1 小宵ちゃんでお目覚め
・・・・・・。
「──────さま・・・・・・」
ん・・・・・・。
「せいごさま・・・・・・」
んん・・・・・・。
「聖吾様、大丈夫ですか?」
「んん・・・・・・ん?」
俺の名を呼ぶ声で、俺は意識を取り戻した。
そしてゆっくりと目を開けるとそこで、メイド姿の小宵ちゃんが、
心配そうな表情で俺の顔を覗き込んでいた。
「小宵、ちゃん・・・・・・」
俺はそう呟き、ゆっくりと上半身を起こした。
辺りを見回すと、ここはミナ高の学生寮の近くにある河原だという事が分かった。
はて?俺はどうしてこんな所に居るんだ?
しかも今は既に夜。
夜の河原で俺は意識を失っていたのか?
でも、意識を失う前の記憶が何故か曖昧で、よく思い出せない。
「俺、何でこんな所に?一体ここで何があったんだ?」
まだぼんやりとした頭でそうつぶやくと、傍らの小宵ちゃんがこう答えた。
「ついさっき、聖吾様の帰りが遅いのでここまで来てみたら、
聖吾様が体の大きな男性の二人組に、襲われていたんです」
「体の大きな、二人組に?」
「はい。暗かったので顔はよく見えなかったのですが、
私の姿に気づいた途端、一目散に逃げて行きました」
「そ、そうだったんだ・・・・・・」
そう言ってうつむく俺。
まさかそんな事があったとは。
いや、でも待てよ?
よく考えたら俺は何のためにここに来たんだ?
あ、そうか。
岩山店長と鏡先生の決闘を見に来たんだ。
で、その決闘は結局引き分けに終わって、
その後孝さんが沙穂さんに告白して、
孝さんはフラれて、
でも何か理奈と良い感じの仲になって、
これで一件落着したからさあ帰ろうと思った時に、
俺は・・・・・・。
ゾンビと化した岩山店長と鏡先生に、襲われたんだ。
「あーっ!そうだったーっ!」
俺はそう叫んで頭を抱えてその場にうずくまった。
そうだ!
俺はついさっき、ゾンビ化したあの二人に襲われたんだ!
あまりの恐ろしさに完全に記憶が飛んでいた!
できればずっとそのまま忘れていたかった!
ていうかもうこのまま消えてなくなりたい!
うあああっ!
「お、落ち着いてください聖吾様!」
完全にパニックに陥った俺に、オロオロしながら声をかける小宵ちゃん。
でも今の俺はそんな事で立ち直れるような状態じゃないんだ!
だって俺はあのオカマとホモのコンビに、
俺の大切なモノを奪われてしまったのだからぁあああっ!
もう俺のパニックは止められそうにない!
何なら今すぐそこの川に身投げしてもいいくらいだ!
浅いのでおぼれ死ぬ事はできないが、この際もう身投げしてしまおう!
そう思った俺は上半身を起こして立ち上がろうとした!
と、その時だった。




