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第2話 レニ

 レニは神聖ザンム皇国の皇女として生まれ、陰惨で複雑な権力闘争の中で生きるための知識と技術のみを詰め込まれて生きてきた。


 身を守るための護身術、剣術、敵を知るために暗殺術、毒殺に備えて薬学や医術の基礎も学んだ。

 国を治めるための帝王学、戦をするための地政学、気象学、国内の各地域の特色、特産物、成り立ち、歴史、宗教、奇跡、黒魔道、戦略、戦術、駆け引き、人の心理、宮廷の作法。


 最も大事なことは、それらの知識をどのように組み合わせ、どのように判断を下すか。

 時に長考し、時には瞬時に判断する。

 判断の誤りは死を招くこともある。

 レニに自分の持てる知識を全てを与えた、兄でもあり師でもあった人は、人格的にも能力的にも信頼出来る同志を育てようとしていた。

 

 国を強奪した強大で残忍な敵を倒し、歴史の理を正常な物に戻すために。


 しかし、幼いころから詰め込まれた多岐にわたる豊富な知識も、「世の中」がいかに狡猾で抜け目なく出来ているかまでは教えてくれなかった。

 宮廷育ちのレニとリオは、たびたび金をぼったくられ、物を盗まれそうになり、何度も危ない目に遭いかけた。

 だがひどい目に遭って腹を立てながらも、経験を積み、世の中のことを学ぶことは楽しくもあった。

 何より二人でいられれば、どんな時でも笑っていられた。


 リオといられるなら、どんなことにでも耐えられる。

 そう思っていたのに。


 レニは暗い気持ちで、船に乗る前に通ってきた森林地帯での出来事を思い出していた。



3.


 鬱蒼とした樹木に覆われた広大な森林地帯は、日中も余り日が射し込まず、内部が迷路のように込み入っているため、多数の盗賊たちが住み着いている。

 平時ならばいざ知らず、王権が切り替わったばかりで国の中核が揺れ動いている現在は、官兵の目も行き届かない無法地帯と化していた。


 森林地帯の中にある宿場町は、その町全体が半ば盗賊団と化していた。

 普段は善良な宿の主人も、人買いに高く売れそうな目ぼしい旅人がいれば盗賊の手引きをする。

 そんなことは夢にも思わない二人は、いつも通り宿を取り二階の個室に上がった。


 夕刻、宿に着いた後、リオが一階に食事を取りに行ったが、しばらく経っても戻って来ない。

 不審に思い隠れて様子を伺うと、宿の主人が何人か男を連れて部屋に入って来た。


 一階に下りたリオは、近隣に根城を構える盗賊団にさらわれていた。


★次回

第3話「道中」

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