05
「ふぁぁぁぁー...。」
結局、夜空の逃避行を途中で止めて、行き当たった断崖絶壁の岩肌の窪みに体を落ち着け、眠りに付いたのだった。
初めての場所で、初体験なことが山程あったお陰で疲れ切っていたのか、何の問題もなく熟睡できたらしい。
目覚めは、ありえないほどすっきり。
標高が高いせいか着込んでいても肌寒いが、幼女のため体温が高いのか、それほど気にならない。
若さ、最高ーっ!
「ぬるま湯...お!出た!!」
お水だと少々冷たすぎると思って、ぬるま湯を指定してみたら、思い通りの温かい水球が目の前に現れたので、美味しく頂く。
そして、女神『ヤヨイ』に貰ったポーチ内を漁って、本日の朝食セットを取り出して食べる。
なんと、女神『ヤヨイ』は、意識をブラックアウトさせた私に魔法のポーチを持たせてくれたのだ。
ーーーーー
夢と希望に溢れる『精霊魔法の使い手』様へ
この手紙にいつ気付いてくれるかワクワクしながら、書いてます!
貴方のいた地球と比べると、かなり過酷な環境となっていますので、時間経過なし!容量無制限!の魔法のポーチを進呈します。
失くしてもいつの間にか戻ってきてくれる優れものですが、残念ながら、使用者制限を付けましたので貴方しか使うことはできません。
貴方が寿命を迎えるとき、一緒に消えて無くなってしまいますので、後世に残したいものは取り出しておいてくださいね?
いつ、どこまででも、あなたの活躍を見守っていますので、思う存分、遠慮なしに、はっちゃけてください!
楽しみにしています。
地上へ直接関与が出来ない可哀そうな女神『ヤヨイ』より
ーーーーー
こんな手紙まで添えて。
この手紙を読む限り、女神様って、ただ見守っているだけの存在ってことなのかな?
間接的なら関与できるって、深読みしていいのかしら?
死んだはずの私が未来時間の地球にいる時点で、『間接関与』になるんだろうなーとは思うけど。
この魔法のポーチ。手首に装着するタイプで、腕時計並みの大きさなのだ。
自然にそこにあって、最初全く気付かなかった...。
元々、腕時計を付ける習慣あったしね?
普通に腕時計として時間を刻んでいたしね?
気づかないでしょっ!!
この小さな魔法のポーチには、一日三食換算で三十日分の食料が詰まっていた。
とりあえず、飢える心配はないけど、この状況を予測していた...?
準備に余念がないのか、行動が読まれているのか、どっちだろう??
約一か月分の食料があるのは嬉しいし、衣服も大量に(無断で)貰ってきたので、困らない。
困るのは、今後の方針。
何処へ行くのか?が焦点となるはず。
他の街へ行ってみても良いし、住みやすそうな所に拠点を作ってみても良いし。
確かに夢は広がる。
同時に不安も広がるけど。
「どうしようかなー...。避難所的なものを作っておくと気が楽かもだけど、範囲が日本本州だしなー。広すぎでしょっ!」
独り言を呟くくせが抜けきっていないのだが、思考を纏めるのには有効的なので、ついついやってしまう。
うーうー唸りながら、美味しく朝食を完食。
あれ?
体は小さくなったのに、食欲増えてない?
......ま、まぁ、そんなこともあるだろう。
昨日のビルが見えないくらいには遠く離れた場所まで来れたらしい。
それであれば、この付近に仮拠点を作って周辺の探索でも良いかな?とも思う。
また街に入って自由を奪われるのは嫌だし。
異世界じゃないけど、折角の未知の世界だしね。
「岩山...。石造りの家って、夏は涼しいのよねー。冬は寒いけど...。」
水やお湯は出せた。
空も飛べた。
岩って掘れるのかしら?
あー、でも、家具とか造りたいから、取り出せると良いのかな?
「うーん、このくらいの範囲?をごっそりと...取り出しつつ、周囲の岩を圧縮して固めて崩壊を防ぐっ!」
危ない危ない。
ただただ取り出すだけでは崩落に繋がってしまう。
しかし、思っただけで思い通りの現象が起こってくれるのは良いなー。
ファンタジーで攻撃魔法とか言われているのより、全然使い勝手が良い!
女神様に感謝だね。
一度周囲を探索して、岩山の大きさとか、野生動物の有無とかをざっと確認。
湧き水まで染み出てる場所があったので、その近くで再度、本格的に住処造りを開始した。
果物とかも成っている木があったし、ブルーベリーっぽかったので、恐らく夏間近なのだろう。
トマトっぽい赤い実もなっていたし、恐らく地中にも野菜類がゴロゴロしているはず。
近くを流れる川には魚までいたので、食料に困ることもないと思う。
食べられる魚か否かは分からないけど、恐らく殆どの魚は食べられる?食べちゃいけない川魚っているのかしら?
生魚は、スーパーに並んでいる切り身しか分からないわ...。
そもそもが、料理しなかったしね!
コンビニ最高!
スーパーの総菜コーナー超最高っ!
「住みやすくて、快・適・空・間っ!前世?では成しえなかったいっえづっくり~っ!!うふふ。うふふふふっ。」