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沢(さわ)凪(なぎ)せ女(にょ)り~た3  作者: 椎家 友妻
第五話 両雄、激突す
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9 沙穂の気持ち

 「理奈(りな)が色々失礼な事を言ってすみません。口は悪いですが、根は良い奴なんです」

 理奈と浜野(はまの)さんの姿が見えなくなってから、(たかし)さんはそう言ってペコリと沙穂さんに頭を下げた。

それに対して()()さんは、気を悪くした様子もなくこう返す。

 「分かっています♡私も理奈お嬢様の事は大好きですから♡」

 「それと、このたびは色々僕の事でご迷惑をおかけしてすみませんでした。

元は岩山(いわやま)がちゃんと沙穂さんに愛の(しずく)を渡さなかった事が始まりですが、

最初から僕が自分で沙穂さんに告白していれば、こんなに話がもつれる事はなかったんです」

 孝さんはそこまで言うと一旦(いったん)間を置き、ひと(きわ)真剣な眼差(まなざ)しになってこう続けた。

 「沙穂さん、フラれた直後にこんな事を聞くのは未練(みれん)がましいかもしれませんが、

もし、理奈が僕の許嫁(いいなずけ)じゃなかったら、返事はまた、違っていたんでしょうか?」

 「・・・・・・」

 孝さんのその言葉に、沙穂さんは少しだけ目を細めて黙り込んだ。

そして少しの沈黙の後、ニコッとほほ笑んでこう言った。

 「いいえ、同じだったと思います」

 「でしょうね」

 孝さんはそう言って肩をすくめたが、残念そうな様子はなかった。

むしろモヤモヤが吹っ切れたような清々(すがすが)しい表情になっていた。

 「僕も屋敷に帰ります。沙穂さん、お元気で」

 「はい。孝おぼっちゃまもお元気で♡」

 そう言葉を交わして握手をする沙穂さんと孝さん。

そして孝さんは俺の方を向いてこう続けた。

 「稲橋(いなはし)君、君にも色々迷惑をかけたな。すまなかった」

 それに対して俺は頭をポリポリかきながらこう返す。

 「いやあ、別に構わないですよ。何か俺、こういう事に巻き込まれすい体質みたいなんで」

 「このまま愛の雫が見つからなかったら、(おう)本家(もとけ)の屋敷で一生タダ働きをしてもらうところだったよ」

 「(さわ)やかに怖い事を言わないでくださいよ・・・・・・」

 「ハハッ、冗談だよ。じゃあ僕はこれで。

早く帰らないと、メイド長の幸江(さちえ)さんとかがうるさいからね」

 こうして孝さんも、河原から去って行った。

 孝さんが居なくなった所で、俺は沙穂さんにちょっとイジワルな質問をしてみた。

 「孝さんをフッてよかったんですか?

あの時孝さんから愛の雫を受け取っていれば、これ以上ない玉の輿(こし)に乗れたのに」

 すると沙穂さんは俺に軽くでこピンをしてこう言った。

 「大人をからかうんじゃないの。私は(さわ)(なぎ)(そう)での生活が気に入ってるの。それに・・・・・・」

 「それに?」

 「ご主人様とメイドが恋に落ちるなんで、あってはならない事なのよ」

 そう言ってほほ笑んだ沙穂さんの表情には、何処(どこ)(さび)しげな雰囲気(ふんいき)(ただよ)っている気がした。

 「沙穂さん、もしかして本当は、孝さんの事を・・・・・・」

 俺がそう(つぶや)くと、沙穂さんは再び俺にでこピンをし、

 「さ、もう帰りましょ」

 と言って沢凪荘に向かって歩き出した。

 今、沙穂さんはどんな気持ちなんだろう?

本当は孝さんの事が好きで、あの時も愛の雫を受け取りたかったんじゃないだろうか?

でもそこは理奈の存在や、孝さんと自分の身分の違いを考えて、自ら身を引いた。

 考え、過ぎだろうか?

 まあその辺の事は、沙穂さん本人にしか分からねぇんだけど。

 「俺も帰るか・・・・・・」

 ああだこうだ考えてもしょうがないので、俺はそう(つぶや)いて沙穂さんの後を追おうとした。

すると、その時だった。

 ガシッ。



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