもの同士が一緒にいても、くうちゃんところみたいになるか、傷をお互い舐め合うかになるんだと思う。傷を舐め合うならまだいいけど、DVは違うだろ?幸せは産まないよ」
airさんはため息をついた。
「実際にくぅちゃんは苦しんでる。DVは体はもちろん精神も傷つけるんだ。過去にどんな事があったからって人を暴力で支配していい理由にはならないよ。俺はDVが嫌いだ!許せない!!」
airさんのDVに対する想いには何か尋常じゃないものを感じた。
airさんの目が異常に興奮しているように見える。
「くうちゃんには過去の事もあって身内もいないし、タカ君を家族みたいに思って依存しちゃう気持ちもわかるけど、もうタカ君とは離れなよ。きっとその方がお互いの為にいい」
私は涙をボロボロ流した。
「寂しいの・・・?」
airさんがそっと尋ねた。
こっくりとうなずく私。
あんな暴力&お金を奪っていく男でも私の分身なのだ。
私の唯一の家族みたいなものなのだ。
タカがいなくなったら誰が私の家族になるの??
誰が私の側にいてくれるというのだろう。