逃げる勇気2
「ご飯は食べたの?」
「食ってきた」
「お風呂は?」
「後ででいい。お前先入れ」
そっけなく言うと、タカは隣の部屋に行くために私の側をすれ違った。
その時、タカとすれ違った後から嗅いだことのない香水の匂いが辺り一面に広がった。
いかにも女の人が好みそうなセクシーな大人っぽい香りだった。
私は香水をつけない。
タカは香水をつけるけど、メンズのスパイシーな香りの香水をつける。
何でこんな香水の匂いが濃厚にするんだろう。
タカは満員電車には乗らないから、混雑した電車で香りがつくこともないだろう。
だいいち、ここまで満員電車で濃厚に香りがつくこともないだろう。
私はお風呂場に向かった。
確信する。
絶対浮気だ・・・
そうに決まってる。
数日家に帰ってこなかったのも、きっとどこかの女の人と一緒だったんだろう。
浮気されたのに私は全然ショックを受けなかった。
何とも全く思わない・・・
自分が全くショックを受けていないことにショックを受けて、その想いを吹き飛ばすように勢いよく服を脱ぐ。
そして思いっきり体も流さず、湯船に飛び込んだ。
暴力&お金をぶん取られる、それに加えて浮気までされて、私はよっぽどなめられてるんだろう。
悔しいし、惨めだ・・・
だけどそこまでされてもタカの暴力が怖くて何も言えない。
私は動揺した気分を何とか鎮めて、お風呂から出た。
パジャマに着替えて脱衣場から出ると、怖い顔をしたタカが立っていた。
「ヒィ!」
思わずビックリして悲鳴が出る。
何も考える間も与えずに、すごく強い力でタカは私の腕をつかんだ。
「来いよ!」
そしてすごい勢いで腕をひっぱって、ひきずるように私をどこかに連れて行った。
連れて行かれたのはパソコンの前だった。
そして画面を見るように促される。
「・・・・・・!!」
パソコンには「チャット☆ラブ☆エンジェル」の画面が大きく表示されていた。