転生
ピッピピピ!!!
カーテンの隙間から朝日の光が入り込んでくる時間にけたたましく目覚まし時計が部屋に鳴り響いた。部屋の主は布団から手を出し目覚ましを止め、二度寝をしようとしたところに今度はスマホから音が鳴った。
「あ〜うるさい」
布団から顔を出し、音を止めた。
「誰だよ、こんなに目覚ましセットしたの・・・俺だ」
自問自答して、答えが分かったところで。もう、二度寝をする気も起きなかったので体を起こし支度の準備をし始めた。
「あー学校行きたくね〜」
今日は彼が通うことになる高校の入学式だ。
朝ごはんを食べならが、ニュースを見ているのは蒼葉 遥今年から高校1年生になる。
俺はニュースを見ていると、
『いや〜今日はいい天気ですね〜。桜並木の道を子供を連れた大人が歩いています。ちょっと、声をかけてみましょう!』
リポーターの人が明るい声でそう言って、1組の親子にインタビューしに行った。
『今から何処に向かうんですか?』
リポーターの分かりきっている答えに声を掛けられた親子は笑顔で
『今から、この子の入学式なんですよ!今日晴れてよかっ』
俺は言い終わる前にテレビを消した。
「ちっ」
俺は舌打ちをして、食べ終わった食器を洗う為に席をたった。テレビを消した部屋には、洗う為に流した水の音しか聞こえず、後は外から入ってくる音だけで部屋の中はとても寓居だった。
俺は小さい頃に両親を事故で亡くし、半年前までは祖父母にお世話になっていたがその祖父母も他界。俺は両親と祖父母の残してくれて遺産で現在一人暮らしをしていた。
事故は俺が横断歩道を渡り両親を待っていた時、一台の暴走してきた車が両親の方に突っ込んでいった。両親だけなら助かっていたかもしれないけど、近くには1人でいた子供がおり両親はその子を庇い俺の目の前で死んだ。
俺にはその後何があったのか記憶がない。いつの間にか、祖父母にお世話になることが決まっていた。医者が言うには精神的なショックによるものらしく。当時の記憶が戻るかどうかは分からないと言われた。俺的には戻らない方がありがたい。思い出した所で両親が死んだ事実は変わらないのだから。
祖父母には、不満なんてひとつもない。両親の代わりになに不自由なく育ててくれた。感謝しかない。けど、心の何処かでは両親の愛情に飢えていた。祖父母にはちゃんと愛されていた。けど、周りはちゃんと親がいてその親に愛情を注いでもらっている。その不公平さに小さい頃の俺は荒れていた。
そんな俺を見放さず、しっかりと育ててくれた祖父母に不満なんてあるはずもなかった。
今では、落ち着いているが先ほどのような光景を見てしまうと胸が痛み、頭がモヤっとするので見ないようにしてる。
そんな事を、考えながら洗い物を終わらせるとちょうどいい時間になったので用意しておいた鞄を持ち家を出た。
「行ってきます」
当然返事なんて返ってくるわけもなく、開いていた扉は閉じた。
気持ちを切り替えて登校していると、小学生くらいの女の子が前の信号が赤で止まっており俺が追いつくか追いつかないかな時に青になり、その子が横断歩道を渡っていると横からどう見ても赤信号なのにスピードを出しすぎているトラックが走ってきていて、女の子に迫っていた。
その事を認識した瞬間、俺の体は意思とは関係なく動いており女の子が衝突する寸前に俺はギリギリ間に合い女の子を突き飛ばした。その瞬間周りがスローモーションになり、女の子の方を見ると突き飛ばされたせいか、少し怪我をしていたが命が助かったのだから許して欲しいと思いながらも横を見るとトラックが迫ってきておりこれが死ぬ瞬間なんだなと認識した瞬間体に衝撃が走った。
周りの騒がしさが段々と遠くなっていき、体が深い海の底に沈んでいくような感覚を感じていた。
あぁ、俺もこういう運命だったのかな・・・両親と同じように子供を守って・・・もっといろんなことしたかった・・・もっと・・生きた・・・かっ・・・
俺の意識が落ちる寸前声が聞こえた。
「君のーー受け取っーー。強くーーーおくれ。大変なことがーーーーしれないーー、君ならーー越えられーー信じーる」
だ・・・れ・・
暗闇の中、聞こえるはずのないノイズ混じりの声が響き。結局、ノイズが多くよく聞き取れなかったが。段々と真っ暗だった目の前が真っ白に染まっていった。
何か温かいものに包まれているのを感じながら目を開けると目に入ってきたのは自分の部屋や病院の天井ではなく。
「知らない天井だ」
前までの自分の声ではない、幼い声が部屋の中に響いた。俺は自分がベッドの上に寝かされていた事を知り体を起き上がらせたその直後、部屋の扉が開き入ってきたのは、そこら辺のアイドルなんか顔負けの可愛い女の子だった。
その女の子と目が合うと、急に目がウルウルとし出して
「ハルカーーーーー!!!!」
自分の名前を大きな声で呼び、突進して抱きついてきた。
「うわっと」
いきなりの展開に頭が追いついていないと、部屋の外から声が聞こえてきた。
「どうしたの?シーラ。いきなり大きな声を出して」
そう言って入ってきたのは、とても綺麗で若い女の人だった。俺のことを見た瞬間、手に持っていた物を落とした。
「あなたっ!ハルカが!ハルカが!」
俺の名前を呼びながら、あなたと呼んだ人を呼びに行ったのだろう。
(ここは、どこなんだろうか)
そんな呑気なことを考えながら、いまだに腰にしがみついて泣きまくってる女の子をどうすればいいか考えることにした。