俺の幸せのために
何か変わりたい。
そうだ、これが俺のやりたいことで、この世界への心残りだ。
ずっと思ってきたことを叶えるには絶好のきっかけが、今ここにあるではないか。
世界が終わるというお告げ。
なぜ俺だけに聞こえたのか、ずっと疑問だった。
でももし、それが俺のためだとしたら?
どこの誰だか知らない神的な人が、俺の願いを叶えるために教えてくれたのだとしたら?
都合の良い考えなのはわかっているが、別に良いだろう。
俺はこの世界で生きたいように俺の人生を歩みたいんだ。
これくらいの夢、かなえたって別に良いだろう。
俺の人生、か。
残された時間はあと25分。
いつもならデスクに向かって仕事をしているが、今日の俺は会社と反対方向に歩いていた。
感情のまま、やりたいように。
きっとこの歳でやって良いことではないのだろう。
でも、この衝動はもはや自分自身でも止められないくらい大きくなって心の中を渦巻いていた。
初めての感覚だ。
こんなに自由な世界があるとは。
歩きたいように歩ける。
こんなことが幸せに感じたのは、いつぶりだっただろうか。
ささいなこと、当たり前のことでも、失いたくない幸せ。
しっかり意識しておかないと忘れてしまいそうだが、もう俺に失っている暇などない。
どうせこの人生ともあと少しでおさらばだ。
なら、俺は自由に動かせてもらう。俺の幸せのために。