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02

 ざわざわ。という物音と複数の囁き声で目を覚ました。

 そんな状況において私は、『あぁ、また寝起きから始まるのですか?女神様?』と、少々恨めしい気持ちで一杯だった。


 今回は、直接起こされている訳ではないので、うっすらと目を開けてみる。

 ふわふわの真綿に包まれるような暖かな真っ白い何かに包まれ、少し離れた周囲は一周するように半透明の白いレースで覆われている。

 って、これって、天蓋ベットじゃない!?いや、知らないけど、きっとそう!!

 真上を見ると、一言格言が彫り込まれていた。


 『知らない天井だ...』


 あぁ、そうね。

 過去に何人もの現代人が転生しているのよね!?

 こんな仕込みがあっても可笑しくはないよね!?あれ?可笑しいんじゃない?だって、人類滅亡の危機を救うべく派遣されたんじゃなかったっけ!?


「失礼いたします。聖女様。お目覚めでございますか?」


 白いレースの向こう側から、男性の声が呼び掛けてくる。


「......。」


 あれ?私って『聖女』じゃないよね?

 女神様、『精霊魔法の使い手』って言ってたし。おや?伝わってないの!?いやいや、『神託』とかないのかな?私の時代、なかったけどさ!?

 えっ、あれ?私、なんて出ていけばいいの!?

 『聖女』じゃないんです。『精霊魔法の使い手』なんです。って自分で言わなきゃいけないの!?


「...お加減がよろしくないのでしょうか?もし、よろしければ、お水をお持ちいたしますか?」


 いえいえ、お加減はよろしいのです。

 状況がよろしくないだけで!!


「...あの。」

「はい?如何なさいましたか?聖女様。」


 随分と高い声が出た。

 しかも、聞いたことのない声だ。

 起き上がって自身の体をチェックしてみると、そこには見たことのない真っ白なパジャマが。

 あれ?女神『ヤヨイ』とお茶をしていた時って、何着てたっけ?真っ白ではなかった気がするのだけど...?


 いやいや、現実逃避は止めよう。

 凹凸のまったくない肉体に、水を簡単に弾いてしまえそうなぷにぷにのお肌。私の意志通りに動く小さなおてて。

 一体、何歳まで若返ったの!?確かに、赤ん坊よりは全然良いけどさっ!?


「もしかして、あ、合言葉、とか、い、りま、す...?」

「合言葉、でございますか?...過去の伝承には、凡そ半数の方が同じお言葉を仰られたとあります。私もお聞かせ願えるのですか?」


 至って真面目そうな声で、こちらを揶揄っている雰囲気はない。

 というか、テンパって何てことを聞いているんだ!?私っ!!

 そして、普通に返さないで欲しい。どうしていいか分からないではないかっ!


「ごめんなさい。なんでもないでしゅ。パジャマっぽいので、何か羽織るものをくだしゃい。」

「これは気付かず失礼いたしました。こちらをどうぞ。」


 既に用意済みだったのか、すぐに白いレースの間から、これまた白いガウンが手渡される。

 天蓋ベットもお布団もパジャマも真っ白。唯一の色は、天井に刻まれた格言の黒のみ。

 私の肌も髪色も、純日本人に相応しい色合いなのに。

 何故、白で統一した!?誰だ!?こんな白黒の世界になるべく仕込んだのは!?


「あ、ありがとうございましゅ。」


 仕方ないので、お礼を言って受け取る。

 ガウンを羽織って天蓋ベットから脱出すると、そこはだだっ広い和室にぽつんと置かれた天蓋ベットの他、何もなかった。

 いや、声を掛けてくれた男性がいるだけだった。

 うん。白いのは、この天蓋ベット内だけだった。良かった良かった。


 男性は、落ち着いた声の割には若い風貌だった。青年と言っても良い年齢かもしれない。声から想像して、もっと年配の人を想像していたのに。

 なんなら白髪のセットかと思ったのに。良い具合に裏切られた感じだ。

 ひょこっと畳の上に裸足で降り立つと、ずるずると引きずってしまいそうなガウンの裾を持ち上げる。


「皆様。地上にご降臨される際は凡そ事情を把握されていらっしゃるのですが、お分かりでございますか?」


 にこやかな表情のまま、再び質問してくる青年。

 正座して座っているのに、視線の位置が一緒って、私どれだけ小さいの!?


「事情というのが何処みゃでの内容かにもよりゅますが...?しちゅれいっ、し、ちゅ、れ、い、し、ま、し、た。」


 何故かカミカミ。さっきからだけど、なんか喋りにくい!!

 確かに、緊張しているけれどもっ!なんで、こんなに噛むのよ!?

 さっきから可笑しいとは思ってたけど、ちょっと噛み過ぎで、何言ってるか自分で分からなくなってきたぞ?


「え、えぇ。お疲れの様子ですね。まずは、お過ごしになるお部屋へご案内させて頂きます。歩けますか?」

「ありゅけましゅっ!!」


 手は自由に動かせたのだから、歩けないはずがない。

 そんな思い込みから動こうとして速攻でコケた私は、目の前にいた青年にお子様抱っこをされて天蓋ベットの部屋を後にしたのだった。

 パッと見イケメン風だったけど、抱っこされて近くで見るとよりイケメンだった。

 顔のパーツが整っているというのは、きっとこういうことを言うのだろう。


 あまりジロジロ見るのも失礼なので、部屋を出てからは外の風景を楽しむべく目を向けたのだが、高級なホテルっていう感じだった。

 窓から見える高さ的には、三階~四階くらいだろうか?

 周りには一階建ての家しかなく、全てが見下ろせる感じで街並みが広がっている。

 全体的に、先程の部屋みたいに『純和風』ということは全くない。

 というか、むしろ、そこだけ畳敷いて和風にしました。みたいな印象を受ける。まぁ、天蓋ベットなんてものが置かれてたけどね。はっはっは。







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