逃亡1
心臓がバクバク大きい音をたてる。
緊張しながら私はゆっくりと後ろを振り向いた。
振り向いた先には、ものすごく背の高い男の人が立っていた。
「airさん・・・?」
その男の人は照れくさそうに、ゆっくりとうなずいた。
初めてairさんと会った。対面したんだ・・・
何だか不思議な気持ちだった。
airさんは正直顔もかっこよくもなく、かっこわるくもなく普通だった。
だけど全身を優しいオーラみたいなのがゆったりと包んでいるような人だった。
背が高いから余計そう感じるのかもしれない。
airさんは急いで来たせいのか、鼻の頭にうっすら汗がにじんでいるし、上下のスエットに上着をひっかけただけの格好だった。
でも私のために急いで出てきてくれたairさんの気持ちが本気でうれしかった。
airさんは改めて私を見ると、驚いた表情を隠しきれずに見せた。
「大丈夫・・・?」
恐る恐る私に聞いてくる。
私はゆっくりとうなずいた。
だけどどう見てもこの様子は大丈夫とは思われないだろう・・・
「・・・これ着な」
airさんは自分の上着を脱ぐと、私にふわっとかぶせた。
そして私の手をいきなり引っ張ると、駅のロータリーから少し離れた方に私を連れて行った。