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100歳の爺、異世界でもう一度人生やってみた

作者: ぴ〜ろん

こんちわ!ぴ〜ろんです。初めての短編に挑戦です!異世界転生したからってみんなヒーローになると思ったら大間違いだよ?って話です。

楽しんで頂けたら幸いです。ではどうぞ。

 ああ……儂ゃよう生きたわ。


 いったい何歳になったのかのう?98歳までは数えたが……それからの記憶はもうヤバいからのう。


 何せもう歩く事も叶わず病院のベッドでただジーッと生きているだけじゃったからの。毎日毎日あっという間に過ぎていっての、ただただ生かされとるのにその事に関して苦も楽も感じんのじゃ。


 息子や孫、曾孫までもが再々会いに来てくれてうれしいんじゃが、もうそれが誰で誰やらもよう分からん。


 儂、死んだ方が良い気がしてきたわい。




『〇〇さん……〇〇さん……、100歳まで生きた貴方に新たなる生を授けましょう。私が作った世界でもう一度生きてみませんか?』


 寝とる儂の上にギラギラとどぎつく光るオナゴが現れたわい。誰じゃ?


「あーあんたぁどちら様で?うちの孫の嫁さんかいの?」


『私の名はアストラギウス。ここより別の世界の女神です。貴方の様な最後まで幸せに生きてきた人の魂を探していました』


「そりゃあご苦労じゃわい。あの世からのお迎えっちゅう事じゃな。じゃがアンタみたいなケバい……ギラギラしたオナゴに送られたら待っとるバアさんがヤキモチを妬いてしまうのう。ふーむ、どうしようかのう?」


『し、知らないわよ!とにかく貴方は私の作った世界に来て!いいわね?それに、私はケバくありませんから!』


「強引な娘さんじゃわい。こりゃ最近反抗期になった曾孫っちゅうのはアンタの事かもしれんのう」


『お爺ちゃーん!行きますよー!』


「そうかそうか、もう逝くのか……それじゃあの………」


『ほんっと面倒臭い爺さんね全く!ブツブツ……』


 ケバいオナゴに叱られながら儂は意識を手放した。




「……よくやった!でかした!」


「立派な男子に御座います!」


「はあ……私の赤ちゃん……」



 ん?なんじゃこりゃ?



 目がよう見えん、身体も動かん。あの世っちゅうのは病院のベッドと殆ど変わらんのかいな!?


「ほぎゃあああ!!」


 な、なんじゃと!?声を出したらへんな声が出た!赤子の様じゃ。


「おお!大きな声で泣くのう!これは余の後継として立派になれる証拠じゃ!真にめでたいのう!」


「国王陛下、おめでとう御座います!」


 ふーむ、儂流石に分かってしもうた。


 こりゃ何じゃ、儂ゃ赤子に生まれ変わったんじゃな。


 それもバリバリ日本人の爺の記憶を残したまま。


 えーっと、前に孫が何やら生まれ変わる話を聞かせてくれよったのう……何じゃったか……むう、爺の頃の記憶じゃからよう覚えとらんわい。


 まあええよ、どうやらさっきのケバいオナゴは神様じゃったんじゃな。何やらメガミとか言いよったし。


 どうやらあのメガミちゃんが儂にもう一度人生をやってみいと言っとるようじゃ。折角婆さんの所に行けるんかと思っておったが……まあええ、これはこれで面白そうじゃ。


 もう一度人生やってみた、じゃな。




 やり直し人生楽しー!……っと思った時期もありました。


 あのさ、爺の続きの赤ちゃんからってさ、地獄だぜ?


 周りの大人達が何言ってるのか全部分かっちゃう訳よ、見た目は赤子、中身は大人と言うか爺さんだから。


 儂の親父さんとお袋さんは良い人だよ。優しいし儂を大事にしてくれとるのが分かるわ。


 だがよ、他の大人はどうよ!


 まー儂が気付いてないと思って好き放題言ってるしやりやがるわ。


 儂のおしめを『まだ放っておいても良いでしょう』と言ってスルーする侍女さん。


 儂の身体に手を当て『ここで死なせた方が儂の野望に近付くのじゃが……』等とほざく髭オヤジ。宰相とか言ったっけ?


『〇〇ちゃーん、ママのオッパイ飲みたいの?んふふふ』と言いながら儂に乳を飲ませる老いた醜女のオナゴ。乳母の様だが……親父さんが手を出さん様に不細工を宛がってるらしい。


 親父さんより儂のメンタルに来るんだがな!


 は?これが普通なの?どんなハラスメント王国なんだよ!?




 あっという間に5歳になった。人間の体内時間と言うのは不思議なもので、今まで生きて来た経験時間分の今の瞬間が体内時間なんだそうだ。


 という事はよ、本来儂が只の5歳児なら今日という日は1年365日×5年=1/1825日なのだが、実際の儂は前世の約100歳までの時間プラス5年間の1/38325日の時間で生きてる。


 分母多過ぎ!これだから一日が一生分の体感時間としてあっという間に過ぎてしまうのだ!


 儂に勉強を教えてくれている者からすると、今の儂は5歳児とは思えない程の集中力と記憶力だと言う事になるらしいが、儂からするとその内容は大体元から知っとるし、一日があっという間なのだから集中というより足りてないだけ。


 朝起きたらめっちゃ腹減ってて、飯食ったら勉強の時間になり、気が付いたら晩飯に遅れてるって感じかな?


 全く満足感を得る事が出来ん!!




 10歳になった。ちいとは背が伸びたが以前より低い目線はやはり気分が悪い。


 どうやら儂はこの国の王とその正室との間に生まれた第一子、この国の皇太子になる身分らしい。


 その辺りは分かる。前世でも日本や一部の国に王室や皇室があったからな。その一子は丁重に扱われていたと思う。


 だがよ、儂の目には周りの大人がどう見ても儂を丁重に扱っておるとは思えん。


 皆儂を目の敵か腫れ物の様に見よるんだ。


 親父さんには他にも5人奥さんがおるのだが、まあ皆一様に儂を目の敵にしよるな。自分の子が凄いと言いマウントを取りに来よる。


 だがよ、儂はこれでも110歳じゃん?実は昔武術の嗜みもあったし若い時戦争にも行ったことがあるからよ。


 悪ぃが地力が違い過ぎらぁ。


 学力は宮廷魔術師より上だし、剣術は特異な抜刀術や体術のお陰で騎士団長とタメを張るぜ。ついでに親父さんの子の中じゃ1番年上だしよ。


 魔法ってのだけは何とも理解が出来ねぇがな。皆呪文みたいなのをモジョモジョ唱えて使ってるが……儂恥ずかしくてよう言わん。


 無理じゃし!




 ある日、親父さんがひとりの女の子を連れて来た。


 どうやら儂の許嫁、らしい。アンジェリカちゃん、4歳。あの髭オヤジの孫。


 む、無理じゃし!髭の孫でアウトな上、4歳て……色々アウトー!


 儂、死んだ婆さん一筋だからよ。ウチの婆さんは若い頃は小町って呼ばれた程の別嬪だったし。白い肌に黒々と濡れた様な長い髪、ちょっと垂れた優しげな目に小鳥の様な小さな口。鼻筋は通っててそりゃあもう歩けば男達が振り向くったらなかったぜ。


 対するアンジェリカちゃんは……ま、まあ可愛いよ?お人形さんみたいでよ。だが……4歳は無理だぁ。


 後な、アンジェリカちゃんはいいんだが、君の爺様がいけないのだよ。


 奴ァ、獅子身中の虫だ。今すぐ斬った方がいい。


 そりゃあ分かってるんだがな、儂生粋日本人なのよ。日本人の美徳は奥ゆかしさだと儂は信じてるんだ。だから……いつ牙を剥くか分からん髭とは言えまだ何もしてない今断罪するのはポリシーに反するんだよなぁ。


 儂が大人になって髭が牙を剥いたその時に何とかしよう。うん。




 14歳のある日、儂に仕えている侍従や侍女達の手で無理やり女と関係を持たされた。


 相手は……あの強烈な乳母だった!


 あ、有り得ん!相手も有り得んが関係を持たされた理由がまた有り得ん!


 アンジェリカちゃんと行為に至った時、上手くいかなかったらアンジェリカちゃんが不敬罪に問われるからだと言うのだ!


 何で!?そんなん2人の問題じゃん!?


 年上の儂がリード出来る為の練習だと言い、数名で身体を押さえ付けられて醜女乳母の女性自身に無理矢理儂のムスコを押し込まれる。


 無理じゃ!勃つかぁ!!


 儂は婆さんと星の数ほどまぐわって来とるし!実は婆さんは夜になるとその清楚な姿が幻かと言わんばかりに変貌するんだ。


 まさに女豹!豹変とは良く言ったものだ!


 結婚当初はお互いを求め合い、その激しさたるや一晩で畳に2桁の『正の字』を書いたもんだ。


 ……早いんじゃないぞ?回数を褒めて欲しい。


 儂ゃテクニシャンだぜ!?ヤレって言われりゃヤルからよ、せめてもうちいと別嬪連れてこいや!


 ……なに?儂が惚れたら不味いからじゃと?知らんわ!どないせいっちゅうねん!!




 18歳になった。親父殿が病気になった。ついこの前まで元気だったのに突然倒れた。


 親父殿の口の中は傷だらけで炎症が起こり言葉が難しくなった。また酷い頭痛に苛まれ、どうやら記憶障害もあるらしい。


 儂はこの症状を知っておるわ。これは明らかな水銀中毒だ。


 急性中毒だから早い処置をすれば何とかなるかもしれん。だが、まだ儂には処置をしたり捜査をする権限はない。まだ儂は只の王位継承権を持つだけの子供だからだ。


「親父殿、儂に王位を継ぐ事を認めさせて下され。儂は親父殿に長生きをして貰いたいのじゃよ」


 儂は親父殿に王位継承権を求めた。まあ言ってみただけなんだが。


「おお……む、むふこよ……ぬしもおとなになったのお……よろひい、そなたを王太子と認めよう……」


 簡単だな!?そんなんでホンマええんか!?


 まあいいわ、これで親父殿をお救い出来る。


 水銀の出処はすぐに調べが付いた。親父殿の執務室とお袋様の控室にあった香炉から水銀が発見された。


 お袋様は香の匂いが嫌いとかで使用してはおらんかった。送り主は5人の側室達からの誕生日プレゼント。親父殿はやはり髭から渡された物で、なんと夜に強くなるという触れ込みだったらしい。


 親父殿よ……アンタも男だな。


 髭の宰相と5人の側室達は王太子となった儂の名の元に蟄居となった。親父殿が快復しなければ全員処刑、快復すれば身分剥奪の上国外退去で許す事にした。


 アンジェリカちゃんとの婚約は破棄されたが、このままではアンジェリカちゃんが生きて行けなくなってしまうので、儂が妹として引き取る事にした。


 アンジェリカちゃんは儂を慕ってくれておったし、自分の祖父の罪を理解しておったからの。せめてもの救いになれば良いと思った。


 髭は泣いて詫びと礼を言っておった。それなら初めからせにゃ良かったのにな!


 親父殿の回復には魔法が使用された。儂は詠唱が嫌いなだけで知識は手に入れている。日本人だった頃の知識でキレーション療法と言う水銀に成分を添加して別の化合物として無害化排出する方法を知っていた。


 流石に難しい成分を製作する事は出来そうにないので、蒸気となって脳に溜まった水銀に魔素を添加し、魔力操作で血液を通して排尿させる方法を取った。


 銀は魔力との互換性が良い。順調に排出は進み、ちいとばかし副作用があったものの親父殿は快復を果たした。


 城の者は驚いた。そんな事をして病気を治すのを今まで見た事がなかったからだ。


 人々は儂を恐れる様になった。




 20になった時、儂は王位を継いだ。ただ、儂はもうこの生活に疲れてしもうた。


 ああ儂、王様とか無理!だって儂日本人なんだもの!


 儂は王を辞める事にした。




 儂は王としての強権を振るい、国中から賢人や知識人を集めた。そしてその者達に儂の知りうる限りの知識を、『共和制』の知識を与えた。


 賢人達は儂の知識に歓喜し、寝食を惜しんで共和制の下地となる法を作った。


 身体を傷めたら元も子もないので取り敢えずちゃんと食って寝ろや。




 その間、儂は城や城下におる名だたる猛将武将達を呼び出し、戦い、その後酒を酌み交わし、武力とは何かを説いた。


 儂はかなり強いので、すぐに武士達と仲良くなった。


『武士道とは死ぬ事と見つけたり』


 皆が守るべきは国家、国家とは人である。その人を守る為死ぬつもりで邁進すれば必ず想いは叶う。それが武士道である、と。


 城の猛者達は歓喜の余り自らの兜を剣で叩き割って儂に忠誠を誓った。


 儂に忠誠はいらんから国を守ってやってくれや。




 それから3年後、儂は王位を市民に返還した。24歳になった所だった。儂を慕ってくれていた賢人達や武士達は泣いてくれたが、おおかたの城の者は儂を白い目で見た。まあ立場が無くなるものは儂が恨めしいだろうし、儂を恐れておった者もおったしな。


 儂は両親とアンジェリカちゃんを連れて郊外に手に入れた土地に移り住んだ。そこで畑を耕し両親とアンジェリカちゃんに飯を食わせた。


 実は儂、狩りも得意。若い時戦地で食料調達係として狩りと食事を担当しとった。戦争は嫌じゃが給仕は好きじゃったの。


 親父殿とお袋様は質素だが笑顔の絶えないこの生活をえらく喜びながら年老いていった。


 そして儂が28歳の時、アンジェリカちゃんが儂の子を生んだ。結局ヤッたんか!?とか言うなし!親父殿とお袋様に頼まれたから仕方なしだ。


 アンジェリカちゃんもそれは美しいレディになったしの。もう4歳じゃないから!年の差6歳だから普通だし!


 婆さんや、これは浮気じゃないからの!安心せい。儂は責任持って、婆さんと同じ様にアンジェリカちゃんを幸せにするんじゃから。




 そうして儂は恐ろしく早く巡ってくる一日一日を大切に生き、両親を見送り、アンジェリカちゃんや子孫に看取られてその生涯を終えた。


 40超えたあたりからもう1年が1週間位で過ぎて行くんじゃもの。


 ちょっと見んうちに息子が成人しちょったし。孫が結婚しちょったしの。


 何やかんや儂90まで生きたしの。まさか200年まで行くんかと思うたわい。




 そして、またキラキラしたケバいオナゴが儂の上におる。


 メガミちゃんじゃな、久しいのう。


『貴方……なんでもっとスキルやチートを発揮した一生を生きなかったの!?わざわざ異世界転生させたのに、それも王族に転生だったのに無駄にしたし!』


「は?儂割と幸せに生きたつもりじゃぞ?親の臨終にも立ち会えたしアンジェリカちゃんも立派になったし、子孫の中には儂らに倣って政治家になったのもおるしの。充分じゃ」


『いやいやいやいや!もっとバーンと派手にやって良かったのよ?アンタの他の転移者とかもう好き放題やってるわよ!まあ1人は数百年引き篭ったし1人は人間辞めちゃったけど……』


「阿呆!それなら絶対儂の方が幸せじゃったね!あの無垢なアンジェリカちゃんをちゃんと女豹に出来た時点で儂自分のテクニックは本物じゃと実感したわ!」


『馬鹿!そう言うチートは要らんし!まあいいわ!貴方もう1回人生やり直ししてみなさいよ!今度はチートな人生を生きるのよ!』


「……いや、儂はもうええよ。儂は婆さんに逢いたいんじゃよ。アンタメガミじゃったんじゃろ?儂を婆さんの所に連れてって欲しいんじゃよ」


『いやーそれは無理かなぁ』


「な、なんじゃと!?アンタメガミじゃろうが!」


『それがさ、貴方が元いた世界ってさ、凄ーく格が高くて私のチカラは介入出来ないのよね。連れて来るのがやっとなのよ。だから貴方の魂をそっちに流すのはちょっと無理かも……』


「な、なんじゃと!?巫山戯るなぁこの駄女神がぁ!!」


『あーっ!駄女神って言ったし!!』




 これは、700年間余りもの間他国から自国を守る為だけにその武力を振るい、法と民主主義によって国を繁栄させた超大国を作り上げた伝説の賢王のお話。


 そして、日本人は転生しても多分日本人なんだろうなってお話。




 おしまい。

爺様、まさかの伝説になってた!


やっぱ異世界は最高ですね!はー異世界行きたいなぁ!


面白かった方、是非評価をよろしくお願いします。次回作へのモチベーションとさせて頂きます。ご感想などもお待ちしてます。当方お返事書くのが趣味です。


それでは、次回作までごきげんよう!

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