3 最後はいつもの感じで
小宵ちゃんの背後から、至極冷たい声が聞こえた。
そしてその声がした方に目をやると、腕組みをしながら不機嫌そうな顔をした美鈴がそこに居た。
「美鈴⁉な、何でここに⁉」
思わず驚きの声を上げる俺。
それに対して美鈴は冷たい口調でこう返す。
「あんたの帰りが遅いから迎えに来たのよ。
それより稲橋君、あんたまさか、小宵ちゃんに変な気を起こしてるんじゃないでしょうね」
「なぁっ⁉ば、馬鹿な事言っちゃいけないよ⁉
俺はただ単純に小宵ちゃんって可愛いなぁと思っただけで、
それ以上のヤマシイ気持ちなんてこれっぽっちも抱いてないよ⁉」
俺はあたふたしながら必死に弁解した。
すると美鈴は俺の言葉など全く聞いちゃいない様子で小宵ちゃんにこう言った。
「小宵ちゃん、こいつにあんまり気を許しちゃ駄目だよ?
こいつは見た目通りのロリコンの変態なんだから」
「うぉい⁉」
何て事を言いやがるんだこいつは。
そんな事を言って小宵ちゃんが誤解したらどうしてくれる気だ⁉
と心の中でハラハラしていたが、それに対する小宵ちゃんの言葉はこうだった。
「あ、あのっ!聖吾様はとても素敵な方だと思います!」
「ええっ⁉」
「おおっ!」
驚きの声を上げる美鈴と、感動の声を上げる俺。
流石小宵ちゃんは俺の事をよく分かっている。
美鈴も少しは見習ってほしいところだ。
すると美鈴はその言葉がよほど信じられなかったのか、小宵ちゃんにズズイッと詰め寄ってこう続けた。
「それ本気で言ってるの小宵ちゃん⁉
だってこいつはスケベで変態で女ったらしで、いい所なんてひとっつもないような男なのよ⁉」
ひどい言われようだ。
いつもの事だけど。
すると小宵ちゃんは珍しく強い口調でこう返した。
「そんな事ありません!聖吾様は素敵な男性です!」
「う・・・・・・」
小宵ちゃんのあまりにまっすぐな言葉に、流石の美鈴も言い返せずにたじろいだ。
するとその背後に、いつの間にか現れた矢代先輩と沙穂さんがこう言った。
「これは強力なライバル出現やなみっちゃん」
「うふふ♡面白くなってきたわね♡」
「わぁっ⁉二人ともどうしてここに⁉」
驚いて後ろに振り返る美鈴。
それに対して沙穂さんはさも愉快そうにこう返す。
「だってぇ、聖吾君も美鈴ちゃんもなかなか帰って来ないんだもの。
二人でイチャイチャしてるのかと思って♡」
「なっ⁉そんな訳ないでしょ!」
顔を真っ赤にして声を荒げる美鈴。
しかし矢代先輩はそんな事に構わず、ニヤニヤしながら小宵ちゃんに言った。
「小宵ちゃんも聖吾お兄ちゃんの事が好きになったんやね♡」
「ええっ⁉いえ、あの、私はただ、単純に素敵な方だなと思っただけで、
好きとかそういうのは、あうぅ・・・・・・・・」
矢代先輩の言葉にそう言って顔を覆う小宵ちゃん。
そんな小宵ちゃんに矢代先輩はガバッと抱きついてこう続けた。
「んもぅっ!ホンマに可愛いなぁ小宵ちゃんは!
ホンマにこのまま沢凪荘のメイドさんになってくれたらええのに!」
「で、でも私は、王本家のお屋敷のメイドなので・・・・・・」
「そんな事言わんとウチらと一緒に暮らそうやぁ♡」
「ひゃあっ⁉や、矢代お嬢様⁉へ、変な所を触らないでください!」
「はぁ~♡小宵ちゃんの体はプニプニで気持ちええな~♡」
「ちょっと矢代ちゃん先輩!小宵ちゃんにまで変な事するのはやめてください!
小宵ちゃんは自分の屋敷に帰らないといけないんですから!」
「ウフフ♡小宵ちゃんが沢凪荘に住み出したら、聖吾君をとられちゃうものね♡」
「なぁっ⁉ち、違いますよ!何で私がそんな事心配しなくちゃいけないんですか!」
「あはは~♡みっちゃんもかわええな~♡」
「きゃああっ⁉どさくさに紛れて何処触ってるんですか⁉」
「みっちゃんのちっちゃくもプニプニで可愛いオッパイ」
「そんなに具体的に言わないでください!
ちょっと稲橋君!ボーっとしてないで助けてよ!」
まあ、何だかんだで結局最後はこうなるんだよな。
これが沢凪荘でのいつもの風景。
場所は変わっても、やる事は変わらないのだ。
そんなこんなで、この日常はまだまだ続きそうなのでした。
おしまい。
「こらぁっ!何一人でまとめに入ってんのよ⁉
私を助けてって言ってるのよ!
ちょっと聞いてる⁉
きゃああっ⁉」
沢凪せ女り~た3 完




