6 闘いの結末
「相討ち⁉」
その光景に思わず声を上げる孝さん。
二人の放ったパンチはほぼ同時に互いの顔面にヒットした。
恐らくダメージもほぼ同じ。これで倒れなかった方がこの決闘の勝者となるが、倒れるのはどっちだ?
立ち続けるのはどっちだ?
そう思いながら息を飲んで眺めていると、岩山店長が消え入るような声でこう言った。
「あなた、強い、わね・・・・・・」
それに対して鏡先生も、消え入るような声でこう返す。
「フッ、お前、もな・・・・・・」
そして二人は同時に地面に倒れ込んだ。
「相討ち、なの?」
理奈が呟く。
確かに二人は同時に倒れたままピクリとも動かない。
その様子を見た沙穂さんはこう続けた。
「どうやら、引き分けみたいですね」
「え?こういう場合って、どうなるんですか?」
俺がそう尋ねると、沙穂さんはニコッと笑って言った。
「もちろん、両方と結婚すればいいのよ♡」
「何でそうなるんですか⁉そもそもどっちが勝っても俺は結婚なんかするつもりはなかったし!」
「あら、もったいない」
「何がですか!ていうか沙穂さんは面白がってるだけでしょ!」
とか言い合っていると、理奈がおもむろに、倒れた二人の元へ歩み寄った。
傷の手当てでもしてやるんだろうか?
意外と優しい一面もあるんだなと思いながら眺めていると、
理奈は何やら鏡先生のズボンのポケットをガサゴソあさり始めた。
んん?何をやってるんだあいつは?
と思ったら、理奈は先生のポケットから何かを取り出した。
暗くてよく見えないが、どうやらそれは小さな箱みたいだった。
理奈はそれを持ってこっちへ戻って来ると、それを孝さんに
「はい、これ」
と言って差し出した。




