デート1
airさんは私にすごくおいしいおかゆを作ると、「バイトに行ってくる」と言って家を出て行った。
今は派遣で工場の軽作業のバイトをしているらしい。
元医者のairさんが派遣で軽作業しているのも、何か訳ありみたい。
airさんも私と同様に触れられたくない過去があるのだろう・・・
「早く帰るから・・」
そう言って出ていったairさん。
私に「出ていけ」とか「いつまでいるの??」とか聞いてはこない。
私が気を使わないようにと、こういうふうに言ってくれたんだろうと思う。
私もとりあえずラブホテルの清掃のバイトにはしばらく行けないと携帯で電話をかけることにした。
切ってあった携帯の電源を入れて、メールを確認するとタカからのメールが30件。
留守電も10件以上入っていた。
1件メールを読むと、耐え難いほどの罵言が綴ってあった。
めまいがしてメールは全て消去、留守電も聞かずに全て消去した。
タカはすごく執念深い。
このままでは済まされない・・・
私の手はいつのまに震えていた。
何とかバイト先のラブホテルに電話をかけて、私は全身に移行した震えを抑えるように毛布をかぶった。
airさんが家に帰ってきたのは空も暗くなった頃だった。
「ただいま。くうちゃん、いる・・・?」
寝室をノックして、そっと声をかけてくれるairさん。
「くうちゃん、又体調悪くなった・・・?」
電気もつけずに毛布をかぶって震えている私を見て、airさんはビックリしたようだった。
私は首を横に振った。
「何かあった・・・?」
私は震えながら、黙って携帯電話を指差すことしかできなかった。
それでairさんは全てを察したようだった。
「くぅちゃんはもう具合はいいの?」
暗い空気を打ち消すようにairさんが聞いた。
「うん」
熱も下がって、脚の腫れもほぼひいたし、少し脚はひきずるけど痛みもなく歩けるようになっていた。
アザも化粧で目立たなくなるほどには薄くなった。
「じゃぁ、俺とデートしませんか?」
「え・・・」
「飯でも食いに行こう!俺、明日は仕事も休みだし、ゆっくりできるから。良かったらデートしませんか?」
ニコニコしているairさん。
「嫌・・・かな?」
私はすごい勢いで首を横に振った。
「ううん!!行く!行きたい!!」
airさんの笑顔が満開になった。