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沢(さわ)凪(なぎ)せ女(にょ)り~た3  作者: 椎家 友妻
第五話 両雄、激突す
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8 お詫びの印

 「は、浜野さん⁉いつからそこに⁉」

 俺が驚きの声を上げると、浜野(はまの)さんは泣きじゃくりながら答えた。

 「うぅっ、()()さんと一緒にここまで来たんですぅ・・・・・・」

 そうだったのか。岩山(いわやま)店長と(かがみ)先生の決闘に気を取られて全然気付かなかった。

するとそんな浜野さんに理奈(りな)が声を荒げる。

 「浜野っ!帰るわよ!」

 その声に浜野さんの背筋が反射的に伸びた。

 「は、はいっ!・・・・・・あの、もうよろしいのですか?」

 「いいのよ。私の用事はもう済んだし、大人しく帰るわ」

 理奈はそう言って沙穂さんの方に向き直り、ぶっきらぼうにこう続けた。

 「まったく、孝をフるなんて一体何様のつもりなの?

あと三年もすれば、私はあなたよりずっと美人になるし、内面だって魅力的になるんだからね!

その時までこの勝負はお預けにしといてあげるわ!」

 一体何の勝負なんだ?

と疑問に思っていると、沙穂さんはニッコリと笑って、

 「はい♡」

 と答えた。

すると理奈は俺に、一枚の紙切れを差し出した。

 「ん?何だよこれ?」

 俺が目を丸くして(たず)ねると、理奈はいつものぶっきらぼうな口調で言った。

 「これは今回あなた達を面倒な事に巻き込んだお()びよ。

この紙に私の携帯番号とメールアドレスが書いてあるわ」

 「へ?これがお詫びの印?」

 俺がその紙切れを受け取りながら首をかしげると、理奈は怒った様子でこう続けた。

 「何よそのマヌケな反応は⁉

この私の携帯番号とメールアドレスを手に入れたのよ⁉

もっと馬鹿みたいに喜んだらどうなの⁉」

 「でも、これを俺に渡してどうするんだよ?」

 「あなたはどこまで間が抜けているの⁉

私の携帯番号とメールアドレスを手に入れたんだから、電話するなりメールを送るなりしてもいいって言ってるのよ!

ついでにあのボロアパートの住人にもそれを教えてもいいわよ!」

 「・・・・・・」

 俺は何故こいつに怒られているんだろう?

っていうかさっきから言ってる事がメチャクチャじゃねぇか?

 と思いながら言葉を失っていると、傍らの浜野さんが苦笑しながら俺に言った。

 「要するにお嬢様は、(さわ)(なぎ)(そう)の皆さんとお友達になりたいんですよ」

 「ああ、なるほどね」

 俺がそう言って納得すると、理奈は顔を真っ赤にして声を荒げた。

 「なっ⁉べ、べ、別にそんなんじゃないわよ!

私はあなた達と友達になりたい訳じゃないんだからね!」

 「あ~分かった分かった。分かったからそんなに怒るなよぉ」

 「別に怒ってなんかないわよ!」

 こいつも相当素直じゃねぇな。

変にプライドが高い分、美鈴(みすず)より素直じゃねぇかも。

 そう思いながら心の中で苦笑していると、理奈はひとつ息をついて言った。

 「それじゃあ私達はもう帰るわ。浜野、行くわよ」

 「はい、理奈お嬢様」

 そして理奈が立ち去ろうとした時、その背中に(たかし)さんが声をかけた。

 「なぁ、理奈」

 「何よ?」

 その場で立ち止まり、背中を向けたまま聞き返す理奈。

そんな理奈に孝さんは、ニカッと笑ってこう言った。

 「三年後、お前に見合うような男になれるよう、僕も頑張るよ」

 「・・・・・・フンだ」

 理奈は()()なくそう答え、そのまま河原を後にした。



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