表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

俺の間違い

チセは元気だろうか。

俺のことなんか覚えていなくて良いから、チセの心が笑える世界で生きていてほしい。


もう会うことはないのだし確認なんてできないが、俺がこの世に生み出してしまった命なのだ。これぐらい責任を持たせてもらっても良いだろう。


俺の記憶の中のチセはよく笑う女の子だった。誰にでもすぐに笑いかけて、おかげでいろんな人に愛されていたと思う。


そんなチセを抱えているだけで俺もこの世界に愛されているように感じた。

俺がこの世に生きている意味を感じられたほんの少しの間だ。


その頃はサヨコも忙しそうではあったけれど当たり前のように笑っていて、それが何よりの幸せだった。


そんな幸せを当たり前に感じて、欲張ってしまったのはいつからだっただろうか。


もう思い出せないくらい過去のことになってしまった。


俺は俺自身の幸せを求め始めて、家族よりも自分を優先してしまったのが間違いだったのだろう。

いつの日からかチセが寝た後にサヨコと口喧嘩をすることが増えていって、喧嘩以外で口を開かなくなってしまった。


俺の隣から家族がいなくなっていって、そんなことに気づけもしなかった俺は独りよがりな幸せを追求し続けた。


家族が離れていく悲しみや苦しみをほかの幸せで上書きして、必死に目をそらし続けてきた。


今だってそうだ。結局家族に会いたいくせに気づかないふりをして、何でもない、充分幸せだと思い込んで。


本当は家族のことを愛していたなんてこと、今更気づいても遅すぎる。

失ってから気づくなんて本当に俺はバカみたいだ。


大人になってから気づかないふりだけ上手くなって、俺は何がやりたかったのだろうか。


どうしてあの時自分の寂しさを受け入れられなかったのだろう。

どうして離婚の話にうなずいてしまったのだろう。

どうして、どうして。


思えば俺は後悔ばかりで出来上がっている。


昔から俺のことばかり恨んで、俺は過去の俺が大嫌いだった。

何か別の未来が待っていたのではないかと、いつも考えてしまう。


意味がないなんてことは嫌というほどわかっている。

それでも、何か変われたら良いのにとずっと思ってきた。


何かきっかけをつかめれば。

俺自身の気持ちに素直になれたら。

世間体とか確率とかプライドとか捨てて、少しでも動ける人間だったら、何か変えられたのではないか。

社会に生きる俺ではなく、俺の世界に生きる俺として。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ