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逃げる勇気1
airさんがチャットに来なくなって1週間がたった。
私は相変わらずチャットレディを続けていた。
それは何よりもお金の為だったけど、心の奥では密かにairさんを待っている自分がいる。
午後9時。
晩御飯を簡単に済ませて、チャットで待機してると、
ガチャ!
家のドアが開く音がした。
体がびくっと震える。
タカだ。
タカが帰ってきた!!
タカがこんな時間に帰ってくるのはかなり珍しい。
私は急いでパソコンの電源を切った。
そしてタカがいる玄関までパタパタ走っていく。
「おかえりなさい」
小さな声でつぶやくように言う。
数日間家に戻ってこなかったことに、私はあえて触れなかった。
そんな事を聞いてタカを怒らせたら、又私は殴られるから・・・
「・・・あぁ」
タカは靴を乱暴に脱ぐと、部屋に上がる。
私はチラリとタカの顔を見る。
今日はそんなに機嫌が悪くないらしい。
少しほっとする。
でもここで油断してはいけない。
タカはふとしたことですぐきれるから。
でもそのキレるポイントが私はまだ全然わからない。