1 いきなり大ピンチ
雲ひとつない真っ青な空が、上空に広がっていた。
気温は暑くなく寒くなく、絶妙のポカポカ陽気。
そこに穏やかで心地の良いそよ風が相まって、実に気持ちがいい。
そんな最高に良い天気の昼休み、当物語の主人公である俺、稲橋聖吾は、
屋上で、一人の上級生に絡まれていた。
そう、絡まれていたのである。
お相手は三年生の男子生徒で、細身で俺より背が高く、一見女の子にも見える程綺麗で整った顔つきをしている。
名前は南野響。
何を隠そう、我がミナ高三大美女の一人である田宮涼美先輩の彼氏さんなのだ。
俺はこの人と少し前に、ちょっとしたイザコザがあった。
いや、あれはイザコザというよりも完全な誤解なのだが、
その辺の詳しい事情は第二巻のおまけドラマを参照してもらいたい。
さて、そういう事があって、この人は俺にただならぬ怒りを覚えていた。
しかもこの人は俺と同じミナ高生という事が分かり、俺は極力この人と出くわさないよう、細心の注意を払っていたのだ。
しかしそれだけでこの人と出会わないようにするのはやはり不可能で、
今日学食で昼飯を食べ終えて出て行こうとした時、
入口の所でバッタリと出会ってしまったのだ。
そして向こうも俺の事をバッチリ覚えていたらしく、
俺の顔を見るなり鬼のような形相になり、
その胸ぐらを掴んでここまで引っ張ってこられたという訳だ。
という訳で、俺、今、ピンチです。




