8 今回も逃げオチで
そう決断した俺は、迷わず涼ちゃんの右手を引っ張って新聞部の部室を飛び出した!
「あっ!こら!」
「待ってください!」
そう声を上げた尾田先輩と本坂先輩が、俺達の後を追いかけて来た!
しかし俺は涼ちゃんの手を引いて一目散に逃げた!
するとそんな中涼ちゃんが走りながら俺に話しかけてきた。
「ねえおにいちゃん、いま涼たち、あのおねえちゃんたちからにげてるの?」
「ああそうだよ!今あのお姉ちゃん達に捕まったら大変な事になるからね!」
俺は必死に走りながらそう叫んだ。すると涼ちゃんは、
「わかった!それならがんばってにげないとね!」
と言い、走るスピードを五段階くらいアップさせた。
「どぇええっ⁉す、涼ちゃん⁉」
俺が涼ちゃんを引っ張って走っていたのが、今度は逆に涼ちゃんが俺を引っ張って走る形に逆転した。
な、何という脚力!
あ、そうか、中身は九歳の女の子でも、体はミナ高バレー部のエースなんだ。
この前一緒に鬼ごっこをやった時も、文字通り鬼のように足が速かったからなぁ。
とまあ、そんな涼ちゃんの脚力のおかげで、尾田先輩達を難なく巻く事がきた。
そしてその後涼ちゃんは、その前の部活の疲れもあってか、すぐに眠ってしまった。
なので俺はそんな涼ちゃんを体育館裏へ運び、一目散に沢凪荘に帰ったのだった。
何か今日は、悩みのタネがまたひとつ増えた感じの一日だった。
最近、益々(ますます)俺の安息の場所が減って来ているような気がする。
果たして俺が穏やかに日常を過ごせる日々はやってくるのだろうか?
少なくともそれは、はるか遠い未来のような気がするのだった。
おしまい




