逃亡6
私が起きた気配を察したのか、airさんも目を覚ました。
半分寝ぼけた様子で、目をこすっている。
だけど私の起きた様子を見て、
「俺寝ちゃったんだ!!ごめん」
airさんはあせったように言った。
「あやまるのはこっちです。ベッド占領しちゃって、ごめんなさい。しかもずっと看病してもらったみたいで・・・」
「そんなのはいいよ、病気だったんだし。それより具合は大丈夫??」
「はい。もうそんなにだるくないです」
体のだるさもほとんどなかったし、燃えるように感じた熱さも消えていた。
「良かった。昨日は丸1日ずっと寝てたんだよ」
「え?そんなに?」
私はビックリして聞く。
そんなにずっと寝ていたんだ・・・
「うん。結構心配したんだよ」
airさんは笑って言った。
すごくairさんが私の事を心配してくれたのは、わかりすぎるほどわかった。
ずっと側についててくれたんだもん。
本当にありがたい・・・
私は改めて姿勢を正した。
「本当にいろいろとお世話になってしまってすみません」
私はairさんに深々と頭を下げた。
「そんなあやまらないでよ。くぅちゃんの体調が少し良くなったみたいでほっとしたよ。俺が役に立てて良かったよ。ところで・・・」
airさんも姿勢を正した。
「くぅちゃんに暴力を振るったのって誰・・・?」
「・・・・・・」
私は一瞬沈黙した。
「言いたくない・・??」
できれば言いたくないけど、airさんにはちゃんと言う義務があると思った。
それにairさんには話したいと感じた。
「実は・・・彼氏なんです・・・」
「そっか・・・」
airさんは少しため息をついて考え込んだ。
言葉を選んでるようだ。
「・・・それで、くうちゃんはどう考えてるの?」
いきなり抽象的な質問を投げかけられて私は戸惑った。
「・・・・・・」
今度は私が黙り込んだ。
「ごめんね、何だか答えにくい質問だったよね。
俺が言いたいのは、あんなにひどい事をする彼氏とこれからどうしたいのって事。
俺は女殴る男は最低だと思うからやっぱり離れるべきだと思うよ」
「・・・はい」
「なんか離れられない訳でもある?」
私は言葉につまった。
この答えを言うという事は、私の過去を話さなければいけなくなる。
養父にされていた性的虐待。
それを見ないふりをした実の母。
そんな実家を出て生活をするためにしていた援助交際の事。
airさんには私のそういう部分を知られたくないと思った。
黙り込んだ私をしばらくairさんは真剣な顔で見つめていた。
だけどすぐ笑顔を浮かべた。
「わかった。いずれくうちゃんが話したくなったら話してくれればいいからさ。この話はここで終了!」
そしてairさんは立ち上がると、
「お腹すいたでしょ??何か作ってくるよ」
と寝室を出て行った。
チャットで話しただけの私を助けてくれて、しかもずっと看病までしてくれたairさん。
それなのに深いところまでは気を使って聞かない。
airさんは私の今まで関わってきた男の人とどこか違う。
airさんに私の全てを打ち明けたい衝動に駆られた。