逃亡5
熱にうなされながら私は何度も夢を見た。
タカに追いかけられている夢。
タカに思いっきり殴られてる夢
義父に虐待されて必死に助けを求める夢。
母に助けを求めても母から目をそらされてしまう夢。
嫌な夢ばかりだった。
浅い眠りなので、何回も夢うつつに目を覚ます。
やけにリアルな夢で、この夢が現実なのかと思うほどだった。
苦しい・・・
助けて・・・
夢の中で、ずっとそうつぶやいていた。
夢の中でぐらい幸せでいたいのに・・・
私は過去や現実に苦しめられ、夢の中でさえも苦しめられている。
「・・・ん・・・」
顔にまぶしさを感じて、私は目を開けた。
“朝・・・?”
ゆっくり目を開けると、視界には見知らぬ真っ白な天井。
横を見ると窓から明るい太陽の光がさしていた。
少し戸惑って体を起こせば、額から何かがポロリと落ちた。
拾ってみると濡れたタオルだった。
視線をベットの脇に移すと、そこにはベッドに突っ伏して寝ているairさんの姿があった。
airさんのおうちにいるんだと、そこで思い出した。
霞んでいた私の記憶がよみがえった。
airさんの横には体温計、包帯、湿布、水が入った洗面器などが散乱していた。
“ずっと、私の看病してくれてたんだ・・・”
額に乗っていたタオルもまだ湿っている。
先ほどまでずっと寝ないで私の看病してくれてたんだとわかる。
私は涙が出そうなくらいうれしかった。