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短編小説集

アサシン勇者~ターゲットと思い暗殺した相手は魔王で、更には勇者と間違われてしまった~

作者: 属-金閣

【毎週水曜の新作短編投稿】の第三弾です!

「領主も殺し領地も手に入れ、十分な戦力に領地の奴隷達、そしてこの屋敷。これで私も遂に! 十大魔王入り間違いないな!」


 王座の椅子に踏ん反り返り、高笑いをしていると、大広間の扉を突き破って部下が投げ飛ばされてきた。


「っ!? 何事だ!」


 今まで踏ん反り返っていた者は、勢いよく立ち上がり吹き飛ばされてきた部下に訊ねるが、部下は既に動かなかった。

 すると、そこへゆっくりと歩いてくる人物が現れる。

 その人物は目元を仮面で隠し左手には、また別の部下の頭を掴み引きずって来ていた。


「侵入者だと? おい、何をしてる! こんな人間如きに侵入されるとは、何事だ! ましてや勇者でも何でもない奴に!」

「騒いでも無駄だ。もうお前の指示を聞く奴はいない」

「どう言う事だ!」


 問いかけに仮面を付けた人物は、手に握っていた部下を投げ捨てた。


「それは俺……答える必要はない。あぁ、ターゲットは見つけた。……大丈夫だ、きっかり時間内には終わらせる」

「貴様、さっきから何を一人でぶつぶつと話してい――ぐぅっ!?」


 直後仮面を付けた人物は、問いかけて来た相手の喉仏を片手で抑え込んだ。

 そのまま力を入れ、手前に引き相手を地面へと倒し、相手背にまたがると相手の顔を後ろから押し付ける。

 すると仮面を付けた人物は、腰元からダガーを瞬時に抜くとためらいなく押し付けた相手の喉を裂いた。

 相手はそのまま動かなくなるが、仮面を付けた人物はもう一方からも喉をダガーで切り裂いた。


「……念には念を」


 仮面を付けた人物は、完全に相手が動かなくなった事を確認すると相手から離れる。

 そして片耳裏に付けた通信機に手を当てた。


「ターゲットの沈黙を確認、これより離脱する。状況を頼む」

「『――ぐ――に――て』」

「? ノイズがひどくて聞き取れない。もう一度頼む」


 通信機を軽く叩きもう一度訊き返すと、通信相手から再び返事が来る。


「『すぐ――る――れる――れて――カオナシ』」

「俺のネームしか全然聞き取れん。何が言いたいんだ、ナビ?」


 再度訊き返すも、次は返事もなかったので、そのまま来た道を戻り始めようとした時だった。

 大広間に大勢の人達が押し寄せて来た。


「覚悟しろ魔王! 今日ここで俺達はお前を倒す!」

「たとえ勇者が来なくとも! 私達全員なら貴方に勝てるはず!」

「何が魔族だ! 何が魔王だ! 所詮は十大魔王にも入ってない、まがい物の魔王だ!」


 突然現れた村人達? に俺は姿を見られてはマズいと思い、瞬時に姿を隠そうとした。

 が、背後から異様な殺気を感じ隠れるのを止め振り返った。

 するとそこには先程完全に喉を裂いて殺したはずのターゲットが立ち上がっていた。

 生きてた? いや、二度も喉を裂いて人間がいているわけない。

 だとしたら、魔法? いやそんな事どうでもいい。

 要は殺し損ねたという事だ。このままでは依頼未達成で報酬金も出ずに終わって俺もナビも困る。

 ならやる事は一つ、奴の息の根をもう一度止める。


「よぐもぉ……喉を裂いてくれたなぁ! 人間如きが!」


 するとターゲットの姿が黒い靄で覆われて行き、人の姿から肌は黒く禍々しい翼や角が生え、顔も悪魔の様に変わる。

 大広間にやって来た人々は、異形な姿に怯んで動けなくなり、後ずさりする者もいた。

 だが俺は、そのままターゲットへと突き進み、ダガーへと手を伸ばす。


「同じ事をさせるわけないだろうが! それに貴様、見た所魔法も使えない奴隷以下じゃ――ぐぅはぁ!」


 俺は手に取ったダガーをたぶん魔法で弾かれてしまうが、武器はない訳ではないのでそのまま一気に距離を詰め、勢いのままみぞおちへ目掛け拳を叩き込んだ。

 相手はよろめいたので、そのまま右肘でターゲットを突き飛ばす。


「どう言う事だ!? 何故私に奴隷如きの攻撃が当たるんだ! 私は序列は低いが魔王なのだぞ!」


 ターゲットは訳の分からない事を言いながら、近くの王座を破壊し破片が周囲に散らばるのを俺は見つつ、距離を再び詰める。

 その瞬間に、足元に転がって来た王座の破片を手に隠し持った。


「私が傷を負う事など、あるはずがないのだ!!」


 と、自身の前に魔法陣をいくつも展開し始めたが、そんな事で俺は足は止めず魔法陣を越え、先程隠し持った破片をターゲットの心臓目掛けて突き刺す。

 しかし、奥まで刺さらずターゲットは動きを止める事はなかった。


「無駄だ!」

「そうか。なら、場所を変える」


 丁寧に意味がないと教えてくれたので、俺は足元に偶然転がっていた破片を足で蹴り上げる。

 直後俺は軽く飛び足を振り上げ、宙に浮いた破片に振り抜きつま先で捕らえる。

 そしてターゲットの額目掛けて破片を叩き込む。

 ぐにゅっと破片が額に入り込む感覚があり、俺はそのままターゲットを蹴り倒した。

 その時点でターゲットは言葉を発しておらず、意識を失っている様な感じだったが先程の様にまた起き上がるかもしれないと思い、額に突き刺さった破片と胸の破片を更に奥へと殴って突き刺した。

 胸が異様に硬いな。いつの間に防具を入れたんだ? それに魔法なんて使える事前情報はなかっと思うが。

 その後、ターゲットは黒い灰となって消えて行くと、同時に村人達が歓声を上げた。


「おぉぉー! あの魔王を倒した!」

「凄いわ! でも、あの人は誰なの?」

「そんなの決まってるだろ! 勇者様だよ、勇者様!」

「でも遠征には来ないって言われてなかったか?」

「勇者様が駆けつけてくれたんだから、細かい事はいんだよ! 俺達を助けてくれたんだから、今はあの勇者様を称えるんだよ!」


 すると村人達は「勇者! 勇者! 勇者!」と声を上げ始めるが、俺は何の事だか分からず首を傾げた。

 勇者? どこにそんな奴がいるんだ? そんな事よりマズいな……あの人らにターゲット暗殺現場を見られてしまった。

 あの時咄嗟に殺気を感じてしまって、つい報酬金の事を考えて動いてしまったが、良くない状況だ……いっそ、皆殺すか?

 俺がそんな事を考えていると、大広間に顔見知りの女性が息を切らしてやって来た。


「あちゃ~遅かったか……」


 あ、ナビ。そうだ、この距離なら通信出来るそうだし、訊くか。


「『ナビ聞こえるか?』」

「『カオナシ、良かった無事で。状況は?』」

「『あぁ、ターゲットは無事沈黙。いや、消滅? した。だが、それを目の前の人々に見られた。どうすればいい? 名前は分かってないと思うが、殺すか?』」

「『いやいや、さすがに無関係な人を巻き込むのはダメ! それに正体はバレてないし、幸い勘違いしてくれてるみたいだから、ここはあえてそれに乗るのがいいわ』」

「『ナビがそう言うならそうしよう。今までナビの提案で失敗はないしな』」

「『私への信頼高過ぎでしょ』」

「『相棒へは普通の事だろ?』」

「『っっ……恥ずかしい事をさらっと言わないでよ』」


 その後、ナビが村人達へと何か説明した後、俺とナビは何故か魔王を倒した勇者とその仲間として村へと招待された。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「では、私達はこれで失礼させて頂きます勇者様」

「分かった」


 そして村の者達は、俺達の居る空間から出て行きやっとナビと二人きりになった。

 直後ナビは大きくため息をつき、ピンとしていた背をだらっとさせた。


「はぁ~~つっっかれた~~まさか、ここまでもてなされるとは思ってなかった」

「勇者と言うのは凄いな。こんなにも感謝されるのか。その魔王? とか言う奴を倒すと」

「リュート、もしかしてさっきの話聞き流してた?」

「ミチル。俺が長い話、長い言葉が苦手なの分かるだろ? そう言う事だ」

「全く。少しは世界の状況を知っときなさいよ」


 そう言って、ナビことミチルは俺に対して世界の常識を改めて話し始めた。

 この世界には、勇者と魔王が何人も存在している。

 その訳は、何千年もの前に勇者と魔王が戦い敗れた魔王が、世界にその力をバラまきそれを受け継いだ者達が今魔王と名乗っているのだ。

 そしてそれに対抗し、人々は勇者の力を様々な形で受け継ぎ能力が覚醒した者、また勇者としてふさわしい人を勇者と呼んでいるのである。

 しかし、現代においてどちらもその数は数百いるとされており、勇者も魔王もそこへ力の優劣を付ける為に序列を設けた。


 その結果、現勇者・魔王に一番ふさわしいとされている者が序列一位となり、戦いを続けている。

 また序列十位以内に入る者は、強大な力を持つ者として一目置かれているのだ。

 魔王側はどのように序列管理されているかは分からないが、勇者側は勇者機関と言う所が仕切っており、各地の魔王討伐依頼なども受け付けており空いている勇者を派遣する機関でもある。

 だが、引き受けるかどうかは勇者側に託されている為、報酬金や立地などで受けない勇者もいると言われている。


「と、まぁ簡単に言うとこんな所よ。分かった、リュート?」

「ん? あぁ、聞いてたぞ。バッチリだ」


 俺は無表情で右手の親指を上げて反応したが、ミチルは小さくため息をついた。


「(ダメだ。なるべく簡潔にしたつもりが、結局は長話になってしまった。て言うか、どっちにしろリュートはどんな状況だろうと興味を持たないか)」

「それで、これからどうするだ?」

「ひとまず夜までここで勇者のふりをして、その後とんずらする。正体がバレて捕まるのも嫌だし、本物の勇者が来て面倒事になるのもごめんだからね」


 そう言ってミチルは、目の前に出されたお菓子を手に取って口へと運ぶ。

 確かにミチルの言う通り俺達の正体がバレたら大変だ。

 俺とミチルはコンビで裏の仕事を請け負って、報酬を貰い生活している。

 主な仕事は汚れ仕事で貴族相手への盗みや偽装工作、そして殺しだ。

 役割分担としては、ミチルが情報収集やナビゲーターとして立ち回り、俺は実行役だ。

 仕事中は、互いの本名は口にせずにネームで呼び合う。

 俺はいつも顔を隠しているので、カオナシでミチルはナビ。

 ある意味そのままの呼び名であるが、互いにそれがしっくり来るのでそう呼び合っている。

 後もう一人情報屋としての相手がいるが、基本的に一緒に行動してないので今もどこにいるかは知らない。

 そこで俺はある事に気付き、ミチルに問いかける。


「そう言えば、何で俺が勇者って呼ばれてるんだ?」


 すると、ミチルが軽く椅子から落ちそうになり、物凄く呆れた顔を向けて来た。


「あのな~それも村人達が何度も言ってろ。お前がターゲットだと思って処理したのは、魔王だったんだよ。しかも話を聞く分に魔王の中の序列的に十位に近かった奴」

「マジか」

「やっと状況を理解したのか」

「それじゃ、まだターゲット処理出来てないって事か。こんな所でのんびりしてる場合じゃないな」


 俺は直ぐに立ち上がると、ミチルに強く掴まれた。


「何してるんだよ、このままじゃ報酬金もらえないだろ」

「いや、そうじゃなくてだな。はぁ~もうちょっとこっちに来い」


 そう言われて俺はミチルの近くへ寄ると、小声で話し出した。


「お前が相手していたのは、間違いなくターゲットだったが、あれは魔王が本人の顔に擬態してたんだよ。本物は、別室で死んでるのを私が見た。たぶん魔王やその部下にやられたと思うけど、むごい死体だったよ」

「なるほど。ターゲットはもう処理されてたのか。で、俺はそのターゲットを処理した相手を処理したと?」

「そ。リュートにしては理解早いじゃん」

「だから、あんなに変な手ごたえだったのか。まぁ、何にしろ依頼は達成してるって事だよな」

「まぁそうなるけど、リュート魔王倒してるのにそこはそんなに関心ないんだね?」

「ん? あ~魔王ね。俺に処理される魔王何だから、どうせ強くかなったんだろ。魔王は勇者にしか倒せないんだろ」

「別にそう言う訳でもないけど……ま、いっか。そもそも、そいつが本当に魔王だったかも怪しいし」


 そんな会話をしていると、誰かが扉をノックして来た。


「勇者様、今よろしいでしょうか?」

「たぶんこの声、村長よ。いいリュート? 話は私が進めるから、リュートは会話ぜずに決めた言葉だけ言えばいいから」

「分かった。たしか、『あぁ』『その通りだ』『分かった』『任せろ』だよな?」

「うん。私が指示したらそれを言って。それ以外は何も答えずにいればいいから」

「任せろ」


 ミチルは「頼んだよ」と言って、ノックして来た相手に返事を返した。

 するとへ部屋にぞろぞろと村人達が入って来た。


「急に大勢で押し掛けてしまい、申し訳ありません勇者様」


 俺はミチルの方に視線を向けると、軽く頷いて来たので返事をした。


「あぁ」

「それで、どう言った用件なの?」


 と、ミチルが問いかけると何故か村長はムッとした表情をしたが、俺だけに視線を向けて話し始めた。


「この度は私どもが住む領地を救って頂き改めて感謝いたします。それで今回は勇者様の力を見込んで、一つお願いをしたいのですが、よろしいでしょうか」

「すいません村長さん。私達も暇ではなく、次の依頼がありますので個人のお願いを聞いているじ――」

「私は勇者様に聞いているのだ! 貴様などには話してないわ!」


 突然話していた村長がミチルに対し感情をむき出しにし、ミチルも驚き黙ってしまう。


「申し訳ありません、勇者様。身勝手な事とは分かっているのですが、勇者様にぜひ救って頂きたい村があるのです」

「……」

「ここから1日程で行けるガゲンド村と言う場所なのですが、そこには私達をいつも気遣ってくれた可愛い可愛いフェリスがいるんです」


 フェリス? 誰?

 俺はもう一度ミチルに視線を送ると首を横に振ったので、黙ったままでいるとミチルが口を開く。


「あの、すいません。先程もいいましたが、私達は」

「勇者の金魚のフンが、黙っとれ! 私は勇者様と話していると言っているだろうが!」

「誰が金魚のフンですって?」

「え~い、その者を黙らせておけ」


 すると村人たち数人がミチルを捕らえて、口を塞ぎ始めた。

 俺はそれを見ていてが、あれ位ならミチルでも大丈夫だろうと思い冷静に視線を送っていると、例の合図が送られ来たのだ。

 頷いたって事は俺に話せって事か。

 まぁ、あの状態じゃ直ぐに話せないだろうし、俺に言えって事だな。

 そう俺は思い、ミチルに頷き返し村長の方へと視線を向けた。


「(あれ? 何か違った意味で伝わった? その目線は助けてくれるんじゃないの!? いやそれよりも、話的にリュートが話すとマズイ!)」


 ミチルは何やらもごもごしているのが視界に入ったが、俺は「まだ手間取ってるのか」くらいにしか思っていなかった。


「それで勇者様、どうか私達の可愛い可愛いフェリスを救っていただけないでしょうか?」

「あぁ」


 そう俺が答えると、村人達は大きな歓声を上げた。

 おい、一言だけでそんなに盛り上がるのか? 変な村人達だな……


「流石は勇者様。もしや、既にフェリスが連れ去らわれた地にも魔王が居るとご存じでしたのですか?」

「その通りだ」


 すると先程よりも更に大きな歓声が上がり、村人達は「さすが勇者だ」「だから言ったろ受けてくれるって」「遂にフェリスを取り返せるのか」などとぶつぶつと話している者達もいた。

「勇者様に対してそんなに大きなお礼も出来ませんが、フェリスを助けて頂けたならば出来るだけの報酬をお渡しさせて頂きます。それと、これは今回の報酬分と私達の依頼を受けて頂ける報酬分です」

 そう言うと、後ろに控えていた村人が机の前に袋に山の様に入った銅貨を差し出して来た。

 銅貨だが、こんなにあると銀貨20枚分くらいするじゃないか?


「もしフェリスを救って頂けたなら、更に二袋お渡しさせて頂きます」

「分かった」


 俺は報酬金を出されたので、これはいつも依頼と変わらないと思いその場で勝手に承認してしまう。

 ちょうど依頼も終えたばかりで、次の依頼も決まってない。

 いつもミチル任せにするのも負担がかかるし、ここで代わりに受けた事でミチルを楽させられるな。

 そう思い俺はミチルの方を軽く見ると、物凄く何か言いたげな顔をしていたが、俺は感謝しているなと思い込み村長へと視線を戻した。


「では改めて勇者様、ガゲンド村にいるフェリスの救出お願いいたします。そこに住まう魔王は、序列三位のジャンジェック・ポラン・ティストニーと言われておりますので、どうかよろしくお願いいたします」

「任せろ」


 そして村人達は大歓声を上げるのだった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「おい、いつまで膨れてるんだよ、ミチル」

「ずっとに決まってるでしょ! 何で勝手に受けちゃうかな……まぁ確かに私が言った通りに行動した結果なんだけど、受ける必要ないでしょ」

「いや、報酬金もあるし次の依頼としていいかと思って」


 ミチルは再びため息をつく。

 そして歩きながらミチルは「内容考えろ」と、片手でツッコみを入れて来たが俺は反射的にその手を掴んでしまう。


「人の救出だけなら、今まで受けて来た依頼内容に比べれば難易度は低い方だろ。そんなに怒ることないだろ。それに内容のわりに報酬金もそこまで悪くない」

「私が気にしてるのはそこじゃなくて、今から行く場所にいる奴だよ。魔王序列三位だよ!? その意味分かってる?」

「危ないんだろ。だが、別にそいつの処理じゃない。ただそいつが支配してる領地から対象を救出するだけだ。お前と俺ならそれくらい問題ないだろ」

「近付くこと自体が危ない事なんだが。見つかったら命はないぞ? 逃げるなら今しかない。誰も見てないし、しらばっくれても問題ない。死んだら何の意味もないんだよ?」


 いつになく真剣な表情で訴えてくるミチルに俺は足を止めた。


「そんな命がいくつあっても足りない様な、危ない依頼なんて放って置いて逃げようリュート。私達は勇者じゃないし、冒険者でもなく、ただの日陰者だ。命あってこその人生だろ?」


 ミチルはそう言って俺に手を差し出して来た。

 が、俺はその手を掴まずに上から手を乗せて、ゆっくりと下ろさせた。


「悪い。もう報酬金も受け取ってしまったし、依頼を受けたのは俺だ。最後まで俺はやるよ。受けた依頼はどんな事だろうと必ずやり切る。それがルールだろ」

「っ……」

「今回は相談もなく俺が勝手に受けた依頼だから、ミチルは好きにしていいぞ」


 そして俺は再び歩き始めるが、ミチルはその場で止まったまま少し俯いていた。

 俺はそのまま一人で歩き続けていると、急に後ろから片腕を掴まれて引っ張られる。

 振り返ると、そこにはミチルが俺の腕を掴んでいた。


「ミチル?」

「私も行くよ……チームだし、私が勇者の振りをしようと言った結果だし」

「そうか。ありがとうミチル。実を言うと、ミチル無しでどうしようかと考えていた所だ」

「全く、私達は持ちつ持たれつでしょ」

「そうだな。頼むよミチル」


 俺が掌を突きだすと、ミチルはいつもの様にそこへ拳を軽く突き出して来た。


「やるからには手は抜かないわよ。ただし! 今回は潜入、一般人ぽく振る舞うこと。そして、こっちから手は出さないこと」

「了解。仮に対象が捕らえられていたら、戦闘になる可能背があるがどうする?」

「そこはリュートに一任するわ。でもそれが魔王だった場合は撤退よ。一度偶然倒してるとしても、あれは例外。勇者でもない人が魔王に勝てる分けないし」

「魔王序列三位のジャン、ん? ジェン? ジェスキーだっけ?」

「ジャンジェック・ポラン・ティストニー。魔王の顔なんて知らないけど、多分リュートなら雰囲気で分かると思うわ。強い奴が放つオーラ的な何かを感じとれると思うから」

「なるほど、そのジェング……いや、ジャン? あ~もうジジでいいや。ジジは物凄い強いから見れば分かるってことだな」

「そう言う事。それじゃ、ガゲンド村? に着くまで細かい作戦を決めようか。あ、その前に、そのフェリスさんがどう言う子か分かる物貰った?」

「あぁ、似顔絵だけ貰ったぞ」


 そんな会話をしながら俺とミチルは、ガゲンド村へ向けて歩き続けた。



 ――ガゲンド村、そこには大きな屋敷が存在し、屋敷には領主が住み村人達からも尊敬されている人物であった。

 しかし、数カ月前に領主は気ままに現れた魔王によって殺されたしまう。

 それからは、その魔王がガゲンド村を支配しふらっと立ち寄っては村人達をおもちゃの様に遊び、脅しては金を脅し取ったり、他の村や街から美人な女子を誘拐させたりしていた。

 村人達は逃げようにも逃げても見つかり、殺されてしまうと見世物にして恐怖を植え付けていた。

 いつしか村人達は外に極力出ず、魔王に目を付けられない様に命令には全て従い、暮らしていたのだった。


「と言う村らしい。ほぼ人がいないし、魔王のせいなのかいつもこの村周辺は曇天で、空気も重い。一応貰った似てるか分からない似顔絵を元に探したが、そんな人は見つからなかった」


 俺は村を上から一望できる山の中で、偵察を終えて戻って来たミチルから話を聞いていた。

 そしてミチルからフェリスの似顔絵を返してもらう。


「そもそも、それが本当に似顔絵なのかと言う問題もあると思うよ。子どもが書いたような絵だし」

「そうか? 服の色とか髪の長さとか色とか分かりやすいと思うがな」

「それだけだと似てる人もいるでしょ。もっと顔の特徴とか、人探しするなら写真くらいあると思うのだけど」


 俺は改めて似顔絵を見たが、髪は長く桃色で服はドレスぽい感じと分かるので「これでも十分なのでは?」と首を傾げ、そのまま似顔絵をしまった。

 そして視線を村の屋敷の方へと向けた。


「となると、ミチルの情報から居そうな場所はあの屋敷だけか」

「屋敷の周辺だけには、やたらと人がいてね。警備していると思うけど、抜け目はあるからそこから侵入は出来るよ」

「でも、あからさまにあそこに魔王ジジが居るって事だろ?」

「ジジって……まぁ、リュートの言う通りあそこが魔王が住み着いている所よ。だけど、どうやら最近は別の場所に行っているらしく、屋敷には不在って言う噂よ」

「じゃ、今が忍び込み時だな」

「そうね。近くに使い魔は待機させているから、途中までのナビは任せて。屋敷内での行動はリュートに任せるけど、約束は守ってね」


 そう言ってミチルは耳裏に付ける通信機を渡され、俺はすぐさまその場で耳裏に装着し、通信状況をミチルと確認する。


「通信良好。それじゃナビ頼む。約束の事は任せとけ」


 俺はそのまま屋敷へ向けて移動を開始した。

 その頃屋敷内の大広間では、髪は長く桃色の一人の女性が鎖に繋がれて小さな牢屋に投獄されていた。

 牢屋ないの女性は何とか鎖を外そうとジタバタとしていたが、外す事は出来なかった。


「くっ……魔法も使えないし、魔道具も回収されてしまって何とか自力で脱出するしかないのだけど、外れない」


 その後も誰もいない大広間で一人脱出しようとしていると、大広間に二人の兵士がやって来る。


「何をしている? 脱出しようとしても無駄だぞ。人間なぞに破れる物じゃない」

「ましてや、力も封じたお前なぞには絶対に無理だ」

「(……面倒なのが来たわね。でも、あいつが居ない今しかないのだから、構ってる暇はないわ)」


 彼女は見下す様に笑う兵士二人を無視し、鎖を外す事に集中する。

 すると突然大広間の空間が歪み、割れるとそこからタキシード姿の男が出て来る。


「ん? お前ら、何こんな所で油を売ってるわけ?」

「い、いや、決してそんな訳は……」

「音がして見に来たら、この女が脱走しようとしていて」


 そう言うとタキシード姿の男は牢屋の方へと視線を向けた。


「おやおや、まだそんな無駄な事をしているのかい? ティリス王女」

「何で貴方がここに?」


 ティリスはタキシード姿の男を見て、顔を真っ青にする。


「それはもちろん、意味のない招集が終わったからだよ。全く誰の序列を上げるとか、無駄な会話ばかりで詰まらなかったよ」

「(魔王序列三位、ジャンジェック・ポラン・ティストニー。ずっと屋敷内に籠っていて、二日前に出て行ったと思ったらもう帰って来るなんて早過ぎる)」

「ん~? 俺が早く帰って来て不服かな? あ~もちろん他の奴らには、君の事は言って来てないよ」

「いつまでも余裕ぶってられないわよ! 私を攫っておいて王国が黙っている訳ないわ! 必ず勇者様が来るわ」


 するとタキシード姿のジャンジェックは、笑いを堪える。

 その姿を見てティリスは声を上げる。


「何がおかしいの! 貴方が魔王序列三位だろうが、所詮は勇者には勝てない。うちの王国には勇者序列二位の方もいるのですから」

「は~……いつまでお嬢様気分なんだ? 力もない、周辺諸国からの信頼も失ってるお前を勇者機関が助けに来るわけないだろ。しかも序列二位? ないない、夢見過ぎなんだよ」


 そう言ってジャンジェックは高笑いをする。


「こんな田舎の村に勇者序列二位なんて来ねぇよ。例え勇者が来たとしても、見習いや新人くらいだよ。序列上位の奴は、そんな暇じゃないんだよ」

「っ! そんな事ないわ! あの勇者様なら私も助けに来てくれるわ。だって、約束したのだもの」

「その自信は、代々受け継ぐ勇者の秘めたる力でも譲渡する約束でもしたか?」

「どうしてその事を」

「それは――」


 と、ジャンジェックが口を開くと同時に、突然大広間の扉が勢いよく開き武装した数名が武器を構えだした。


「そこまでだ! ジャンジェック!」

「! 貴方は!」

「もう安心して下さい、ティリス王女。この俺、勇者序列七位のジーンが助けに来ました!」

「ちっ、面倒な事を……」


 ティリスはジーンの登場に表情を明るくする一方で、ジャンジェックは顔を歪めた。

 ジーンのパーティーは、ジーンを含め六名で全員が男性で構成されており、勇者序列上位の中でも爆発力は一番高いと言われている。

 するとジャンジェックの部下である二人の兵士が武器を手に取り、ジーン達を威嚇し始める。


「今すぐ立ち去れ、勇者共!」

「ここが何処か分かっているのか!」

「そんなの分かって来てるんだよ! 雑魚兵は引っ込んでろや!」


 そう言うとジーン達は一斉に兵士達へと突撃し、力で圧倒し武器を弾いた後兵士達を扉の方へと投げ飛ばすと、最後に魔法を放ち撃破する。


「よっしゃー! どんなもんだい!」

「雑魚をぶっ倒すのはやっぱり最高だわ~」

「まじスカッとするわ。おいまだいねぇのか?」


 ジーンの仲間達は各自に思う事を口にしていると、ジーンがジャンジェックに近付き武器を突きつける。

 が、ジャンジェックはピクリとも動かずにジーンを見下す様に見つめる。


「さぁ、ティリス王女を解放しろ」

「勇者ジーン。来てくれたのですね」

「もちろんですよ、ティリス王女。俺は勇者ですよ? いち早く名乗りを上げて、駆けつけたんです」

「ありがとうございます、勇者ジーン」

「ティリス王女、もしここから俺が救出をしたらティリス王女が持つ、勇者の秘めたる力を俺に託してくれませんか?」

「えっ……そ、それは」

「出来ませんか?」

「……はい。申し訳ありません、それは出来ません」


 そう答えた直後、何故かジーンはジャンジェックに向けた武器をゆっくりと下ろした。


「ど、どうしたのですか勇者ジーン」

「いや~何か急にやる気がなくなったて言うか、飽きたな~って」

「何を言っているのですか!? 目の前には魔王序列三位のジャンジェックがいるのですよ? そのままでは殺されて――」

「殺されませんよ」


 ジーンは急に声を荒げて、牢屋の方へと視線を向ける。

 その顔はジャンジェック同様に、人を見下し愉悦に浸っている表情であった。


「何ですか、その顔は?」

「まだ分からないんですか? そんなんだから、あんたは誘拐されても誰も助けに来ねぇんだよ! 少しは自覚しろよ、偽善王女!」


 直後、ジーン達は大声で笑い始める。


「失礼な事を言わないで下さい!」

「どこが失礼なんだ? どれも事実だろうが! もしかして、自分が誘拐されたのは序列二位のあいつと親しいからとか、秘めた力がやばい物だと思ったか? 違う違う! ちょっとした予行練習さ」

「どう言う、意味ですか?」


 ティリスが問いかけると、ジーンが答える前に後ろに立っていたジャンジェックが、ジーンを蹴り口を開いた。


「いつまで俺の前でペラペラとしゃべってるんだ、邪魔だ! 下がれ、人間の協力者の分際で調子に乗るな」

「ちっ、こまけぇ事気にするな。まぁ、こっちは恩恵も貰ってるし言う事には従ってやるよ」

「協力者? どう言う事ですか! 勇者ジーン」

「あぁ? そのままの意味だよ。俺は魔王序列三位のジャンジェックと協力関係を結んだ。勇者なんてやってても全然いい事ねぇし、金も少ない、女はもっと序列が高い奴を好むし、もう飽き飽きしてたんだ。そしたらそこに、ジャンジェックが面白い提案して来たから、手を組んだんだよ」


 その言葉にティリスは全身の力が抜けてしまう。

 そして絶望した顔を見て、ジーン達が面白がって笑い始める。


「(嘘よ……勇者が魔王と手を組むなんてあり得ないわ。世界を苦しめる魔王と手を組むなんて、人々を裏切っている事じゃない。そんなのあり得ない、あってはならないわ!)」

「いや~ティリス王女の父親も滑稽だったけど、娘も同じく滑稽だな。父親は騙されて良かれと思って人々から金を搾取しては、別の国に渡して、世界の為だと分け与えていたんだってな。いや~馬鹿過ぎでしょ? そりゃ、信頼もなくすし暗殺もされるしょ。しかも、その跡取りで娘が王女になるが硬い考えて理解は得られないうえに、お嬢様気質で偽善者と来た。こりゃ、市民からも信頼されねぇし誰も助けに行こうとは思わないわ」

「お父様を侮辱するな!」

「お~こわっ。でも、少し半べそでそんな事言われたら、怖さ半減でちゅよ~あははははは!」


 ティリスは無意識に涙を流し始めており、それを見たジーン達は腹を抱えて笑う。

 ジャンジェックはジーン達の下品な笑い声に興が冷めたのか、ジーン達の方を冷たく睨み一度その場から離れ奥の別室へと消えて行く。

 そして大広間には、ジーン達の汚い笑い声だけが響き渡るのだった。


「(こんな人が、こんな奴らが勇者であってはいけない! あの人が言った通り、勇者は腐り始めていたんだ!)」

「お、何だ? その反抗的な目は。鎖でつながれて何も出来ねぇのに、まだそんな目が出来るのかよ! 図太さだけは一番だな」

「お~似てるな……お前がフェリスか?」

「っ!?」


 突然の事に、周囲の皆は驚き俺の方を見て固まっていたが、俺は気にする事無く牢の中にいる似顔絵に似ているフェリスに問いかけた。

 だが、驚いた表情をしているだけで何にも返事がなかった。


「お~い、聞こえてるか? フェリスかどうか聞いてるんだが」

「わ、私?」

「うん。ここに女性はお前だけだしな。で、どうなんだ?」

「私はフェリスじゃないわ」


 その返事に俺は手に持っていた似顔絵を牢の横に置き、見比べた。


「え、違うの? 特徴的には似てると思ったんだが、これはナビの言う通り似ている人がいたって事か……残念」


 俺はそこでため息をつき、別の所を探そうと肩を落としてその場を離れようとしたが、隣に居た知らない奴に肩を掴まれた。


「おい待て。お前いつどこから来やがった?」

「は? そんなの空いてるドアから入って来たんだ」

「嘘を言うな! 俺達に気付かれず牢の前まで来れるわけないだろうが! お前何者だ!」


 そう言って急に俺を突き飛ばすと、他の男達が俺の周りを囲った。

 遠目でフェリスだと思って、気配を消して近付いたがまさか偽者とは……本物ならあの場で全員気絶でも何でさせれば良かったんだが、違うとなると面倒事を増やして騒がれる訳にもいかない。

 ミチルに相談しようにも、また通信機の調子が悪いと言う展開。

 とりあえず相手さんと言うか、この屋敷の使用人? 用心棒だが知らないけど、物凄く俺を警戒してるな。

 ここは、ミチルに言われた通り一般人としての演技をして見逃してもらうか。

 来る前に一般人の演技もミチルに仕込まれたから、完璧なはずだしな。


「おい黙ってないで、何とか言え!」

「俺は今日からここに配属された使用人なんだよ。だから、よく場所も分からなくて」

「男が使用人? 補充兵じゃなくてか?」

「え、あ~そうだったかも……俺長い話とか苦手て覚えられないんだよ」

「ジーン、確かにあいつの補充兵って考えればさっきの気配を気付けなかったのも納得かと」

「そうかもしれないが、こいつはどう見ても人間だ。あいつが擬態出来る奴をわざわざ補充兵として連れてくるはずがない」

「そ、そう言わればそうだな……」


 何をこそこそと話してるんだ? やっぱりさっきの間違いで疑われたか?

 俺は使用人と答えてしまった事を後悔していると、俺の肩を掴んで来た奴が再び口を開く。


「よし、お前が本当に補充兵って言うなら俺達と戦え。ここの補充兵なら俺達より弱いはずだしな」


 そう言うと周りの男達は何か悟ったのか、不気味に笑い始める。

 男に囲まれ急に笑い始められて、俺はさすがに気味悪くなったが、ここで変に疑われて騒ぎになるよりは戦って一般人と思われた方がいいと思い首を縦に振った。


「合意も出来たし、早速ルールだがこれから俺達がお前に連続で攻撃を仕掛ける。あ、魔法とかじゃなくて拳や足でな」

「なるほど。で、俺はどうすればいいんだ? 避ければいいのか?」


 その発言に男達は大爆笑する。

 何故笑う? それくらい俺には普通……あ、そう言えば前にミチルにもそんな事普通出来ないって言われたな。

 そうか、こういう時一般人はやられないといけないのか。

 確かに前に居る奴ら、体は鍛えているみたいでそこそこ力はあるみたいだし、ここは一般人として見られるための行動をしないとな。


「やばい、やばい、腹が、腹がよじれる、あははっはははは!」

「避ければいいのか? って、何真顔で言ってるんだよこいつ! やべ~」

「おいお前ら、あまり笑ってやるなよ。新人はまだこっちのルールが分かってないんだから。いいか新人、この戦いはお前の耐久テストだ。俺達の攻撃を耐え切れば合格で、ダメならそのまま帰ってもらう」

「ルールは分かった。それじゃ早く始めよう」

「へぇ~やる気満々じゃん。それじゃリクエストに答えて、スタートだ!」


 そう告げた直後、一瞬で俺との距離を詰めて最初の一人が俺の腹部へと魔法で加速させた拳を叩き込んで来た。


「っげぇ」


 俺はそれを受け宙へと軽く浮くと、そこに次の人物が俺の顎目かけて蹴りを叩き込んで来た。


「ぶっ」


 更に三人目がそこへ飛び掛かって来て、両手を合わせて俺の横っ腹目掛けて振り下ろされた。


「ぐぃぅっ!」


 俺が地面に叩き落とされると、四人目がやって来て先に顔面を蹴られ、その直後に五人目が背後に回り飛ばされた俺の背中目掛け正拳付きを叩き込んで来た。


「がっは!」


 そして最後にとどめを決めるかのように、俺へと近付いて来た奴は右足に爆発魔法を纏い、魔法で加速し俺の顔面へと蹴りを叩き込んだ。

 その衝撃で爆発し、俺はそのまま蹴り飛ばされてしまう。


「おっしゃーー! 決まっったぁ!」

「はい、あいつ無事に死亡確定」

「まじ最高! まじ雑魚魔族最高!」

「あのきったねぇ声聞いたかよ?」

「おいおい、マジで耐えられると思ったのかよ? 魔族ってのは頭おかしいんじゃねぇのか? そんなの無理に決まってるんだろ! 俺達はお前をぶっ潰す為に全力で攻撃したんだからよ!」


 と、ジーン達は高笑いをしているとジーンが牢にいるティリスの驚く表情にニヤつく。


「いや~さすがに王女様には刺激が強すぎたかな~」

「……嘘でしょ」

「? 何言ってんだお前?」


 ティリスは自分の目を疑いながらも、ゆっくりと指をさした先をジーンも視線を向けた。


「おい……おいおい! 嘘だろ! あれ受けて立てるとかバケモノかよ!」


 その言葉に他の仲間達も目の前で起きている光景が信じられずにいた。


「ルール違反してるだろ、お前ら。魔法使わねぇって言ってたのに最初からがっつり使ってたよな?」


 そう俺が立ち上がり何事もない様に体を軽く動かしつつ、蹴られて口が切れた所を親指に拭い振り向くと、男達は震え上がっていた。


「ルール違反はダメだろ? しかもさっきのでジジにでも気づかれたら、どうしてくれるんだよ?」

「お、お前俺の通称を知ってるのか?」

「? え、お前がジジなの?」


 俺はそう言って来た最初に肩を掴んで来た男を見たが、どう見てもミチルから聞いた魔王には見えず首を傾げていると、向こうは何故か慌て出す。


「やばい、俺の事を知ってる奴が俺とジャンジェックが繋がってると誰か伝えられたりしたら、人生終わりだ。それはお前らも同じだぞ」

「っ……じゃ、どうすんだ? あの強さおかしいだろ! 何で立ってるんだよ!?」

「そんなの後回しだ! いいから捕まえろ! 後は、ジャンジェックに頼んで消してもらえればいいんだよ!」

「本当にお前ジジなのか? そんな風には見えないけど……いや、前の時も考えると擬態? してるんだっけ?」


 と、俺が話していると急にジジと思われる人物以外の男達が襲い掛かって来た。

 俺はルール違反された事や、変に音を立てられて目立ってしまった事、そしてジジと思われる人物と遭遇してしまった事が全てごっちゃになり、とりあえず攻撃してくる相手を排除しようと言う考えに至ってしまう。

 それと同時に、俺はある事を思い付く。

 そうだ、さっき受けた攻撃を俺がやって一般人の反応の参考として見るのも悪くないな。

 と、咄嗟に思い付き俺は先程受けた攻撃を魔法は一切使えないので、再現が出来る範囲で向かって来た順に受けた攻撃をそのまま同じように返した。


 最初に腹部に拳を叩き込むと、相手はそのまま気絶してしまう。

 次に来た相手に顎への蹴りを叩き込むと、同様に一瞬で気絶してしまい、そのまま勢いで蹴り飛ばしてしまった。

 三人目には両手を組み合わせ、瞬時に体勢を低くし勢いよく横っ腹に向けて振り抜くと、何かが折れる音がしそのまま相手は泡を吹いて倒れてしまう。

 四人目と五人目は同時に来たので、顔面目掛けて飛び蹴りし蹴り返し、そのままもう一人の背後へと回り背骨目掛けて力一杯の拳を叩き込んだ。

 すると蹴り飛ばした相手は、反対側の壁近くまで吹き飛び拳を叩き込んだ相手は、物凄い海老反りになり前へと気を失い倒れて行った。

 俺はまさかの結果に呆然としてしまった。


 嘘だろ……全然声出さねぇじゃんかよ。

 全く何の参考にもなんなかった……しかもジジの取り巻きの癖に遅いわ、弱いはで散々だよ。

 そこで俺は残ったジジの方へと視線を向けた。


「やっぱり、ジジじゃないだろお前」

「くっ……何なんだよお前! 誰の指示で来たんだ? 魔族だろ? その強さで、人間なはずないもんな!」

「俺は人間で、あ……今は勇者やってる」

「ゆ、勇者だと!? じょ、序列は?」

「序列何か知るかよ……最下位なんじゃないの? いや待て、それを聞くって事はお前本物ジジだな!」

「お、おう。そうだよ。俺が序列七位の通称ジジだ」


 七位? あれもっと上の数字じゃなかったけ? でもマズいな、ジジと出会っちまった。

 ミチルとは逃げる約束してたんだけど、想像以上に強くないオーラを感じるし、ここまでやってしまって逃げると騒がれて探しずらいしな……よし、ミチルには悪いが強くなさそうだし少しだけ寝ててもらう。

 俺はそう勝手に決めて、一瞬でジジとの距離を詰め最後に受けた攻撃と同様に顔面に向けて軽く宙に浮き片足を上げる。


「ジーン・ジョっぶぅ!?」

「え?」


 何か言いかけた所で俺はジジの顔面を蹴り抜いてしまったので、何を言おうとしたのか分からず蹴り飛ばしてしまった。

 ジジが何か言おうとしてたけど……まぁいっか。

 俺は遠くの方で完全に伸びているジジに近付き、意識がない事を確認し大広間から立ち去ろうとすると、通りかかった牢の中から呼び止められる。


「ま、待って! 勇者と聞こえましたが、本当ですか?」

「今だけな」

「名前をご存じ上げずに申し訳ないのですが、どうか私をここから出してはくれないでしょうか?」

「え、嫌だ」

「流石は勇者様で――って、嫌だ!? ど、どうしてですの? 私捕らえられてるのですよ? 勇者様ですのに、助けてくれないのですか?」

「だってお前フェリスじゃないんだろ? すっげー似顔絵に似てるけど。俺はフェリスの救出を言われて来てるの。じゃぁな」

「いや、ちょっと待って下さい勇者様! も、もしかしたらそのフェリスさんが捕らえられてる場所に案内出来るかもしれません」

「本当か?」

「えぇ、ジャンジェックは多くの人を攫っていると聞いています。そして大半は地下牢に閉じ込められているらしいのです」

「なるほど。地下か……誰だか知らんが情報ありがとう。じゃ」

「ちょっと! どこに行くのですか!」

「何処って、地下へ行く道探しに」

「どうして私を助けて下さいませんの? 情報教えましたよね?」

「お前が勝手に話したんだろ?」

「そ、それは……とりあえず! お役に立つ情報を教えたのですから、助けて下さい勇者様!」


 あ~めんどくさい奴に絡まれてしまった。

 このまま騒がれるのも嫌だし、適当に牢壊して行くか。

 俺は渋々目の前の牢へと手を触れようとした時だった、背後の方から異様な殺気を感じ振り返ると、見知らぬタキシード姿の男が立っていた。


「おやおや、何やら騒がしいと思って来たらどう言う状況ですか? 見かけぬ顔もいますし、貴方はどちら様?」

「俺はこの屋敷に補給兵として来たんだ。道も分からずに歩いていたらここについて、人も何故か倒れてるし、この人には絡まれるわで困ってる一般人だ」

「なるほど。我が屋敷の補給兵ですか。それも人間の」


 タキシード姿の男は、俺をゆっくりと覗き込む様に近付いて来た。

 その男は不気味な雰囲気を纏っていたが、何もしてくる様子はなかったので俺も変に思われない様に無防備に立ち尽くしていた。

 すると後ろの牢から自信満々な声が聞こえてくる。


「ジャンジェック、覚悟しなさい! 貴方の前にいるのは、ジーン達を瞬殺した勇者様よ! 私をいえ、貴方達を倒しに来たのよ!」

「ほぉ~勇者ですか。見た事のない顔に、気の抜けた感じでそう言う風には見えませんが」

「それは貴方の目が節穴なのでは?」

「確かに、人間の協力者をほぼ無傷で倒したと言うのは本当みたいですし、ティリス王女の溢れ出る自信から言っている事は本当なのでしょうね」


 何の話をしているか知らないが、タキシード姿の男に今背を向けたら突き刺されそうな感じがして動けん。


「貴方、名前は?」

「カ……いや、リュ……これもダメだ。言えない」

「なるほど。名無しの勇者ですか……とりあえず死んでもらいます」


 直後俺が予想していたのとは少し違った、俺の心臓目掛けて貫手を目にも止まらぬ速さでやって来た。

 だが、俺は反射的にその手を掴んでいた。


「っ!? 俺の攻撃を止めた?」

「服装に似合わず穏やかじゃないな。と言うか、急に何するんだ」


 俺はタキシード姿の男に離れてもらう為に、軽く蹴り掛かろうとする相手は自分から距離をとった。


「なるほど、このジャンジェック・ポラン・ティストニーの攻撃を初見で防ぐ辺り、かなりの実力がある勇者ですね」

「ジャン……何つった? 何かジジ的な名前だったけど、お前もジジの部下か?」

「ジジ? 知らない名前ですね。誰かと勘違いされてるのでは?」


 そう言うと直ぐに俺の真横へと移動し、首元目掛けて貫手を再びして来た。

 俺は瞬時に反応し、背後へと避ける。


「何だか知らないけど、お前俺を殺そうとしてるな」

「はい、もちろんです。だって貴方は勇者なのでしょ? なら、殺すほかに選択肢はありまえん」

「なるほど。ジジがやられて部下がお怒りってやつか。殺しに来てるって言うなら、こっちも本気でやらないと殺されるからな」


 そして俺は右手をそっと腰に回し、瞬時にタキシード姿の男との距離を詰めた。

 すると相手もまさかの速さに驚いていたが、俺はその場でダガーを抜き相手の首元目掛けて振り抜く。

 が、完全に切り裂けず切り傷程度となり魔法で吹き飛ばされてしまう。

 ちっ、ダダの部下の方が強そうじゃないかよ。

 さて殺し合いになった以上、時間を掛けてられないさっさとけりつけるか。

 俺は周囲に倒れている男達が持っていた武器を見て、周囲を見渡し真上に大きなシャンデリアがある事に気付く。

 そして俺は短刀と短い斧、そして煙幕弾を手に取りいきなり煙幕弾をタキシード姿の男に投げつけた。

 だがタキシード姿の男はそれを魔法で弾いたので、俺は短刀で煙幕弾を破壊し周辺を煙で覆う。

 しかし煙幕は一瞬で、タキシード姿の男の魔法によって消し飛ばされてしまう。


「目くらましなど無っ!? どこだ!?」


 一般人にとっては意味がないと思わる事かもしれなかったが、俺にとっては一瞬でも姿を消せるのであれば十分であった。

 俺は宙へと飛び上がりながらタキシード姿の男の背後へと回っていた。

 そのまま気付かれる前にダガーで刺し殺そうとしたが、さすがに上手くは行かず気付かれてしまい距離をとられてしまう。


「貴様、その動き常人じゃないぞ。だが、だいたいもう分かった。貴様から目を離す事はもう」


 と、タキシード姿の男が話している瞬間に、シャンデリアが天井からタイミングよく切り離されて頭上に落ちたのだった。

 その付近には牢があったが、牢なら壊れないだろうと思い俺は宙に浮いた時に、シャンデリアの付け根目掛けて短い斧を投げていたのだ。

 そして、わざと背後をとり自分から距離をとらせたのだ。

 最初の時に自分から距離をとっていたので、タキシード姿の男は相手の攻撃に警戒し慎重に動くと考え、それを使い今回の作戦を実行した。

 本命に当たって良かった。

 ダガーは予備だったがさっきのでヤレても問題はないし、仮に別の方へと避けられてももう一度詰めて、シャンデリア落下地点へ誘導すればいい話だったし問題はない。

 俺はその場でシャンデリアの下敷きになり見るに堪えない姿になったであろう、タキシード姿の男を確認しようと思った直後シャンデリアが吹き飛んだ。

 そしてその下からは、人の姿をギリギリ保っているが肌の色が紫で悪魔の様な顔に角などを生やした人物がいた。


「貴様ー! よくもやってくれたな!」


 俺はそれを見ても動揺せずに、天井目掛けてダガーを投げた。

 だが、相手はそんな事気にせずに俺に怒号を上げていた。


「今ので人の姿が使えなくなった! この代償はお前の体で払ってもらうぞ!」

「何、その格好最近流行ってるのか?」

「この姿を見ても同様しないという事は、既に魔王を倒してるのか。だが残念だったな、俺はその辺の魔王とは違う!」


 その時だった、頭上から俺の足元に投げたダガーが振って来て地面に刺さった。


「聞いて慄け! 俺は魔王序列三位、ジャンジェック・ポ――」


 直後、天井に刺さっていた短い斧が相手の脳天に突き刺さると、相手はそのまま地面に倒れるのだった。

 そして俺は地面に突き刺さったダガーを抜いて、タキシードを着ていた相手へと近付き、至る所の急所をダガーで刺し抉りを繰り返すと、突然灰の様になり消えてしまうのだった。

 やっぱりこいつも、あいつと同じで仮死状態だったのか。

 でも頭上の斧に見事に当たるとは思ってなかった。

 当たればラッキーとは思っていたが、俺もしかして今日超運いい?


「凄い……あのジャンジェックを倒した……しかも無傷で」


 凹んだ牢の中でティリスが目の前の光景に驚愕していると、大広間にミチルがやって来た。


「あ~何だろこのデジャブ感……」

「あれ、ナビ? どうした?」

「どうしたじゃない。またつながらなくなったし、中なら凄い音が探しに来たんだよ」

「何か調子悪くてな。て言うか、一人で来たのか?」

「いや、ここに凄い強そうな勇者を名乗る奴らが入って行ったから、こっそりと後ろからついて来たの。で、そっちは何してるの?」


 と俺はミチルに問いかけられたので、今までの状況を説明した。


「なるほど。色々言う事はあるけど、この女どうするの?」

「あ~フェリスじゃないし、ほっといていいんじゃない」

「いや、出してよ!」

「え?」


 ミチルがそう言圧すると、少し言葉使いを変えて「出して下さい」と言っていた。

 するとミチルが小声で話し掛けて来た。


「情報貰ったなら出して、案内してもらえば? 屋敷に詳しんじゃないの?」

「なるほど。了解」


 そして俺が牢を蹴って壊し鎖も持っていたダガーで強引に壊した。


「ありがとうございます、勇者様」

「それはいいから、早く地下の場所知ってるなら案内してくれ」

「それよりも、見知らぬ勇者様は素晴らしい力をお持ちなのですね。あのジャンジェック・ポラン・ティストニーを無傷で倒すなんて」

「ジャン……あ~ジジの事ね。あそこで倒れてる奴だろ?」

「いえ、倒れているのは勇者序列七位のジーン・ジョッグです。そして先程のタキシード姿だったのが、魔王序列三位のジャンジェック・ポラン・ティストニーです」

「……え? いや、違うだろ?」

「いいえ、違いません。先程魔王の本来の姿になり、禍々しい姿だったのがジャンジェック・ポラン・ティストニーです」


 俺はゆっくりとミチルの方を見るが、ミチルは察していたのか頭を抱えため息をついていた。

 その後、俺は助け出した相手から全ての説明を受けた。


「ていう事は、あんたはティリス王女って言うここから離れた国の王女で、攫って来たのがダダとあそこで寝てる勇者だっていうのか?」

「オーラで気付くだろ」

「いや、そんな凄そうな感じじゃなかったんだよ。確かにさっきの変な姿は凄かったけど、前の奴と姿も似てたからそんな感じもしなかたって言うか……」

「それも仕方ないかと、擬態している魔王は本来の力などを隠していますし、見破る事は難しいです」

「ほら~ティリスもこう言ってるだろ」

「こっちはもう滅茶苦茶だっての」


 するとティリスが改めて俺の名前を聞いて来た。

 それに俺はどう答えようかと、ミチルの方を見ると考えてくれたのか口を開いた。


「彼の名前は、アルバート・サペロニール・シティルンド・ンジャガッド。先日勇者になったばかりです」


 なっが……覚えられねぇ。

 いや、覚える必要ないのか、この先使わないし言う事もない名前だしな


「アルバート・サペロニール・シティルンド・ンジャガッドと言うのですね。しかも先日勇者になったばかりで、ジャンジェック・ポラン・ティストニーだけでなく他の魔王も倒すとは、凄いです!」


 もう名前で分けわからん。

 俺はそこで既に聞く気になれず、適当に「そうですか?」と返した。


「アルバート・サペロニール・シティルンド・ンジャガッド勇者様と言うのは、いささか言いずらいですね。略称などあるのですか?」

「え? いや~ないと思うよ」

「では、よろしければ私が考えても?」

「いいけど、それ考えたら地下に案内してくれ」

「分かりました。そうですね……! ひらめきました! 各名前の頭文字を取って、アサシンはどうでしょうか? 呼びやすくもなりましたし、いかがですか?」

「アサシンか、確かに俺でも覚えやすい」

「おい、そんなの何でもいいから早く地下に行くんだろ」


 ミチルの言葉に俺もハッとなり、すぐさまティリスに案内をし始め移動しようとすると、突然大広間に完全武装した集団が現れる。

 次は何だよ……

 すると一番後ろから、いかにも勇者言うオーラを纏った人物が現れティリスの名を呼ぶ。

 ティリスもその相手の顔を見て表情が明るくなる。

 俺はミチルに小声で話し掛ける。


「誰?」

「確かあのザ・勇者って言う感じは、勇者序列二位のデンバード・ヴァ―テックスだよ。たぶん私が屋敷に入る時に後ろ付いて来た人達だと思う」

「ティリス王女、無事でしたか?」

「はい、こちらの勇者様のお陰です」

「そうでしたか。ありがとうティリス王女を救ってくれて。それで、君の名前は何だい?」


 そう問いかけられると、何故かティリスが答えるのだった。


「彼はアルバート・サペロニール・シティルンド・ンジャガッド。通称アサシン勇者様よ。そして、魔王序列三位のジャンジェック・ポラン・ティストニーを無傷で倒した勇者様なのです」

「……はぁ~どうも、アサシン勇者です」


 こうして俺は、アサシン勇者としての道を歩かざるをえなくなったのだ。



 それ以降アサシン勇者は、ティリスに雇われデンバードと協力し魔王を倒し世界を救う戦いを強いられたり、勇者機関を立て直したりする羽目になるのだった。

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