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世界の終わり通告

 ―この世界は、あと30分で終わるよ。―


突然頭に流れ込んできたのは、世界の終わり通告だった。

これを人は神のお告げだとでも言うのだろうか。確かに、どこかの話に合ったようにこの声が俺以外の人に聞こえている様子はない。


会社の昼休みも終わりが近づき、あわただしく戻っていく社員たちに紛れて、俺はこんなよくわからない声を聞いた。


この世界が終わる?意味が分からない。こんな冴えない会社員相手にドッキリを仕掛けるとは思えないし、そもそも人類に頭に直接声を聞こえさせる技術があるなんて聞いたことがない。


大体、もしもこの声が本当だとして、この世界がどうやって終わるというのだろうか。世界が終わるということは地球がなくなるということか?隕石でも降ってくるならわからないでもないが、そんなSFのようなことは起こらないだろう。


ドッキリでもなければ、事実でもないとはどういうことだ?いっそ神のいたずらとでも言ってしまえば楽なんだが、それこそ意味が分からなくなってしまう。


ではやはり隕石でも落ちてくるのだろうか。念のためスマホでニュースを確認してみたが、そんな情報は出てこなかった。

近くに人は大勢いたが、こんなことを聞いて少しでも目立ったらただのモブが変人に降格してしまう。


いや、別に世界が終わるなら降格しても問題ないのではないか?


もともと俺に大した地位があるわけでもないからたとえ世界が終わらなくても大丈夫だろ。きっとどこかで生きていける。


そうと決まれば、あとは何をするか決めるのみだ。変人扱いされたところで俺にそんな趣味はないし、もっと奇想天外なことをしてやろう。


と言っても、奇想天外なことってなんだ?犯罪に手を染めるというのも違う気がするし、今から30分でできることなんて限られている。お金も今はほとんど持っていないし、家や銀行に取りに行っていたらそれだけで半分以上の時間を使ってしまうことになる。


こんなことを考えている間にも時間は過ぎているのだから、早く行動に移したほうが良いのだろうが、あいにく今までなかった行動力というものが急に生まれるわけもなく、何か良い案を思いつけるわけでもなかった。


もっと簡単なことでも良いから、早く行動に移さなければ。


何かやり残していたことはなかっただろうか。行きたかったところとか、会いたい人とか、なんでも良いから。


そんなことを急に考えても、やり残したことなんて何も…いや、一つだけあった。


俺にはずっと会えてない子供がいる。前の妻のサヨコと離婚してから、俺は引っ越して一人で暮らしていた。離婚自体は話し合って前から決めていたことだったし、もともと俺に結婚なんて向いていなかったのだ。


誰かのために生きるなんて、俺にはできない。だから後悔はないが、一つ気がかりと言えば子供のチセだった。チセは当時まだ小さかったから、父親はいなくてよかったのか、悲しんでいないだろうかとずっと心の隅で思っていた。


でも俺から会いに行けるわけもなくてあきらめていたから悩み自体を忘れかけていた。


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