「第3回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」参加作品シリーズ
オーパーツを解明せよ
「第3回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」参加作品です。
作家先生と雪だるまの助手ジョッシュの日常。
今回のキーワードは「オーパーツ」でお楽しみください。
「これが今回遺跡から発掘されたオーパーツです、教授」
「おお……古代人が使っていたという。たしか、カセットテープというのだったな」
一見ただのゴミにしか見えないが、この物体にあらゆる音源が詰め込まれていると言われている。
あの時代にそんな技術があったとは到底思えないが……まさにオーパーツ。
今回、ほとんど損傷がない完全な形で発見出来たのは実に幸運だった。
「このオーパーツの仕組みが解明できれば、古代音楽史にとって快挙ですね」
その通りだ。あの大断絶によって失われた古代の音楽を甦らせることが出来たなら……名声は思いのままだ。
仕組みはわからないが、構造を見れば想像は出来る。おそらくこの穴に指を入れて回すことで音が再生されるのだろう。ふふふ、実に古代人らしいアナログな造りだ。
「……音が出ませんね」
「回転数が足りないのだろう。もっと早く回してみてくれ」
「うおおおおおお……ぐぁっ!? 指がつりました……」
まったく近頃の若者は鍛え方が足りんな。
「貸したまえ、私がやってみよう」
――――ポキッ!!
……くっ、指を骨折しただと、まだだ、まだ私には指が9本残っている。
たとえ指が折れても、心まで折れたと思うなよ!!
いやまて、親指は入らないから残り7本だ。訂正しよう。
しまった、冷静になったら痛みが……!? これがかの有名な『孔明の罠』なのか?
さすがはオーパーツ。一筋縄ではいかないということ。
消えかけていた情熱の焔が再び燃え上がるのを感じる。
「――――という話を書こうと思うんだがどうかなジョッシュ?」
俺は雪だるまの助手ジョッシュに意見を求める。
「……面白くないです」
「そうか……私もそうじゃないかと思っていたんだ」
俺は超売れっ子作家だ。現在四本の連載を抱えている。
先日出版社から、オーパーツを題材にした新作を打診されたのだが、いまいち気が乗らない。
「そもそも、いまどきオーパーツって……あんなもの、ほとんどがねつ造か説明がつくものばかりじゃないか」
若いころは夢中になったものだが、現実を知った今はすっかり醒めてしまった。
「そうでもないですよ先生。探し求めていたものが、実はすぐそばにあるなんてよくある話です」
なるほど青い鳥か。俺は作家失格だな。反省せねば。
「ちなみに、私のコアは現代のオーパーツと呼ばれています」
「ジョッシュ、コアって何?」
「ハハハ、心臓のことですよ。カッコいいでしょ?」
なんだ心臓か。ハハハハ……は?